たまりば

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2018年10月10日

受賞者インタビュー(1)  すこやかクラブ うえもとしほさん(演出家賞)

うえもとしほ




終わってからどうですか?

うえもと 受けてというか参加できてよかったなぁと思ってます。受賞したときは「えっ」ってなったんですけど、みんなからおめでとうって言われて実感しました。うれしいなぁって思いました。

「えっ」てなったのは意外だったということですか?

うえもと 受賞はしないだろうと思ってたんです。講評を聞いて、審査員の方々にも好評だったパンチェッタさんが賞を総なめするかもと考えていたので、驚きでした。

今回の演劇コンクールは2回目の参加でしたが、前回と今回ではすこやかクラブに何か変化はありました?

うえもと (以前参加した)第2回のときは始めたばかりの頃で、右も左もわからずでした。続けていく中で、いつも出てくれる人が増えたり、作品の作り方もなんとなく掴めてきたので、そこは違うかな。それに前回はFC東京というテーマがあったので、ぜんぜん違う感覚で臨みました。

作風自体は変わりましたか?

うえもと 作風自体はたぶんそんなに変わっていないです。台本があって、その台本に沿って作るというよりは、出演者とアイディアを出しながら一緒に考えながらという作り方。ただ、現在は、どのくらいを自分で考えて、どのくらいを人に考えてもらって、という配分が昔よりわかってきたので、そういう意味では成長したのかなと思います。

変革期はありましたか?

うえもと 以前は、何度も出てくれる人はいても、すこやかクラブの「メンバー」というのはなかったんです。でも、2016年からメンバー制をとるようになって、自分に近い場所でサポートしてくれる人が増えました。また、たちかわ創造舎を拠点にするようになって、安定感じゃないですけど、稽古場がいつでもある安心感ができたのは大きいですね。

シェアオフィスメンバーとして、創作の場があることは劇団の活動にも影響していますか?

うえもと 毎年夏に、「真夏のたちかわ怪奇クラブ」というものを開催しているんですね。地元の人に、せっかくここを拠点にするなら、この場所ですこやかクラブに何かしてほしいと言われたのをきっかけに始めて、今3年目なんですけど、去年も来て、今年も楽しみにして来たという方がいてくださるのが楽しいです。また、何が起こるのか、当日までどうなっちゃうのかわからない要素がかなりあるから、いい意味でガチガチにならずに、おおらかに作れるところがいいなと思います。

稽古場インタビューで人生の核となるものを探しているということでしたが、答えは出ましたか?

うえもと 私の核になることはなんだろうと考え続けていて、そこから「遠くへいきたい」というタイトルが浮かんだんですけど、稽古をやっていくうちに人生って絶望的なものなんだと私が思っていることがわかって、それがなんか嫌だったですね。

舞台をみて絶望的な感じは受け取りました。絶望的だけど、結局こうなるよなぁと。

うえもと そうなんです。前から、そういう感覚はあるけど、楽しく生きていきたいという思いも同時にあって、両方で生きてると思ってたんです。でもこの作品を作った時に、自分の暗い部分ばかり見ちゃって、それがすごいストレスでしたね。すごく肌が荒れました。

役者のみなさんはその絶望的な部分というのをどう受け止めて作品におこしていましたか?

うえもと 役者の人たちは特にメンタルに影響は受けていなくて、そういうもんなんだと演じてました。強いですよね。役者のみんなは作品に引きずられてなかったです。この作品、去年5月の本公演のあと、6月に立川で1回だけ上演したんですけど、その日が「巨大化したい」役の男子の結婚式の前日だったもので私がその役をやったんです。それはつらかったですね。体力的にも精神的にもつらくて、なんでこんなことしなきゃいけないんだろうと思いました。

体の動きと心情はどうリンクしていますか?動きでしか、言葉でしか表現できない部分というのはありますか?

