たまりば

多摩の地域情報 多摩の地域情報調布市 調布市

2019年09月16日

受賞者インタビュー(2)  ルサンチカ 河井朗さん(演出家賞)

・今回のコンクール全体についての印象はいかがでしょうか。
異なったジャンルの作品がちゃんと集まったのがすごくいいことだなと思いました。
専門審査員の作品との向き合い方もとてもフラットで、「作品と社会」「劇場と作品」「観客と審査員」という風にそれぞれの関係にしっかりと眼差しが向けられていて、しっかりとした判断基準があったのがとてもよかったです。


・講評会では専門審査員の方々からのさまざまな講評や意見、感想がありましたが、それを受けて今思われることはありますか。
言われたことはすべて納得できるものでしたし、だからといって作品の性質上その変化をもたらす必要もないなと思えることもありました。ただコンクールというシステム上、上演デザインの中で出来ないことや制約も多々あったので、そういう一面についてはどう考えていけばいいかいま悩んでいます。

ただ本作がしっかり賛否の意見があったのが良かったなと思っています。「これは演劇なのか?」ということと、「観客とどうやって対話するか」ということをずっと考えていました。作品の中で語られる言葉が「理想の死に方」についてのインタビューから採られたものだというのもそのためです。
その過程を演劇的なアプローチに入れ込んで作品にしてみたというだけなので、そういった意味で色々な意見があったのがすごく嬉しいです。


・ありがとうございます。ルサンチカさんの今後の活動予定や、展望について教えてください。
この「理想の死に方」というシリーズで京都府立文化芸術会館と提携して2019年から2021年までの3年間、制作していきます。2年目となる来年は「仕事」についてインタビューして作品を作ろうと思っています。
社会的に、人は働くことで自分の居場所を作ることができるということがあると思うんです。「働く」ということから自分たちは何者かを問えるような作品ができたらいいなと思っています。

そして三年目にはシリアのグータであった出来事を題材に作品を作ろうと思っています。
内戦中のシリア、グータから「#IAmStillAlive(私はまだ生きている)」というハッシュタグをつけて、毎日地下室や避難所からTwitterへ動画や写真を投稿していた一般市民の男性がいたんです。
去年その彼は戦闘に巻き込まれて亡くなってしまったんですが、亡くなってしまったことが分かってからTwitter上では「#NoLongerAlive(彼はもう生きていない)」というハッシュタグが追加されたんです。
その「今までここで生きていた彼が、今日はもういなくなった。」ということから、「私たちは今日をどうやって生きていくのか」ということについて考える作品を作りたいなと思っています。

最終的には「理想の死に方」と「仕事」と「私たちは今日をどうやって生きるのか」というこの3つの作品の上演とインタビューの展示を両方できたらいいなと思っています。

―人が日常生活の中であらたまって生きることや死ぬことについて考えるというのは、西洋だったら教会、日本だったらお寺といった宗教的な場所が担ってきた役割なのかなと思うのですが、ルサンチカさんの作品はそういった人の生死に対する根源的な問いについて真正面から取り組んでいる印象を受けました。

そうですね、ただ考える機会を作るだけの上演なんです、本当に。


・ありがとうございます。今後せんがわ劇場でチャレンジしてみたいことはありますか?
京都府立文化芸術会館もせんがわ劇場と同じく公共の劇場なんですが、そういった公共の劇場に公演がない時どうやったら人は足を踏み入れてくれるんだろうと。

公共の劇場というのは、劇場自身で観客を創客しなければいけないと思うんです。そう考えたときに、公演がなくても人が来れるような場所ってどこなんだろうって考えてみると図書館みたいな場所なのかなと思うんですね。
そういった場所がどうにかしてできないのだろうか。

人が劇場へ日常的に足を運べるようになるために、何か恒久的に続いているサービスやイベントと劇場を結びつけることが出来ないかということを考えていきたいと思っています。


・ありがとうございます。最後に何か一言ありますか?
今回の作中で使用したインタビューもすべてルサンチカのサイトに載っているので、もし気になる方はぜひ見てみてください。
https://www.ressenchka.com/




【ルサンチカ プロフィール】
河井朗が主宰、演出を行う演劇カンパニー。物事の色々をひとまず両手ですくい取ってみて、その時にこぼれ落ちた側に焦点を当てて作品をつくる。主に既成戯曲、小説、インタビューなどを用いて舞台作品を制作する。


  • 同じカテゴリー(演劇)の記事画像
    演劇コンクールスピンオフ企画「映像と生で楽しむリーディング」に向けて 【せんがわ劇場演劇チーフディレクター佐川大輔】
    演劇コンクールスピンオフ企画「映像と生で楽しむリーディング」に向けて 【せんがわ劇場演劇ディレクター櫻井拓見】
    演劇コンクールスピンオフ企画「映像と生で楽しむリーディング」に向けて 【せんがわ劇場演劇ディレクター柏木俊彦】
    演劇コンクールスピンオフ企画「映像と生で楽しむリーディング」に向けて 【せんがわ劇場演劇ディレクター桒原秀一】
    第10回せんがわ劇場演劇コンクール・オーディエンス賞受賞公演【世界劇団】「天は蒼く燃えているか」≪稽古場レポート≫
    第10回せんがわ劇場演劇コンクール講評 ~公社流体力学『美少女がやってくるぞ、ふるえて眠れ』~
    同じカテゴリー(演劇)の記事
     演劇コンクールスピンオフ企画「映像と生で楽しむリーディング」に向けて 【せんがわ劇場演劇チーフディレクター佐川大輔】 (2020-10-20 11:02)
     演劇コンクールスピンオフ企画「映像と生で楽しむリーディング」に向けて 【せんがわ劇場演劇ディレクター櫻井拓見】 (2020-10-20 11:01)
     演劇コンクールスピンオフ企画「映像と生で楽しむリーディング」に向けて 【せんがわ劇場演劇ディレクター柏木俊彦】 (2020-10-20 11:01)
     演劇コンクールスピンオフ企画「映像と生で楽しむリーディング」に向けて 【せんがわ劇場演劇ディレクター桒原秀一】 (2020-10-20 11:01)
     第10回せんがわ劇場演劇コンクール・オーディエンス賞受賞公演【世界劇団】「天は蒼く燃えているか」≪稽古場レポート≫ (2020-03-04 13:07)
     受賞者インタビュー(3)  公社流体力学 太田日曜さん(グランプリ・俳優賞) (2019-09-28 09:17)

    ※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
    上の画像に書かれている文字を入力して下さい
     
    <ご注意>
    書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

    削除
    受賞者インタビュー(2)  ルサンチカ 河井朗さん(演出家賞)
      コメント(0)