2015年10月20日
第6回せんがわ劇場演劇コンクール 専門審査員講評(1) オーストラ・マコンドー

※掲載の文章は、第6回せんがわ劇場演劇コンクール表彰式の際、専門審査員から各劇団にむけて語られた講評を採録したものです。
■眞那胡敬二
まず、このコンクールのために40分の作品を創って参加してくださった皆さまに心から敬意を表します。
評価をしなければいけないのでさせていただきます。僕の場合は(満点から)マイナスポイントを引きながら点数をつけていきました。
簡潔に言いますと、義理と人情、挨拶が大事な商店街と、経済優先の大きな不動産会社という構図が、ちょっと古くさい、新鮮みがないと思いました。主人公が、お父さんがすでに大きな借金を抱え、それを受け継いでいるにも関わらず、それに対して経営努力を何もしていないというのがどうも納得がいかない、人物に共感できないというのがありまして、それもマイナスです。
また、なぜ自転車屋なのかというのが、ちょっと納得がいかないですね。経営努力がたりないというのにもつながるんですが、自転車というのは、結構しゃれているものもあるし、商店街の中ではまだどうにかなりそうなんじゃないかと思うんです。
それから、モーツァルトと萩原朔太郎の落としどころがどうにもならなかった。最後に自転車のペダルを回しながらしゃべっていた台詞が(あのシーンはこの芝居の山場だと思うのですが)とってつけたようで、なんとも演劇的ではなかった。最後に月に向かって吠える主人公が開き直りにしか見えない。よかった点は次の方がおっしゃってくださると思います。
■徳永京子
今よかった点をといわれたんですが、たぶんこれからとてもきついことをいいます。私、この作品が予選の応募作品だったら、予選の通過を反対しました。(※1)なぜなら、私が一番やってはいけないと思っていることをなさっているからで、それは、登場人物がつらい気持ちの時に、台詞でつらいって書いてしまったことです。
演劇は、つらいという気持ちを、つらいという言葉を使わずに観客の心に届けることであって、ここに参加している方たちだけじゃなく、みんなそのためにしのぎを削っていると思うんです。だから私は、簡単に台詞で説明してしまうという事は、演劇のポテンシャルを低く見積もっていると思います。ふだんオーストラ・マコンドーさんがすごく熱心に活動されているということはわかっているつもりです。だから余計に残念です。
本当は倉本(朋幸)さんは、主人公が四面楚歌になってにっちもさっちもいかなくなって、理屈とか常識とか、そういうものを全部吹っ切って犬と一緒に月に向かって吠えるという、破天荒だけれど演劇的にはとても豊かな時間を、おそらく書きたかったんだと思います。だけどその前にぜんぶ理屈で台詞で語ってしまったから、あのクライマックスシーンが全然活きてこなかったし、豊かなものにならなかった。私は今後そこに気をつけて作品創りをして欲しいです。
いま真那胡さんがいろいろおっしゃったときにみなさん笑ってらっしゃいましたが、申し訳ないけど、笑ってる場合じゃないです。ぜひ重く受け止めてください。
※1 1次審査(予選)は、書類と過去公演の映像が審査対象となる。
■白神ももこ
仙川の街を取材したというのは、地域の公共ホールを使ってやるという面ではすごくいいなと思ったんですが、こういう作品を創るときは、さらにその裏側に見えるものというか、小さなことから、その裏側というか社会的なことがもう少し見えてくるとすごくいいのではと思いました。
また、この手の会話劇をするときは、身体反応、ものを扱うときの体がもう少し繊細に演出されていたらよかったと思いました。日常の体ってもっと繊細に反応しているというか、たとえば自転車屋さんだったら、自転車を倒しちゃったりしたとき(思わず)「あっ」てなるとか、いろいろあると思うんですけど、そういう細かいことをシビアに処理できたらいいのかなと思いました。
■越光照文
お疲れ様でした。みなさんがおっしゃったことは私も感じているところですけれど、愚直なまでに近代劇を志向してわかりやすく現代を語ろうという姿勢は、私は評価したいと思っています。
こういう(小さい)劇場ですから近代劇はリアルなセットは飾れないですよね。だから空間の処理が難しい。家の中、店先、たとえば店の奥にこの家のおカミさんがいるとか、そういう空間の処理が明確にできていればもっとハッキリしたんではないかなということと、みなさんおっしゃいましたけれど、細かい点、商店街に古くから住んでいて商店街を愛している人、そこにいる人々を衣裳を含めて丁寧に描いていくということが、こういうリアリズムの場合は大切かなと思いました。
今こういうわかりやすい近代劇は、一見ちょっと古い、あるいは描かれていることに既視感があるということで若い人たちは避けがちですけれど、私は、丁寧に追求して磨いて行って欲しいなと思います。脚本を読ませていただきましたが、基本的な作劇の展開は、定型としてきちんと成立していると思います。ただ、俳優さんたちがちょっと力んでいたのかな、この空間にあった声量とか演技の表現があったのではないかなと思いました。
オーストラ・マコンドーの公演詳細ページはこちら
第6回せんがわ劇場演劇コンクール全体ページはこちら