うえもと 自分の感覚で、ここは台詞でやる、ここは体でやるというのは、最初に役者に提示して、細かいところ、どんな内容、動きにするかは一緒に稽古しながら決めます。役者から、どうしてもこの体の動きから感情の展開がうまくつながらないと言われると、話し合って変更することもあります。

その話し合いのときは、どんなすり合わせをしていますか?演出家であるうえもとさんと、役者の意見が一致しないようなときとか。

うえもと 自分でも何が言いたかったのかわからなくなって迷う時や、実際その動きをやってみて、確かにしっくりこないと思った時は、どうすればいいか、全員で意見を出しながら作ります。他のパフォーマーが出したアイディアが通ったりもしますし、私が主導するというより、みんなで作っている、みんなで解決していくというのが、すこやかクラブの健全な制作スタイルかなと思います。とはいえ、私が迷宮に入りこむと、地獄になりますけどね。何が正解なのか誰もわからないみたいな感じになって、ずーんってなったりします。

そうなってしまったときはどうするんですか?

うえもと 3月に出た王子の演劇祭時、迷宮に入って地獄の稽古場になったことがありました。その時は、出演者が「俺たちが何とかしないとこれはもうだめだ」となって、みんなで考えて。恐ろしい、恐ろしかったですね。その経験があってみんな心に傷は負いましたけど、いい経験になったというか、いい思い出にはなりました。

今回もともと1時間の作品を40分におさめたということでしたけど、その短縮をするにあたって、そぎ落とされてしまった部分であったり、これだけは絶対に落とせなかったという部分があれば教えてください。

うえもと やっぱりこれは60分の作品だったなと思いながら作っていて、けっこう苦労しました。すごく大切だと思っていたシーンを削って、それはそれで作品としては成立したとは思います。でも審査員の方々の感想を聞いて、やっぱり私がそぎ落としたあのシーンがとても大切だったんだと、後ですごく感じました。作る前は、短縮バージョンにするのはそんなに難しくないだろうと思っていたけど、あの作品はあの長さだからよかったんだという発見もあって、とても勉強になりました。

ちなみにそのシーンってどこですか?

うえもと 子供の頃の思い出を言うというシーンです。「遠くへいきたい」という作品は、たどり着けないけれどそれを求めてしまう希望と絶望が主軸になっているんです。審査員の方々が「わからないけど、どこか遠くに連れて行かれたという感覚になりたかった」みたいなことをおっしゃっていたと思うんですけど、確かに、この40分の作品はちょっときれいにまとめすぎていたのかな。あのシーンがあったら、よくわからないけどわかる、みたいな感覚にいけたのかもしれません。だから、削るとしても、あのシーンに代わる何かを入れられたらよかったと思いました。

「遠くへいきたい」の遠くは時間的な面、とくに過去への憧憬のようなものを感じたんですが、うえもとさんの言うところの遠くは?

うえもと 私の「遠く」はやっぱり、子供の頃ですね。過去が一番大きいです。・・・死ぬの怖いじゃないですか?時間が過ぎていってみんないつか死んじゃうんだって。そんなこと考えずに生きていけたらいいんですけど、考えちゃうでも、いつ死んでも、みたいなことを考えておくのは人生の指針になりますね、それから、人生に何かよりどころがあるとしたら、、私は自分の感覚をよりどころにして生きたいです。長く生きて来た人の言葉はたしかに説得力があるけど、その人はその人の人生しか生きていないんだし、素直な心で受け入れつつ、自分の感覚をよりどころにして生きていくのが大事なのかなと思いますね。

話がずいぶん広がりました。さて今後の活動予定は?

うえもと 11月24日、25日に、八王子禅東院というお寺で、馬喰町バンドと一緒に公演をやります。今から馬喰町バンドのリーダーの武さんに曲を作ってもらっていて、それを聞いてから作品をどうするか決めます。このお寺はこれまでにもいろんな音楽イベントを開催していて、すごくいい場所です。

今後の方向性はきまっていますか?

うえもと すこやかクラブとしては「真夏のたちかわ怪奇クラブ」が大切なイベントになりつつあるので、これを発展というか、今後も続けていきたいと思います。もちろん作品を作り続けていきますが、すごくたくさんの人じゃなくても、まだすこやかクラブのことを知らない人たちに知ってもらって、すこやかクラブの作品を好きになってほしい。すこやかクラブというのは、自分が幸せに生きていくためのひとつのかたちではありますね。うん、幸せに生きていきたい。
  


