2015年10月20日
第6回せんがわ劇場演劇コンクール 専門審査員講評(4) Chon-muop

※掲載の文章は、第6回せんがわ劇場演劇コンクール表彰式の際、専門審査員から各劇団にむけて語られた講評を採録したものです。
■眞那胡敬二
この作品も、僕は個人的な日記を見たような印象を持ちました。中心にいた人物の頭の中の出来事だというように集約されていたので、そういう印象になったのと思います。でも、その日記には3人の人物とその間の葛藤というのが描かれていて、もっと多面的な世界があったと思います。
僕が一番おもしろいと思ったのは「記憶を記録する」という言葉で、個人の記憶というのは記録できないものなんですけれども、社会では記録として残っているものが真実と思われるというということはある気がして、記憶と記録、どちらに真実があるのか、というのはおもしろいテーマだなと思いました。
頭の中に現れる人物がなぜあの3人なのかということは、よく理解できませんでした。7月12日でS氏の想像力が行き詰まってしまったというのは、あ、そうなのというか、言い訳のようにも聞こえたし、そんなこといわれてもなあ、というのもちょっとありましたが、この世界を、多面的な視点を持って描こうとしたことはとてもよく伝わりました。
■徳永京子
私、たまたま「出口なしフェス」(※2)でchon-muopさんを拝見していました。なので、サルトルの「出口なし」の、あのとき上演された作品をベースに1人プラスして、「出口なし」の「出」をとって再構成されたのを、個人的に興味深く拝見しましたし「出口なし」の今日への回答を提示されたと思います。
「出口なし」のなかでサルトルが言っている「人間を否定するものは何か」。それに対するサルトルの答えは「他者が否定する」だとおそらく櫻井さんは受け取っていらして、そこから今の時代を考え「自分を否定してくれる他者すらもいない」という視点からこの作品を創られたのではないかと思いました。他者すら生活の中に存在していないS氏の勝手な想像力が生みだした3人の漫才ですよね。サルトルの「出口なし」から始まって、「出口もなければ入り口もない」ということも反映されたと思うんです。
が、S氏の現代人としての苦悩が、ちょっと古い。せっかく今現在の7月12日と何度も出しているのに、これは20世紀哲学の悩みなんじゃないかという。観念的でもいいんですが、その観念がちょっと借りてきたものという気がして、そこら辺をもうちょっとえぐれると思うんです。そこを観たかったなという風に思いました。
俳優さんのアンサンブルはさすがによく練れていたし、S氏という、今回プラスされた方も、全然つながっていないようでいて、ちゃんとつながっているアンサンブルは、とてもよくできていましたので、ちょっとそこが残念です。
※2 2015年4~5月にd-倉庫にて行われた、現代劇作家シリーズ5 J-P.サルトル「出口なし」フェスティバルhttp://www.geocities.jp/azabubu/huis_clos/
■白神ももこ
このコンクールは、この劇場を使ってやれるという副賞があるので、空間をどれだけ最大限に使えるかっていうのをけっこう見ていたんですけれど、一番冒険をしているというか、空間を使っているのが見受けられたと思いました。
私が思ったのは、登場人物のエピソードが少ないというか、情報が少なくて、もうちょっと気持ち悪いところまで行けたんじゃないかということ。サッパリしていたという感じがあったので、もっと気持ち悪いところとか暗いところが見えたらおもしろかったかなという印象でした。
■越光照文
4人の俳優さんの確かな演技力というのが感じられました。これは演出の力だと思いますが、とてもしっかりしていた。演出的にも手数が豊富というか、バラエティに富んでいて、照明・音響・同時多発的な会話、あらゆる演劇的なテクニックを駆使していたという意味では、とても経験豊かな集団であり、表現力も巧みだったと思います。
問題は、このS氏と「出口なし」の登場人物3人との関係性の希薄さと、S氏が背負っている状況が、具体的にどう「出口なし」で、どうこの3人の関係につながっていくのかというところが、多くの先生方が指摘なさっていますが、弱いところではなかったかと思います。俳優がとてもしっかりしていて、演出力もあったのですが、やはり脚本に多少難があったのかなと思います。
※以上の評は、第6回せんがわ劇場演劇コンクール表彰式の際、専門審査員から各劇団にむけて語られた講評を採録したものです。
Chon-muopの公演詳細ページはこちら
第6回せんがわ劇場演劇コンクール全体ページはこちら
