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2015年10月20日

第6回せんがわ劇場演劇コンクール 専門審査員講評(3) 劇団しようよ

劇団しようよ「こんな気持ちになるなんて」



※掲載の文章は、第6回せんがわ劇場演劇コンクール表彰式の際、専門審査員から各劇団にむけて語られた講評を採録したものです。

■眞那胡敬二

僕は、大原くんの日記を見たという気がしました。若い頃の日記というのは、吐き出さずにいられないものを書き綴ったりするところがありますから、人に見られるのは非常に恥ずかしいものなんですよね。そんなものを見てしまった、という恥ずかしさがこちらにもあります。欠点をあげればいっぱいある・・・欠点だらけだと思うんですが、大原くんが考えあぐねた末に吐きだした、唯一のものがあれだった、というところにシンプルな強さを感じました。

僕の経験からいうと、若い頃の強い思いというのは先々そんなに変わらないんですね、その人にとって。そういう意味では、彼の根幹に関わる何かが吐露されているんだと思います。それは評価したいと思います。ですから、彼はこの先、そこにどんな新しいテーマを盛り込んだりしながら多面的な世界を創っていくのかな、なんて期待を持って拝見しました。

問題点としては、スイカというのが「赤」と「血の色」という接点しかなくて、そこ以上に広がらなかったのは残念だと思います。また、即興を重ねながら創ったのだと思いますが、胃の中に入っていった数人のキャラクターがとても似てるんですね。それは仲よしグループみたいで演劇的ではない、もう少し考えてほしいと思いました。


■徳永京子

やろうとなさっていることはよく伝わったつもりです。「ここにあるもの」と「ここにないもの」を結びつける、想像力を起動させるものこそが演劇なのであるということを、恐らくやろうとしているんだなと私は受け止めました。それはとても尊いことだと思います。なので、全然間違っていないんですけど・・・やっぱり、スイカの擬人化は、子どもっぽいですよね。

その子どもっぽいところから、ここにはない、はるかに自分とはまったく関係ない、でも傷ついている人の事を、観る人が我が事のように感じられるというところまでいく時に、やはり足場はそれなりに強くないと飛べない。その時にやはりスイカの擬人化、食べられなかったスイカの仲間という事では、途中で置いていかれる大人のお客さんはとても多いです。わかりやすいものから遠いものまで飛んでいくときの足場づくりを丁寧にしていく必要があると思います。

スイカを選んだというのも、間違ってはいなかったと思うんです。ただ、スイカのそれぞれのキャラクターだとか、ある程度スイカの話をしないと大原さんが持ってきたフリップの話につながらないということもあったと思うんですけど、40分の中に収めるときに、その辺をもうちょっとはしょっても、手渡せる強さ、大きさを獲得していけるように今後の作品づくりは考えていっていただきたいと思います。


■白神ももこ

私は案外くだらないのは好きなので、スイカは面白く拝見させていただきました。ただ、スイカはすごく好きだったんですけど、演出の大原さんが一番イケメンな役、美味しい役をやっているように見えてしまって、私も(同じ)自分で創って出る立場としては、私はNGですね。私が普通にこの作品に出ていたら、スイカを食べる役かスイカ役です。

テーマを伝える自分が一番強くなってしまうので、スイカにした意味がなくなってしまうというか、スイカがかわいそう。自分だけでフリップをやり続けるか、スイカで押し通して、スイカで観客を泣かせるくらいにするか、どちらかだな、という感じがしました。


■越光照文

俳優陣のアンサンブルがとてもよかったと思います。そして、演出家の意図を汲んで、同じ世界を共有してそれを描こうという思いがよく伝わりました。個々の演技力は優れていたと思います。

そしてまた、〈男性〉役=大原さんが持っていらしたフリップの内容が、このお芝居のテーマだと思いますが、好意的にいうならば、この難しいテーマを、観客に何とかわかりやすく伝えようという選択が〈スイカ〉の擬人化だと理解しました。しかし他の先生方がおっしゃっていたように、フリップを持った男のメッセージやテーマ性を、スイカの部分が担いきれていないということは否めないと思いました。


※以上の評は、第6回せんがわ劇場演劇コンクール表彰式の際、専門審査員から各劇団にむけて語られた講評を採録したものです。

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写真撮影:青二才晃(せんがわ劇場市民サポーター)


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