  • 2018年09月09日

    第9回せんがわ劇場演劇コンクール 専門審査員講評(6) 「N2/エヌツー」

    ※掲載の文章は、第9回せんがわ劇場演劇コンクール表彰式の際、専門審査員から各劇団にむけて語られた講評を採録・再構成したものです。




    ■野上絹代

    役者が一人でただ観客の前に立つ、演劇というものの原点といえる作品だなと思いました。災害を題材に、一人の俳優の目線から個人的な話が語られていてとても繊細なお芝居なのですが、なんとなく役者と観客との間のコミュニケ―ションが成立していないような気がしました。つまり向こう側で一人でやられている感じがしました。とてもセンシティブな話を扱っているのに断絶を感じるだけなのはあまり良くない気がしました。個人的な話は扱う側も観る側も難しさがあって、フィクションよりも突破しなければいけない大きな壁があると思うのですがそれを越えられていない気がしました。ただ、劇的なことをせず客前で存在するということは勇気がいるし、それが出来るのはいい事だと思います。


    ■常田景子

    今が出発点なのかなという印象を受けました。前田さんという演者の存在のありようを興味深く観ていました。そういう出演者を見つけたというのは収穫だと思いますが、そこにちょっと寄りかかってようやく成立していた、という印象が否めませんでした。手法的にはものすごく新しいものとは言えないし、やはりもう一越え、一壁、一山、越えないといけないのかなという印象を受けました。


    ■土田英生

    無垢なのか、それとも意図的にやっているのか、もともと個人のつぶやきから構成されているので理解はされにくい作品ではある。ただ、途中からすごく面白くなりました。物語化されることをとにかく拒否しているんですね。個人的な日常が断絶される様を描いてはいるんですが、物語にされるのを嫌い、演劇として、ここの場で物語化されていくことすら拒否している。非常に難しいバランスで成り立っている。例えばちょっと情緒に走りそうになると、全部それをすかしてしまったり。震災の時間や自分の生活の時間を、どれだけ物語化せずにそのまま提出できるのか、という演劇をやっていたのだと感じ、私は興奮しました。公共劇場のコンクールなんかでやらないで、自分たちでやった方がいいとも思いました。ただ、もう一つ見せることに関しての仕掛があれば、さらに面白くなるかもしれません。これからも挑戦し続けて下さい。


    ■佐川大輔

    演劇の原初的な印象を受けました。俳優が存在しお客様の前に立って何かを語る、普通の芝居にはない緊張感があり、非常に独自性が高いと思いました。普通のお芝居とは違うものをやろうとする、その勇気はすごいと思います。観客の想像力を刺激するための演出、例えば劇場にありそうな譜面台や椅子を設置すると同時に、洗濯物を干したりプロジェクターで投影していく演出、最初は想像力を掻き立てられて観ていましたが、途中からこの想像力はどこへ向うのかと思った時に、もう少しわかりたいと思いました。これは演出家、芸術家の姿勢の問題だと思うのです。自分の書いた作品や、自分達が表現していることを、観客に伝えたり共有してもらいたいのか、そうでないのかによって進む道が違ってくると思います。演出家として、人に伝えるためにレンジを広げていくべきなのか、あえて、突き進み、それがどこかで突き抜けたときに多くの人に伝わるのか?そのどちらかしかないと思います。その圧倒的なレベルにいくには大変だと思います。どちらかを選択して挑戦していくのかなと思います。


    ■熊井玲

    私は戯曲を読んでから拝見したので、どのような世界観を持ちたいかを共有しながら入ったつもりでした。作品自体はオールオープンな作品というわけではなかったと思います。俳優さんは作品への入口になりえますが、逆に俳優さんを入り口と感じられなかった場合は、もしかするとずっと疎外感を持ったまま観ていた人もいるのではないかなと思いました。また小道具が色々出ていましたが、そこから情報を得ようと観てしまうと、その意味を求めてしますぎてしまって、作品に入りづらかったかも。意味にとらわれず、あるいはそれを乗り越えるもう一つ芯が何かあれば、もっと違う所で私たちが取っ掛かりを見つけられたかもしれないと思います。6作品の中で一番異色だったかもしれないという印象で、面白かったです。


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  • 2018年09月09日

    第9回せんがわ劇場演劇コンクール 専門審査員講評(5) 「パンチェッタ」

    ※掲載の文章は、第9回せんがわ劇場演劇コンクール表彰式の際、専門審査員から各劇団にむけて語られた講評を採録・再構成したものです。





    ■野上絹代

    達者な俳優と作、演出、高い作曲能力をくだらない主題に使う、とても好感を持ちました。観劇中に何も気にならずただ観ることが出来たように思います。強いて言えば既視感を覚える演出が時に達者過ぎて鼻につくという感じです。見終わった時にやや尻すぼまりの印象がありました。


