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2016年09月01日

第7回せんがわ劇場演劇コンクール 専門審査員講評(3)  「情熱のフラミンゴ」

情熱のフラミンゴ
写真撮影:Koji Ota

※掲載の文章は、第7回せんがわ劇場演劇コンクール表彰式の際、専門審査員から各劇団にむけて語られた講評を採録したものです。
劇団によって審査員の順番が違っていますが、当日の状況を再現しています。どうぞご了承ください。



■天野眞由美

面白かったです。というのは台本を読んだとき、私は面白いと思わなかったんです。でも本番を観たら面白いじゃない。そして出ていらっしゃる役者さんたちもみんな変なんです。その訳は段々わかってきましたけど、みんな変で、それがおかしくて、楽しませてもらいました。
それともう一つ、見回りのロボットが回ったりするじゃないですか。「シィー」とか言って。その時のロボットの雰囲気とあの言葉。「えっさえっさ」なんて言って通って行く、そういう発想とかがすごく楽しい。そしてドラム缶が「ガンガン!」という、あの音の使い方とかとても強烈で、楽しかったです。みなさん楽しんでやってらっしゃるんじゃないかなと思いました。そこに好感が持てました。

■伊藤キム

遊び心がいっぱいあって、とても良かったと思います。特に小道具の使い方なんかそうですよね。もちろん演出としてなされてることですけれども、突発的に起きることを、そのまま遊びの中に取り入れているというところがあったり。
空間をいろいろとダイナミックに使われていた感じがして、スケールがとても大きいなという気がしました。今の話にもありましたが、外を見回っているロボットだとか、特に最後、部屋の外を意識させるようなところがあって、とても象徴的でした。

■菊池准

パンフレットに書いてある「サル以下の学生」を演じるにあたって、確かにサルみたいな動きをしている。近未来の作品であるんですけど、見ているうちに、今どきの若い子にはああいう、すごく姿勢の悪い子がいる(と思いました)。だから近未来でありながら、今、現在を象徴しています。  
近未来を利用して現代を象徴していると考えれば、AIに会社を乗っ取られた人とか、デジタルの立派な機材を優秀な生徒の方に全部取られちゃって自分達にはアナログしか残ってない中で、自分達のアートを表現しようとするドラマは、現代的なブラックなユーモアになっている。笑いもあるけど、非常にブラックな面がいっぱいある。磨いていけば、もっと洗練できるんじゃないかなと思います。
逆に、ウッドストック(※1)での叫び、いわゆる落ちこぼれの叫び、アナログの叫びみたいなものは、僕ら世代から言うと、あんなのじゃだめだよというのはすごく感じてしまって、あそこで冷めてしまうんですね。あれがもっと来てくれると、凄いねっていうことになるんですが、そこをもうちょっと頑張ってほしかった。
※1 ウッドストック・フェスティバル・・・1969年にアメリカで開催された伝説的な野外コンサート

■徳永京子

これはSFですけど、描かれてるのは青春そのものですよね。大いなる徒労と、自意識と、片思いと下ネタという「THE青春物」。それを島村さん流にやると、ああいう風な広がり―広がりといっても完全に脱力系なんですけれど―脱力した空気と身体を伴った広がりを持つんだというのを見せてもらって、とても面白かったです。
他の審査員の先生方もおっしゃっていますけど、SFの消化のさせ方が非常に秀逸でした。用務ロボットが「えっさえっさ」という、非常にアナログな掛け声で見回りをするとか、その時代の学生にはフジロック(※2)もウッドストックも区別がつかなくて、音楽の仕事に就きたい学生でも混同してしまっているとか。そしてちらっと「富士山が噴火する前の話」みたいなちょっと怖いフレーズも出てきたりして。
どういう状況にいる、どういう時代の、どういうシステムの中にいる人達を設定して描いてるのかということを、説明台詞ではなく、少しずつ見せていくのがすごく上手で驚きました。以前も情熱のフラミンゴさんを見せていただいたことがあるんですけれども、上手くなったんじゃないかなと(笑)、ちょっと思いました。
無自覚かもしれないですけれど、情熱のフラミンゴさんのいいところは、愛嬌と、批評性があるところです。愛嬌というのは、サルみたいな猫背が幽霊みたいに見えるような人達がフラフラしながら喋っていて、最初はだらしなく見えるのが、内面がわかってくると、どの登場人物もすごくダメなんだけども好きになったりするところ。それから、AIに会社を乗っ取られるみたいなことで、ちょこちょこと社会に対する批評性もあったりする。あまり他にはないバランスで、面白かったです。
※2 フジロックフェスティバル・・・1997年より開催されている日本最大級のロックフェスティバル


※以上の文章は、第7回せんがわ劇場演劇コンクール表彰式の際、専門審査員から各劇団にむけて語られた講評を採録したものです。
劇団によって審査員の順番が違っていますが、当日の状況を再現しています。どうぞご了承ください。


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