写真撮影:青二才晃(せんがわ劇場市民サポーター)
まず、このコンクールのために40分の作品を創って参加してくださった皆さまに心から敬意を表します。
評価をしなければいけないのでさせていただきます。僕の場合は(満点から)マイナスポイントを引きながら点数をつけていきました。
簡潔に言いますと、義理と人情、挨拶が大事な商店街と、経済優先の大きな不動産会社という構図が、ちょっと古くさい、新鮮みがないと思いました。主人公が、お父さんがすでに大きな借金を抱え、それを受け継いでいるにも関わらず、それに対して経営努力を何もしていないというのがどうも納得がいかない、人物に共感できないというのがありまして、それもマイナスです。
また、なぜ自転車屋なのかというのが、ちょっと納得がいかないですね。経営努力がたりないというのにもつながるんですが、自転車というのは、結構しゃれているものもあるし、商店街の中ではまだどうにかなりそうなんじゃないかと思うんです。
それから、モーツァルトと萩原朔太郎の落としどころがどうにもならなかった。最後に自転車のペダルを回しながらしゃべっていた台詞が(あのシーンはこの芝居の山場だと思うのですが)とってつけたようで、なんとも演劇的ではなかった。最後に月に向かって吠える主人公が開き直りにしか見えない。よかった点は次の方がおっしゃってくださると思います。
■徳永京子
今よかった点をといわれたんですが、たぶんこれからとてもきついことをいいます。私、この作品が予選の応募作品だったら、予選の通過を反対しました。(※1)なぜなら、私が一番やってはいけないと思っていることをなさっているからで、それは、登場人物がつらい気持ちの時に、台詞でつらいって書いてしまったことです。
演劇は、つらいという気持ちを、つらいという言葉を使わずに観客の心に届けることであって、ここに参加している方たちだけじゃなく、みんなそのためにしのぎを削っていると思うんです。だから私は、簡単に台詞で説明してしまうという事は、演劇のポテンシャルを低く見積もっていると思います。ふだんオーストラ・マコンドーさんがすごく熱心に活動されているということはわかっているつもりです。だから余計に残念です。
本当は倉本(朋幸)さんは、主人公が四面楚歌になってにっちもさっちもいかなくなって、理屈とか常識とか、そういうものを全部吹っ切って犬と一緒に月に向かって吠えるという、破天荒だけれど演劇的にはとても豊かな時間を、おそらく書きたかったんだと思います。だけどその前にぜんぶ理屈で台詞で語ってしまったから、あのクライマックスシーンが全然活きてこなかったし、豊かなものにならなかった。私は今後そこに気をつけて作品創りをして欲しいです。
いま真那胡さんがいろいろおっしゃったときにみなさん笑ってらっしゃいましたが、申し訳ないけど、笑ってる場合じゃないです。ぜひ重く受け止めてください。
※1 1次審査(予選)は、書類と過去公演の映像が審査対象となる。
■白神ももこ
仙川の街を取材したというのは、地域の公共ホールを使ってやるという面ではすごくいいなと思ったんですが、こういう作品を創るときは、さらにその裏側に見えるものというか、小さなことから、その裏側というか社会的なことがもう少し見えてくるとすごくいいのではと思いました。
また、この手の会話劇をするときは、身体反応、ものを扱うときの体がもう少し繊細に演出されていたらよかったと思いました。日常の体ってもっと繊細に反応しているというか、たとえば自転車屋さんだったら、自転車を倒しちゃったりしたとき(思わず)「あっ」てなるとか、いろいろあると思うんですけど、そういう細かいことをシビアに処理できたらいいのかなと思いました。
■越光照文
お疲れ様でした。みなさんがおっしゃったことは私も感じているところですけれど、愚直なまでに近代劇を志向してわかりやすく現代を語ろうという姿勢は、私は評価したいと思っています。
こういう(小さい)劇場ですから近代劇はリアルなセットは飾れないですよね。だから空間の処理が難しい。家の中、店先、たとえば店の奥にこの家のおカミさんがいるとか、そういう空間の処理が明確にできていればもっとハッキリしたんではないかなということと、みなさんおっしゃいましたけれど、細かい点、商店街に古くから住んでいて商店街を愛している人、そこにいる人々を衣裳を含めて丁寧に描いていくということが、こういうリアリズムの場合は大切かなと思いました。
今こういうわかりやすい近代劇は、一見ちょっと古い、あるいは描かれていることに既視感があるということで若い人たちは避けがちですけれど、私は、丁寧に追求して磨いて行って欲しいなと思います。脚本を読ませていただきましたが、基本的な作劇の展開は、定型としてきちんと成立していると思います。ただ、俳優さんたちがちょっと力んでいたのかな、この空間にあった声量とか演技の表現があったのではないかなと思いました。
オーストラ・マコンドーの公演詳細ページはこちら
第6回せんがわ劇場演劇コンクール全体ページはこちら
写真撮影:青二才晃(せんがわ劇場市民サポーター)
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