    ■常田景子

    全体的に良かったし面白かったです。最初のパセリの恩返しのところはとても面白くて、後半がそれに匹敵しないところがちょっと残念でした。今後もますます挑戦して下さい。


    ■土田英生

    最後まで全く飽きない。後半も1つのシーンとして完成されているし、ものすごく面白いと思います。ただ構成のバランスは悪いと思います。真ん中にある面接とかトンカツ屋のシーンは現実に近いトーンなのに、オープニングとラストが劇的過ぎる昔話。逆でサンドイッチした方がいい。現実世界で劇的世界を挟んだ方が腑に落ちると思います。また、転換の照明を工夫した方がいい。暗転せずに最後まで展開していってもいいと思います。むかつくくらい手練れでセンスはあるし、構成をもう少し整えたら完璧なエンターテイメントになるような気がします。


    ■佐川大輔

    手練れ感が鼻に着くとおっしゃっていましたが、僕はそこまでは思いませんでした。お客様も笑っていたし、面白かったし良かったと思います。でもそこまで達者なら、さらにもう一工夫ができたのではないかと、物足りなさを感じました。各シーンの基本的な考え方が「パロディ」なのだと思いますが、一番見せたいテーマはその手法でないと観せられないのかということです。面白かったですが、演出家のスケールをもう一歩先にのばして、もっと頭をひねってみてもよかったのではないかと思います。ほめて下さった方たちがほとんど同じことだったので、あえて辛口に言いましたが。構成がいま一つという事と、最後のシーンに向けてどうのように作っていくのか、一つ一つのシーンにどのような意味があるのかに配慮していけたら、もっと面白かったのではないかと思います。


    ■熊井玲

    ミュージカル的なものもコント的なこともあって3人のレベルがすごく揃っていて上手でした。作品もそれぞれ面白かったのですが、個人的な好みなのかもしれませんが、全部に落ちがちゃんとあるのが残念で、あれだけバリエーションがあるのなら、もっと不条理なものとか、例えばオムライスの話では、言われなくてもだいたい読めるので、あえて結末を言わずに終わらせてしまっても良かったのかなと思いました。そのような冒険があっても良いとも思います。でも本当に面白かったです。


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  • 2018年09月09日

    第9回せんがわ劇場演劇コンクール 専門審査員講評(4) 「すこやかクラブ」

    ※掲載の文章は、第9回せんがわ劇場演劇コンクール表彰式の際、専門審査員から各劇団にむけて語られた講評を採録・再構成したものです。




    ■野上絹代

    音楽や身体を駆使していて集中して観せることが出来たと思います。ただ、イメージの連鎖で創り上げていると思うのですが、それが何をしめしていて、どういうことなのかを頭で理解させようとするのではなく、腑に落ちるとさらに楽しく観られると思います。というのは、思わせぶりな、しかし理解できないことが続いてしまうと、「一体今は何を観せられているのだろう」と、こちらの意識が遠くに行ってしまうところがありました。残念だったところは、音楽のイメージを越えてくる身体がなかったところです。台詞と身体のズレから見せるディスコミュニケーションみたいのはわかりやす過ぎる気がしました。身体を使うことの面白さは、わかることを放棄してしまうほどの熱量とか、すごみとか、意味を超えたところにもあると思うのですがなんとなく歌詞や音楽のイメージに乗っかってしまっていたように思います。


    ■常田景子

    顔の表情筋も筋肉なのだなと感動しました。身体を動かすことを演劇的に見せていくにはもうひと工夫必要なのではないかと思いました。音楽の切れ目でシーンを区切っていたように思うのですが、各シーンの繋がりが曖昧な気がして、それが少し残念な気がしました。フィジカルなものを演劇でやってくのはいいと思うので、その点はとても楽しかったです。


