2017年10月03日
受賞者インタビュー(3) HOLIDAYS 深堀絵梨さん(演出家賞)

演出家賞おめでとうございます。演劇コンクールはいかがでしたか?
深堀 ありがとうございます。
コンクールは初めて出たんですが、他の団体も観られてすごく刺激になりました。3団体観ましたが、同じ場所で同じ条件でやるっていうときに、この人たちはこうするんだなぁということが特に面白かったです。
気持ちとしては、演出家賞自体は嬉しいですけれど、やっぱり悔しいですね。グランプリ取れなくて。でも2週間くらい経って今は演出家賞頂けてよかったなって思っています。ある意味でグランプリよりも、良かったかなって思いました。
それは作家・演出家としての自分としてですか。
深堀 そうですね。自分の演出を認められたことは嬉しいです。
今回の作品は私と出演者と、音楽家と照明家それぞれが意見を出し合って作ってるので、その総合評価がグランプリだと思ったんです。演出家賞っていう個人賞になったのでみんなに対して悪いというか。ものすごく協力してくれてたから、できればグランプリでみんな評価されたいなって思っていたんですね。そこが悔しいところでした。
そうはいっても演出されたこと自体が具体化していなければ、賞に繋がらなかったと思うんですが。
深堀 そうですね。私のやりたいことを具体化して深めてくれるキャストの力量とそれを倍増してくれるスタッフがすばらしいと思っています。そこも評価されたと思います。全員で取った賞だと思っています。
今までの創造スタイルはどういったものだったんですか。
深堀 今回はメンバーが最初に決まっていました。いや、今までも最初に出演者が決まることの方が多かったですね。それでこのメンバーでやるならば何ができるかなって思っていたんですが、「ちゃぶ台」というキーワードははじめから頭にぼんやりあったんです。
最初は話もなくて、メンバーと実験してみて、ちゃぶ台と絡んで遊ぶことをやって、そこに私がストーリーをつけました。
ちゃぶ台って演劇やっているとよく出てきますよね。昔の映画を見てもちゃぶ台を挟んで夫婦や家族がやり取りしたりとかよく出てきて、コミュニケーションのツールの一つとしてすごく面白いアイテムだなと思っていました。ちゃぶ台から始めてみよう、と出演者3人でアイデアを出し合いました。アイディアをつなげて、面白いことを失わず、感情が現れてこれるものでどうかなあということで、当て書きしてあのストーリーになったんです。
舞台設定も話し合いの中で出てきたんですか?
深堀 この作品は初演をザムザ阿佐ヶ谷でやることが決まっていたので、その雰囲気をみて、ここは家にできるなあと思ったんです。そこ(ザムザ阿佐ヶ谷)でやるというのがあったので、ちゃぶ台いうコンセプトもはまったんです。そうするとだんだん昭和っぽい雰囲気になっていきました。
見ていると縁側があって、夏の日差しの中で日本家屋の座敷があって、というのが浮かんできました。
深堀 そういうのをイメージして、キャストにも伝えて、(自分と男性の役者は)夫婦でしたから、夫婦のちゃぶ台を挟んでいる映画を見せて、こういうのやりたいとかちゃんと伝えて。それを意識して二人ともやってくれました。
ザムザの空間もすごく良かったから(古い木を使って古い感じが出ていて)、そこを使ってというのが大前提だったからそんな質感になったんだと思います。
台詞だけではなく、台詞をより具体化するために振り付けというか身体表現があって、ちゃぶ台が4番目の出演者でしたね。
深堀 1番かもしれないです(笑)。主人公はちゃぶ台ですね。
ちゃぶ台を挟んで成り立つ会話と表現。その表現が補助的なものではなく動きが言葉になっていくという感じですか?
深堀 そうですね。実をいうと動きを先に作ったシーンもかなりありましたから、それもあるかもしれません。動きが始めにあって、そこにストーリーをはめ込んだので動きが絶対生きるはずなんです。
そういうところは面白く拝見しました。座敷童子(ざしきわらし)も出てきて見えない存在だけど、夫婦にもっとこうしたらと助言していく。そうした意味で動きというものに新しい見方を与えてくれた舞台だなあと思いました。
深堀 ありがとうございます。
でもやっているご本人は体がボロボロだった聞いていましたが。
深堀 そうだったんです。出演と演出をやるのは私にとって大変で、台詞もあるし動かなければいけないので、時間との戦いでした。
私は劇団東京乾電池というところに10年いますが、それよりダンサー経験の方が長いんです。踊りの方が体にしみ込んでいるので、動きは振りを決めずに即興だったりするんです。その方が臨機応変にできたりするので。台詞の方はタイミングが決まってることも多く、なるべくそちらをやりたくて、体の方を後回しにして、十分アップできずに通したり本番やったりして体を痛めてました。
ちゃぶ台は特別加工したものではないですよね。
深堀 重たいんです。本当に重たいんです。
役者としてよりダンサーとしての経験の方が長いんですか?
