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2018年02月27日

TA(ティーチンクアーティスト)養成プログラム

 企画運営部の柏木です。
2018年、はじめてのブログとなります。

 近年、せんがわ劇場では、調布市内の学校、児童館、放課後デイサービス等に演劇の専門家を派遣し、演劇的手法を使ったワークショップを数多く行っています。その数は年々増え、2017年度の実施コマ数(授業1コマ、または一時間)は100コマを超え、参加人数は、のべ2401名に達しました。
 しかし、演劇の専門家でも、演劇教育(ドラマ・エデュケーション)については経験がまちまち。
日本国内でも、いろいろと摸索中だと思います。


 そこで、1/9(火)〜1/13(土)の5日間、ニューヨークでドラマ・エデュケーションを体系化している劇場:BAM (※1)と連携し、Stephen
DiMenna(スティーブン・ディメンナ)氏を、せんがわ劇場に招聘。

 期間内の2日間、劇場から派遣される専門家たちのスキルアップを目的とした『TA養成プログラム』 (※2)を開催しました。

※1 BAM(バム)
Brooklyn Academy of Music(ブルックリン音楽アカデミー)
1861年にニューヨークのブルックリンに設立された非営利の演劇、アート、シネマセンターであり、アメリカ最古のパフォーミング・アート・センター(総合芸術施設)。

※2 TA(ティーチングアーティスト)
演劇を通して、子供達への教育に携わっているアーティストの事。NYではTAを育成するプログラム、TAと学校現場に携わるプログラムの基礎があり、キャリアとしても確立している。



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プロジェクト名:
《Drama education program by Sengawa Theater of Chofu-City》
〜Mr. Stephen DiMenna and the Sengawa Theater with support from BAM〜

調布市せんがわ劇場 「ドラマエデュケーション・プログラム」
〜ステファン・ディメンナ氏 & せんがわ劇場 with BAMサポートによる〜

『TA養成プログラム』レポート
1/9(火)10:00−13:00
1/10(水)10:00−13:00
会場:調布市内

今回の参加者は、せんがわ劇場演劇コンクール出身者、または、仙川にある桐朋学園芸術短期大学演劇科出身者、もしくは、劇場事業に複数回参加した芸術家で、ドラマエデュケーションに強い関心と向上心を持つ芸術家23名(俳優、作家、演出家)。
※ すでに学校等でドラマエデュケーションに携わっている者もいる。


講師のStephen DiMenna(スティーブン・ディメンナ)氏


通訳とアシスタントでNYから来日した、森永明日夏さん


【受講者の豊田可奈子さん体験記】
《1日目》
部屋に入った瞬間から楽しげな音楽でリラックスした空間がそこにあった。
朗らかにリラックスしたムードでスティーブ氏はワークショップを始め、気づけばとても自然に楽しみながら講義を受けていた。
彼のワークはどれもシンプルかつ、受ける側の年齢、環境、モチベーションによってレベルを変えることのできる変容性をもち、誰でも楽しむことができる点が素晴らしい。

似たワークは演劇でもたくさんあるけれど、表現をしたことのない人にも抵抗なく受け入れることのできる受け皿をもち、受ける者が誰1人として嫌な気持ちにならない空間づくりがなされていてとても感銘をうけた。
表現者が受けても面白いし、そうでない者が受けても満足感を得られ、知らない人達がその時間を経験することで一つのカンパニー(チーム)になれる素晴らしい時間だった。




《2日目》
2日目はさらに具体的な作品作りにまで踏み込んだ。お皿を使ったゲームから少しずつ芝居的要素やコミュニケーション要素を足して行き最終的には一つの小作品へ繋げてゆく。

子ども達にやる場合には、5日、ないしは1ヶ月かけて行う内容を、講師向けに2時間でギュギュっと行ったのだが、これを実際に子ども達に対して行った時に、どのような反応が生まれ、どのような作品が生まれるのかが非常に気になった。
実際に、後日スティーブ氏のWSが中学生、市民に行われたのだがその内容がとても気になるところである。

とても濃い内容の二日間でさまざまなワークに対する対処法など為になる内容が沢山あった。しかし人と出会うということは、想定内以上のことが山ほど起こるものであり、出会えば出会うほどに経験は増え、人生は豊かになるものだと感じた。この経験を活かしさらにたくさんの出会い、交流をしていければと思う。




【参加者からの感想抜粋】

●初めてお会いしたということを感じさせないオープンな人柄のスティーブ氏のおかげで、あっという間にクラスの空気が温まりました。
彼が大切にしている「受講者に楽しいと感じてもらうこと」「クラス全体が一緒に芝居を作る仲間になること」が、私自身が教えるときにも大切にしていることだったので、とても共感しました。
みんなが集まってくるときから音楽を使用したり、また授業中もエクササイズを進めていくテンポもよく、とてもリズム感を大切にしているのだなと思いました。

●演劇WSで演技方法や、演出方法、演劇創作について学ぶことはあるのですが、今回特に秀逸だと感じたのは、教育の分野(教える側の指導等)へのアプローチだと思いました。
参加者から、直面する幾つかのケースをあげると、講師も例を出してくださり、世界共通の子供とのやりとりにおける悩みである事もよくわかりました。そして、その対処方法も教授頂くことにより、具体的に参加者の成長に繋がったことは間違いないと感じます。

●2日間通じての感想としては、まず「TA」という、馴染みのない制度・言葉との距離感がぐっと縮まり、演劇と教育を繋ぐことの意義について、また一歩考えを更新することができまた。