    ■土田英生

    最初のダンスの時はどうなっちゃうのかなと思って観ていたのですが、どんどん引き込まれました。妊婦と男の会話のシーンが秀逸。描いていることは普通の会話なのですが、そこにスポーツの動きを絡めたりするのが素晴らしかった。抽象的で不条理なんですが、実際の感覚に嘘をついていないというか、手触りを持って作られていたのでものすごく腑に落ちるのですね。ただ、他のシーンには少し物足りなさを感じました。もう一工夫しなくては長く感じてしまうし、変化が欲しいと感じる場所が何カ所かありました。もっと想像力を飛ばして欲しい。その意味で最後のダンスは良かったです。


    ■佐川大輔

    とても笑わせてもらいました。俳優さんの笑顔がとても素敵でした。エンタメ性があり、ダンス、お芝居、ギャグも交えながら、照明も効果的に遊び劇的に観せている、でも伝えたいことのテーマ設定がすごくシリアスで、それをギャグの世界でやろうとしているのは、高さというか、難しいことをやろうとしているのだなと思いますが、それはある程度成功しているでしょう。ピンポン、野球、ゴルフとか、一般的に誰が観ても分かる記号性をうまく使っていて、その記号性の裏で全然違う相反することを行う事によって、この人達は馬鹿なんじゃないかなと思わせるというのは、なかなか面白いと思います。「遠くへ行きたい」というタイトルですが、希望をもってもがきながら生きている人間を戯画的に描いている。演技のスタイルに関してはわかりやす過ぎる部分もありましたが、この作品に関しては、希望とかストレートなテーマだったので、比較的相性が良かったと思います。あと、シーンの繋がりの部分の積みたて方が惜しいなと思いました。そこの構築力を工夫すれば、最後シーンの希望と絶望のループへの繋がりがより良かったと思います。また最後の希望と絶望のループでは、身体の感じが、それまでの笑えるようなポップな感じではなく、もっと違う追い込まれ方になっていたら、作品のレベルが一つ違ってくるのではいかと思いました。

    ■熊井玲

    身体と言葉のバランスが面白かったと思いました。一番おもしろかったのが妊婦さんのシーンでした。身体と言葉がぶつかり合って違う世界に連れて行ってくれたと思います。ただせっかく俳優さんが4人いて、それぞれストーリーをもっているので、それぞれに違うアプローチでぶつかり合うともっと良かったし、観たかったです。妊婦さんのシーンは音の使い方や、場所の使い方も良かったと思います。今後がとても楽しみです。


    すこやかクラブ 『遠くへいきたい』の公演詳細ページはここをクリック!
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    写真撮影:青二才晃(せんがわ劇場市民サポーター)
      


  • 2018年09月09日

    第9回せんがわ劇場演劇コンクール 専門審査員講評(3) 「ゆうめい」

    ※掲載の文章は、第9回せんがわ劇場演劇コンクール表彰式の際、専門審査員から各劇団にむけて語られた講評を採録・再構成したものです。




    ■野上絹代

    劇世界に行くまでの空気作りがとても上手で観客の心をとてもよく掴んでいたと思います。ただ劇世界に入ってからの作り込みが甘く、出来ればそこで別次元に連れて行って欲しかったです。空襲警報が鳴るシーンが一つの扉だと思ったのですが、そこからグッと入っていくことはなかったです。俳優陣が一生懸命でとても好感を持ちました。ただ、しゃべり言葉で勢いのまま行き続けてしまうと、劇作としては荒い印象を受けるので、もう少し丁寧に言葉を構築する部分があっても良いのかなと思いました。


    ■常田景子

    演技なのか素なのかよくわからない演技が好きでした。一番よかったのは、最後の方のシーンで、絵を描いたり、ものを作ったりする時の人の衝動とか、作っている時の楽しさが伝わってきて、とても元気がでました。まだまだ粗削りで、これからどこを目指していくのか興味があります。今のままだと少し荒っぽい感じがするので、今後を期待しています。


    ■土田英生

    本当のお父さんと息子が出演し、実在したおじいさんを探る手法がすごく興味深かった。けれど、それが徹底できていない気がしました。友達も出てきて同じように語ってしまうのでは、実際のお父さんが出ている意義を欠けさせてしまい、ただ面白くするためにだけお父さんを出演させたことになってしまう可能性があります。あと、ドラマとしてもやや軸がぶれている気がします。おじいさんがどうして“狂女”を描いたのかを探るところから始まるんですが、それが皆で走ったりしているうちに変わって行ってしまう。どういう演劇を作るのかを掴み、そのことに特化した方がもっと面白くなるんじゃないでしょうか?