深堀 7歳から踊っていますのでもう30年になりますね。他のキャストも生粋のダンサーなんですよ。でも舞台上ではそんなくくりは関係ないなと思わせてくるし、すごく理解してくれる方々なので相性がいいと思っています。
(私自身は)演劇とダンスの融合した作品を数多く輩出したドイツのピナ・バウシュ(※1)の影響も受けています。そのカンパニーにいたダンサー・振付家の方から学ぶ機会があり、会話ではではなくマイムとか、所作とか、すごく短い或いは瞬間的な芝居だったり、そこをうまくダンスに取り込んでいるので勉強になっています。
東京乾電池とピナ・バウシュから学んだものをそのままやっているのではないのですが、目指すところは私がやってきたことのすべてであるお芝居とダンスの混在なので、かなり影響は受けてます。
今後やってみたい課題やちゃぶ台の次にくるものがありますか。
深堀 まだ浮かんでないんですよ。私は劇場が決まってメンバーが決まれば早いんですが。ちゃぶ台はしばらくやりたいです。もっといろいろできるかなと思うんです。あと、シリーズ化とか面白そうですね。
ちょっと前に歌手の人とやった「Gorsh」っていう作品がありますが、それは私と今回の音楽家と照明家も一緒に創りました。宮沢賢治の作品をいろいろ混ぜて創ったのですが、その作品がすごく楽しく、良い方向性が見えたので、それをアレンジしてまたやりたいです。歌あり踊りありしゃべりあり、でもミュージカルじゃないのをやってみたいです。
新しい表現として新しい言語を手にいれた。ちゃぶ台で確信を持てたと思うんですが。
深堀 そうですね。あとできれば私が出演しない舞台もやりたいです。やはり自分が出ると難しいんです。だから次ちゃぶ台を9月に再演するときは、演出助手を入れたり、私の代役をやってもらったりして、稽古では私はなるべく引いて見たいと思っています。そうやってやっと確信につながる気がします。
本日はありがとうございました。
深堀 ありがとうございました。
※1ドイツのコンテンポラリー・ダンスの振付家。ドイツ表現主義舞踊の権威であるヨースの影響を色濃く受け継ぎながら、演劇的手法を取り入れた独自の舞踊芸術は演劇とダンスの融合とも言われ、彼女自身は「タンツ・テアター」と呼ぶ。
深堀 そうですね。私のやりたいことを具体化して深めてくれるキャストの力量とそれを倍増してくれるスタッフがすばらしいと思っています。そこも評価されたと思います。全員で取った賞だと思っています。
今までの創造スタイルはどういったものだったんですか。
深堀 今回はメンバーが最初に決まっていました。いや、今までも最初に出演者が決まることの方が多かったですね。それでこのメンバーでやるならば何ができるかなって思っていたんですが、「ちゃぶ台」というキーワードははじめから頭にぼんやりあったんです。
最初は話もなくて、メンバーと実験してみて、ちゃぶ台と絡んで遊ぶことをやって、そこに私がストーリーをつけました。
ちゃぶ台って演劇やっているとよく出てきますよね。昔の映画を見てもちゃぶ台を挟んで夫婦や家族がやり取りしたりとかよく出てきて、コミュニケーションのツールの一つとしてすごく面白いアイテムだなと思っていました。ちゃぶ台から始めてみよう、と出演者3人でアイデアを出し合いました。アイディアをつなげて、面白いことを失わず、感情が現れてこれるものでどうかなあということで、当て書きしてあのストーリーになったんです。
舞台設定も話し合いの中で出てきたんですか?
