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2016年09月01日

第7回せんがわ劇場演劇コンクール 専門審査員講評(5) 開幕ペナントレース

開幕ペナントレース
写真撮影:Koji Ota

※掲載の文章は、第7回せんがわ劇場演劇コンクール表彰式の際、専門審査員から各劇団にむけて語られた講評を採録したものです。
劇団によって審査員の順番が違っていますが、当日の状況を再現しています。どうぞご了承ください。



■天野眞由美

開幕ペナントレースさんの、真っ白けの(衣裳の出演者)3人の方の身体能力はすごいですね。縦横に動かされて大変だったろうと思います。あれだけ動きながら、 あれだけしゃべらされて、ちょっとわからないところもありましたが、同じことを何度も何度も繰り返してしゃべって、Cの方がだんだん変わっていって、大変楽しませていただきました。
演出をなさった方でしょうか、(出演者の中で)一人、我関せずみたいに冷静にしていらっしゃるのが、もちろん一生懸命なさってたんでしょうけど、いいなと思いました。
でも残念でしたね、最後の(仕掛け)はもっとしっかり散らばりたかったんですよね。わかりますし、残念です。でも、とても素晴らしい舞台をありがとうございました。

■伊藤キム

圧力を感じました。あの3人の役者さんの衣装と肉感といいますか、声といいますか、それを含めて相対的な圧力を感じました。ものすごい圧力と暑苦しさ、そんな感じなんですが、照明と舞台装置、舞台美術がとても シャープ で、 暑苦しい感じとシャープな空間がとても良いバランスであったなという気がしました。
それからセリフが一定のトーンでお経みたいに聞こえて、宇宙の話なのにお経なのか、と思えて面白かったです。

■菊池准

僕は、演劇界のどこで育ったかというと、もう皆さんはあまり知らないでしょうけど、新劇という世界で育ったので、新しい演劇というのはすごく刺激で、吸収しようと思うんですが、見事としか言いようがないですね、僕から見ると。すごいと思う。
勢いがあるし自信もある。それは俳優にとっても必要な事ですね。エネルギーは、どこかでくじけたりしてると、絶対舞台の上で見えてしまうんですが、それがない。常にどんなものでも吹き飛ばしていくというエネルギーがとても素敵だと思うし、演劇をやる上でも必要だと思います。
そういう意味でもすごく面白かったし、戯曲も、猿から始まり猿に終わるという中で、一体何が起きているのかという構造もすごく良かったと思います。
 身体表現と言語というものを、バラバラにして表現している部分としてはとても新しい試みだろうと思います、まあ、最近は多いですけれども。
僕らの世代は、ハムレットではないけれど「言葉、言葉、言葉」というところで育ってきて、言葉をどうやって伝える事ができるか、言葉で何を伝える事ができるかということを(やってきました)。台本を読ませてもらいましたが、けっこう面白い言葉がいっぱいあるんです。あの身体表現と言葉を、両方武器にして使えたらすごいと思うんですけれど、ちょっとその意味では、とてもいいセリフがあるのに、その言葉が伝わっていない、言葉として潰れちゃってるという部分が(残念です)。
すごい挑戦ですよね。体と言葉を分離させて、なおかつ伝えようというのはすごい挑戦だと思うけれど、そこはちょっと挑戦に破れてしまったかなというところが残念でした。だから、もっとちゃんと言葉が伝わって体が動く、別の動きもできるという挑戦をもっと続けて、それができる体を持ったら凄いと思います。それを今度見せてください。

■徳永京子

同じ作品を以前拝見していて今回見せていただくのを楽しみにしていたんですけれど。
作品の性格上しょうがないんですが、1回目の衝撃が強くて、その後おそらく上演をたくさん繰り返されたと思うんですが、40分に短縮したということが「凝縮」になっていなかった。贅沢な要求ですけれど、一度観た者としては、上演を重ねた分の深みとか広がりみたいなものが、もう少し舞台上にあったらいいなと思いました。
ただこの作品は、最初に拝見した時からすごくいい作品だと思っています。戯曲の中に時々、本当にすごくキラっとするような、とても好きなフレーズがあります。例えば「過去と未来の引っ張り合う均衡。その中間が現在なのである」とか、ちょっとクールなロマンチストな感じですね。舞台上で繰り広げられているのは、暑苦しくてふざけたことなんですけれど、決して開幕ペナントレースさんがそれだけで成り立っているんじゃない、というのはちゃんとよくわかりました。
ひとつの宇宙の中に異なる空間がいくつもあって、忘れ去られた衛星が、勝手にくるくる回っていたりとか、星と星とが衝突していたりとか、そういう事柄を1つの空間の中で見せているというのは、とてもよくわかります。だからそこはもう安心して、繰り返しは靴のエピソードだけにしていいんじゃないかと思います。照れ屋さんなのかなと思うんですけれど、ちょっと腹をくくってもいいんじゃないかと思いました。
あとこれは深読みかもしれないですけれど、「ミクロの決死圏」(※1)でもあるのかな。(ボーイ役の)村井さんが牛乳を客入れの時からずっと飲んでらしたのは、体内に白いものを入れるという意味で、幕が開くと壁も床も白い。「ミクロの決死圏」での体の中と、「猿の惑星」や「2001年宇宙の旅」での宇宙という、2つの空間の内と外を見せたいのかなと思って、やるなぁって (笑)思いました
※1 ミクロの決死圏・・・1966年アメリカのSF映画。ある命を救うために、医療チームを乗せた潜航艇をミクロ化して体内に入り、タイムリミットまでに治療しようと試みる。


※以上の文章は、第7回せんがわ劇場演劇コンクール表彰式の際、専門審査員から各劇団にむけて語られた講評を採録したものです。
劇団によって審査員の順番が違っていますが、当日の状況を再現しています。どうぞご了承ください。


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