写真撮影:青二才晃(せんがわ劇場市民サポーター)
この作品も、僕は個人的な日記を見たような印象を持ちました。中心にいた人物の頭の中の出来事だというように集約されていたので、そういう印象になったのと思います。でも、その日記には3人の人物とその間の葛藤というのが描かれていて、もっと多面的な世界があったと思います。
僕が一番おもしろいと思ったのは「記憶を記録する」という言葉で、個人の記憶というのは記録できないものなんですけれども、社会では記録として残っているものが真実と思われるというということはある気がして、記憶と記録、どちらに真実があるのか、というのはおもしろいテーマだなと思いました。
頭の中に現れる人物がなぜあの3人なのかということは、よく理解できませんでした。7月12日でS氏の想像力が行き詰まってしまったというのは、あ、そうなのというか、言い訳のようにも聞こえたし、そんなこといわれてもなあ、というのもちょっとありましたが、この世界を、多面的な視点を持って描こうとしたことはとてもよく伝わりました。
■徳永京子
私、たまたま「出口なしフェス」(※2)でchon-muopさんを拝見していました。なので、サルトルの「出口なし」の、あのとき上演された作品をベースに1人プラスして、「出口なし」の「出」をとって再構成されたのを、個人的に興味深く拝見しましたし「出口なし」の今日への回答を提示されたと思います。
「出口なし」のなかでサルトルが言っている「人間を否定するものは何か」。それに対するサルトルの答えは「他者が否定する」だとおそらく櫻井さんは受け取っていらして、そこから今の時代を考え「自分を否定してくれる他者すらもいない」という視点からこの作品を創られたのではないかと思いました。他者すら生活の中に存在していないS氏の勝手な想像力が生みだした3人の漫才ですよね。サルトルの「出口なし」から始まって、「出口もなければ入り口もない」ということも反映されたと思うんです。
が、S氏の現代人としての苦悩が、ちょっと古い。せっかく今現在の7月12日と何度も出しているのに、これは20世紀哲学の悩みなんじゃないかという。観念的でもいいんですが、その観念がちょっと借りてきたものという気がして、そこら辺をもうちょっとえぐれると思うんです。そこを観たかったなという風に思いました。
俳優さんのアンサンブルはさすがによく練れていたし、S氏という、今回プラスされた方も、全然つながっていないようでいて、ちゃんとつながっているアンサンブルは、とてもよくできていましたので、ちょっとそこが残念です。
※2 2015年4~5月にd-倉庫にて行われた、現代劇作家シリーズ5 J-P.サルトル「出口なし」フェスティバルhttp://www.geocities.jp/azabubu/huis_clos/
■白神ももこ
このコンクールは、この劇場を使ってやれるという副賞があるので、空間をどれだけ最大限に使えるかっていうのをけっこう見ていたんですけれど、一番冒険をしているというか、空間を使っているのが見受けられたと思いました。
私が思ったのは、登場人物のエピソードが少ないというか、情報が少なくて、もうちょっと気持ち悪いところまで行けたんじゃないかということ。サッパリしていたという感じがあったので、もっと気持ち悪いところとか暗いところが見えたらおもしろかったかなという印象でした。
■越光照文
4人の俳優さんの確かな演技力というのが感じられました。これは演出の力だと思いますが、とてもしっかりしていた。演出的にも手数が豊富というか、バラエティに富んでいて、照明・音響・同時多発的な会話、あらゆる演劇的なテクニックを駆使していたという意味では、とても経験豊かな集団であり、表現力も巧みだったと思います。
問題は、このS氏と「出口なし」の登場人物3人との関係性の希薄さと、S氏が背負っている状況が、具体的にどう「出口なし」で、どうこの3人の関係につながっていくのかというところが、多くの先生方が指摘なさっていますが、弱いところではなかったかと思います。俳優がとてもしっかりしていて、演出力もあったのですが、やはり脚本に多少難があったのかなと思います。
※以上の評は、第6回せんがわ劇場演劇コンクール表彰式の際、専門審査員から各劇団にむけて語られた講評を採録したものです。
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写真撮影:青二才晃(せんがわ劇場市民サポーター)
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