深堀 この作品は初演をザムザ阿佐ヶ谷でやることが決まっていたので、その雰囲気をみて、ここは家にできるなあと思ったんです。そこ(ザムザ阿佐ヶ谷)でやるというのがあったので、ちゃぶ台いうコンセプトもはまったんです。そうするとだんだん昭和っぽい雰囲気になっていきました。
見ていると縁側があって、夏の日差しの中で日本家屋の座敷があって、というのが浮かんできました。
深堀 そういうのをイメージして、キャストにも伝えて、(自分と男性の役者は)夫婦でしたから、夫婦のちゃぶ台を挟んでいる映画を見せて、こういうのやりたいとかちゃんと伝えて。それを意識して二人ともやってくれました。
ザムザの空間もすごく良かったから(古い木を使って古い感じが出ていて)、そこを使ってというのが大前提だったからそんな質感になったんだと思います。
台詞だけではなく、台詞をより具体化するために振り付けというか身体表現があって、ちゃぶ台が4番目の出演者でしたね。
深堀 1番かもしれないです(笑)。主人公はちゃぶ台ですね。
ちゃぶ台を挟んで成り立つ会話と表現。その表現が補助的なものではなく動きが言葉になっていくという感じですか?
深堀 そうですね。実をいうと動きを先に作ったシーンもかなりありましたから、それもあるかもしれません。動きが始めにあって、そこにストーリーをはめ込んだので動きが絶対生きるはずなんです。
そういうところは面白く拝見しました。座敷童子(ざしきわらし)も出てきて見えない存在だけど、夫婦にもっとこうしたらと助言していく。そうした意味で動きというものに新しい見方を与えてくれた舞台だなあと思いました。
深堀 ありがとうございます。
でもやっているご本人は体がボロボロだった聞いていましたが。
深堀 そうだったんです。出演と演出をやるのは私にとって大変で、台詞もあるし動かなければいけないので、時間との戦いでした。
私は劇団東京乾電池というところに10年いますが、それよりダンサー経験の方が長いんです。踊りの方が体にしみ込んでいるので、動きは振りを決めずに即興だったりするんです。その方が臨機応変にできたりするので。台詞の方はタイミングが決まってることも多く、なるべくそちらをやりたくて、体の方を後回しにして、十分アップできずに通したり本番やったりして体を痛めてました。
ちゃぶ台は特別加工したものではないですよね。
深堀 重たいんです。本当に重たいんです。
役者としてよりダンサーとしての経験の方が長いんですか?
深堀 7歳から踊っていますのでもう30年になりますね。他のキャストも生粋のダンサーなんですよ。でも舞台上ではそんなくくりは関係ないなと思わせてくるし、すごく理解してくれる方々なので相性がいいと思っています。
(私自身は)演劇とダンスの融合した作品を数多く輩出したドイツのピナ・バウシュ(※1)の影響も受けています。そのカンパニーにいたダンサー・振付家の方から学ぶ機会があり、会話ではではなくマイムとか、所作とか、すごく短い或いは瞬間的な芝居だったり、そこをうまくダンスに取り込んでいるので勉強になっています。
東京乾電池とピナ・バウシュから学んだものをそのままやっているのではないのですが、目指すところは私がやってきたことのすべてであるお芝居とダンスの混在なので、かなり影響は受けてます。
今後やってみたい課題やちゃぶ台の次にくるものがありますか。
深堀 まだ浮かんでないんですよ。私は劇場が決まってメンバーが決まれば早いんですが。ちゃぶ台はしばらくやりたいです。もっといろいろできるかなと思うんです。あと、シリーズ化とか面白そうですね。
ちょっと前に歌手の人とやった「Gorsh」っていう作品がありますが、それは私と今回の音楽家と照明家も一緒に創りました。宮沢賢治の作品をいろいろ混ぜて創ったのですが、その作品がすごく楽しく、良い方向性が見えたので、それをアレンジしてまたやりたいです。歌あり踊りありしゃべりあり、でもミュージカルじゃないのをやってみたいです。
新しい表現として新しい言語を手にいれた。ちゃぶ台で確信を持てたと思うんですが。
深堀 そうですね。あとできれば私が出演しない舞台もやりたいです。やはり自分が出ると難しいんです。だから次ちゃぶ台を9月に再演するときは、演出助手を入れたり、私の代役をやってもらったりして、稽古では私はなるべく引いて見たいと思っています。そうやってやっと確信につながる気がします。
本日はありがとうございました。
深堀 ありがとうございました。
※1ドイツのコンテンポラリー・ダンスの振付家。ドイツ表現主義舞踊の権威であるヨースの影響を色濃く受け継ぎながら、演劇的手法を取り入れた独自の舞踊芸術は演劇とダンスの融合とも言われ、彼女自身は「タンツ・テアター」と呼ぶ。
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