    ■佐川大輔

    前説のお父さんのアナウンスから、お父さんの舞台登場は面白かったです。最初の掴みがとても上手だなと思いました。その後に1人ずつ出てきてお客様に自分の作品の解説を長々と始めたのも素敵で、4人の俳優さんに好感を持てました。6作品の中で一番お客様と一緒の「ライブ」をつくることに、秀でていたと思います。実のお父さんが出演するリアルな存在感が、圧倒的な説得力でこの親子三代の話の作品を支えていると思います。ラストの照明の点滅でだけで死んだおじいちゃんを想像させる演出が良かったです。また雑に思われる原因は、前半が面白すぎたのではないかと思います。というのも、お客様と一緒に芝居を作りすぎたために、後半の練習をしてきた部分になると、今まで観客に語りかけていたのが急に「舞台上だけの会話劇」になってしまった気がします。後半の求心力が弱くなってしまったのが残念です。構成として、そこが雑と思われてしまう原因だと思います。一人ずつ走るのを辞めていくシーンでは、観客にも想像がついてしまうので、そこをどのように見せていくのかが演出として、大事なポイントだと思います。そこに工夫が少しあると後半が面白くなったのではないかと思います。


    ■熊井玲

    私小説的なところが入っていて、そこで完結するのではなく最終的にクリエーションの話になっていて、その飛躍度はこれまでの作品よりすごくあったのではないかと思います。あと演劇でしかできない時間の流れや、空間をどう使うか、をすごく考えていて、最大限演劇的に見せるにはどうするのか、かなり作り込んできたところはすごくいいと思いました。面白かったです。


    ゆうめい 『家を走る』の公演詳細ページはここをクリック!
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    写真撮影:青二才晃(せんがわ劇場市民サポーター)
      


  • 2018年09月09日

    第9回せんがわ劇場演劇コンクール 専門審査員講評(2) 「ブルーエゴナク」

    ※掲載の文章は、第9回せんがわ劇場演劇コンクール表彰式の際、専門審査員から各劇団にむけて語られた講評を採録・再構成したものです。




    ■野上絹代

    女子達がはしゃぐ姿はとても良かったです。が、結局どのような話しなのかがよくわからなかったです。難解な戯曲だなと思って後から戯曲を読んだのですが、演出の問題なのかなと思いました。その場がどこで、その声が誰なのか? が整理できるとすっきりするのですが、複雑なまま演じられてしまい、そこが与えなくてよいストレスになっていたと思います。演出の役割は戯曲の世界を広げたり翻訳したりもすると思うですが、それをもう少ししてあげると戯曲が活きてくるのではないかと思いました。


    ■常田景子

    所々にはっとするような美しい台詞があったのは良かったと思います。わからないものを、わからなくても面白いと思わせるためにはもう少し工夫が必要だと思います。わからなくても面白かったね、というのは面白さが勝っていますが、面白かったけれどよくわからなかったね、ですとわからなさが勝っている。今はちょっとその状況です。その辺が少し残念でした。また頑張って下さい。


    ■土田英生

    観ていて面白かったのですが、戯曲は腑に落ちないところがありました。ヒキガエルの存在がうまく生きてないような気がします。仏の座が「結婚したい」とヒキガエルの家に来るあたりから混乱してしまいます。一人一人魅力はあるのですが、演技の質を揃えると良いのではないでしょうか?個性を揃えるという意味ではなく、今回のこの芝居を観せるためにどういう方針で演技させるかを、もう少し工夫していければ良かったのではないでしょうか?


    ■佐川大輔

    とても巨大な世界観を身近に描いているなと思いました。生と死という話を、青春を描くところから導いていくのにトライしていて素敵だなと思いました。実際に描こうとするテーマは大きいですが、台本はきちんとした4人の会話劇になっていて、巨大な世界観を掲げて描こうとしているところがすごいと思いました。演出的にも、短い場面を次々と繋げていくところにドライブ感も感じました。またドライブ感を出すために、ボーカル入りの音楽を用いて、全体を通して青春のもつ突き抜けた爽快感やみずみずしさがあり、ストレートな青春ものとして感じました。内容がわかりにくいというのも事実ですが、訳も分からず感動させてしまうところもあると思いました。同時に、台本を読んで感じたことと実際に舞台をみた時にギャップを感じました。それは演出手法のせいかと思います。情報量の多い台詞を、早口で勢いよく言うことによって、観ている側もシーンの状況が理解できないまま進んでいってしまっているように感じました。書かれている台本は普遍的なテーマのものなので、もっと間口を広げてお客様伝わるようにしていけば良かったのではないかと思いました。公共劇場で仕事をする時に、なんらかの社会性をどのように担保していくのかを演劇人は考えていく必要があるのではないかと思っています。