●目指すべきゴールに向けてのウォームアップが準備周到に用意され、自然に見えて、実は多くの示唆や意図に囲まれていたのかと落ち着いてみて感じた。経験からくる自信とファシリテート力にも感服した。

●まずは自分のことを使う、自分はどういう人間なのか?ということに向き合うというアイディア、そしてそれがシリアスにならないように、グループワークでパフォーマンス化していく。いい発見がありました。プログラムの構築方法、またエクササイズアイディアの応用の仕方なども含め、改めていい確認が出来ました。

●印象的だったのは、手に乗せた紙皿を落とさないように集団で動くエクササイズ。そこから今度は紙皿を無くした状態でまた同じ動きをしてみるのですが、当たり前ですが自由度が増すばかりか、先の動きをトレースする楽しさからアレンジも加わり、皆とても躍動的になっていたことです。初めから紙皿無しではこうは行かないなと感心しました。子供達を中心とし、先生をも巻き込みながらエクササイズやゲームを通じて、一般的な固定観念に囚われず柔軟な発想を持つことの大切さを、私たちも一緒になって学んでいくのが、アウトリーチでは必要だと私は思っています。今回のワークショップではそこを再確認しました。




●途中、日本のワークショップでもよく目にするボール投げを行いましたが、ワークに対する観点が私の知るものより遥かに体系だっており、一つ一つの意味、目的がはっきり定められていることを感じました。
私たちがワークショップを行う上で、最も初歩的な部分で肝に銘じておくこと(講師の姿勢、生徒が楽しむことを重要視すること、集団の心理の移り変わりなど)を再認識しました。

●2日間通して、多くのことを言葉で教えてくれて、身体で気付かせてくれました。ファシリテーターとして大事なこと、目的のためにプログラムを組み、どういった経緯を踏めば辿り着けるのか、子供たちが自由に表現活動できるようになるのか。など、大きな糧を得ることができました。

●この日の印象的なこととして、WSの経過の中で積み上げがあった上でグループでのパフォーマンスを全員が出来た。これが積み上げなくいきなりパフォーマンスはできなかったということ。
それから、自分のパーソナルなストーリを表現にすることでその人だけのものであったものが自分の外側に向かってゆく、そして誰かに何かを感じさせる、というこのプログラムは、自分をなかなか上手く表現することが出来ない子どもたちにとってはとてもいい体験なのではないかと感じました。



●「やらなくていい、観ていて。だって、演劇には観客も必要だからね。」というコメントは、参加に抵抗があったり拒否をしてしまった人々を排除せずにどんなものでも良いと全肯定していく姿勢は勇気付けられるものでした。

●先を予想させない、でも怖がらせず、ワクワクするような感覚にも出会えました。
一つ一つのワークがとてもよく考えられているプログラムで、このレベルのものが日本で他に受けられるのだろうかと思ったほどです。子供の頃に演劇WSという類を受けたことがなかった私はこんなワークだったら受けてみたかったなぁと思いました。
ただ、2日で3時間ずつのトレーニングはとても短いなと思いました。
せめて倍の時間があるといいなと思いました。
ステーブンが知ってる知識や経験の導入部分のみに触れた気がして、もう少し突っ込んでいかないと知ることができないものもあるのかもしれないと思うこともありました。
また次、このような企画につながり、昨日と今日で得たものをもっと深められるチャンスがあることを願っています。今回の機会を与えてくださってどうもありがとうございました!!!

●今日の講座の中で一番印象が強かったことは、とにかく子ども達に「楽しむ」「楽しんでもらう」このことでOK!このシンプルさに目から鱗でした。
そして、どのアクティビティにも細かな段階があり、簡単なレベルからタスクを足して難易度を上げていくことで、参加者の対応レベルを把握しつつ、参加者の満足度も満たしている。このことに大変驚きました。
それはスペシャルニーズ(特別支援学級)の子ども達ともできるし、思春期の中学生や、演劇のプロアマが混ざった大人とも、その都度メンバーや目的によって合わせられる素晴らしいワーク達でした。また、子ども達への言葉がけや、対応の仕方、心構えにおいても、大変勉強になりました。



【所感として】
 たった2日間でも、参加者たちの意識が変わっていく様子が多く見受けられた。
 NYから訪れたStephen氏により、違うキャリアで演劇に携わってきた者たちが、共通の意識を持てたのは大きな収穫であった。と同時に、この活動を続けていくことで、摸索中である日本の演劇教育(ドラマ・エデュケーション)の大きな歩みのひとつになることを展望している。

 豊かに見えても、現代には多くの問題が潜んでいる。経済格差による貧困、難民受容と人種差別、エネルギーと環境破壊など社会的なものから、家族、隣人間の憎悪、無差別殺人など心理的なものまで。演劇によって、少なからず力になれると良いと感じる。
 せんがわ劇場に集うアーティストたちが、地域の文化発展や問題解決の一助となることも期待している。



Stephen DiMenna プロフィール
演出家、NYU(ニューヨーク大学)教授。またBAMのTAのトレーナーであり、後進を育成する役割を果たしている。
また、発展途上国の子供たちの社会的向上のために、国際劇場(The International Theatre)のリテラシープロジェクトの芸術監督を務める。タンザニアと南アフリカの子供たちについて、4本のドキュメンタリー映画を制作、監督も行う。
さらにミネアポリスの拘留施設で少年犯罪者とワークショップを行い、ミネアポリスのフラー・ヤング・ピープルズ・シアターで60以上の演劇、ミュージカル、オペラを創作している。


文責:企画運営部 柏木俊彦


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