    ■熊井玲

    先に戯曲を読んで面白い世界観だと思いました。少し時間と空間がごちゃごちゃした部分があったのかなと思います。戯曲で思っていた時間の流れが劇場で体感として感じられなかったのが残念でした。マイムの情報量が多かったのではないかと思います。それらをもっとそぎ落とせば台詞がたってくるのではないかと思います。いい台詞がばちっとハマらないまま、流れていってしまったのがもったいなかったと思います。台詞が立つような、ばちっとはまるような置き方の演出が必要だと思いました。


    ブルーエゴナク 『おとずれないひのために』の公演詳細ページはここをクリック!
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    写真撮影:青二才晃(せんがわ劇場市民サポーター)

      


  • 2018年09月09日

    第9回せんがわ劇場演劇コンクール 専門審査員講評(1) 「コトリ会議」

    ※掲載の文章は、第9回せんがわ劇場演劇コンクール表彰式の際、専門審査員から各劇団にむけて語られた講評を採録・再構成したものです。




    ■野上絹代

    コトリ会議さんは思わずクスッとしてしまう台詞のやり取りがとても魅力的でした。ただ、編集で短くした感じが否めないというか、所々腑に落ちない部分がありました。例えば母の存在。地球が終わるときにロマンチックでない感傷的ではないアプローチも観てみたかったです。


    ■常田景子

    台詞がとても良かったです。長さについては、凝縮されていれば短くてもいいとは思いましたが、ちょっとものたりない感じがしました。個人的な意見ですが「チラ美のスカート」というタイトルなので、衣装のスカートそのものがもうちょっと素敵だったらよかったと思います。


    ■土田英生

    台詞が相当面白かったです。設定の飛ばし方やリアリティーの作り方がとても優れていた。ただ、時間の感じさせ方に問題がある。実際の長さではなく、了解感を持たせることが必要だと思う。あと、オープニングシーンが長すぎる。告白があって、タイムスリップして……そこまではあのカップルの話しかない。途中になんかあれば全然違ったと思うんですけど、最後に戻ってきて3周目だというとき時、やっと戻ってきたというのが全く感じられない。時間を軸にしているだけにそこがもったいないと思いました。


    ■佐川大輔

    演劇として巧みな作品だと思いました。脚本として読んだ時に、読みものとしてとても面白いです。地球滅亡という状況ですが、俳優さんたちの演技は抑制が効いていて、品もあり、説得力を感じました。また世界観がおもしろいです。例えばタイムマシンが小さな箱だったり、かもめが飛ぶシーン、などシリアスな状況でありながらも演出がどこかまぬけな感じで、照明を押さえた舞台に波の音が流れる暗い演出と、そうじゃない物を同居させているところにも演出としての美学やセンスを感じます。世界観としては、この作品は完成度が高いと思います。また死ぬシーンで、でんぐり返しをするところは演劇的なことをよくわかって作っていると思いました。残念だったところは、30~40分の制限時間が22分であったというのは、やはり物足りないです。時間制限も審査対象になりますので、それもクリアしていく事も今後のコンクール活動では必要だと思います。


    ■熊井玲

    台詞が素晴らしかったです。あれだけシリアスな空気のなかでお客様の笑い声が聞こえるというのはやはり台詞がいいから、台詞が届いているからだと思います。私の好きな作品の傾向というのもあるかもしれませんが、世紀末感、地球滅亡の大きな事と目の前の二人の未来をどうするかという、この2つがすごく昇華できている素敵な作品だと思いました。もう少し長く先が観たかったというもの足りなさはありますが、すごくよかったなと思います。


    コトリ会議 『チラ美のスカート』 の公演詳細ページはここをクリック!
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    写真撮影:青二才晃(せんがわ劇場市民サポーター)