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2019年09月27日

受賞者インタビュー(2)  公社流体力学 太田日曜さん(グランプリ・俳優賞)

・公社流体力学a.k.a太田日曜さんは大宮のご出身ですか?
そうですね、大宮のあたりに住んでいますね。
大宮ネタは本当はやる予定がなかったんですけど、京都に大宮という地名があることを知っていたんです。
今日(コンクール二日目)の1団体目(劇団速度)と2団体目(ルサンチカ)が京都の団体だったので、「じゃあ大宮使わなきゃダメでしょう」と思って、「京都府大宮とならぶ日本二大大宮のひとつ、埼玉県さいたま市大宮!」っていう台詞を入れました。

僕なりの劇団速度さんとルサンチカさんへのオマージュでした。


・普段ライブハウスやポエトリーオープンマイクというイベントで活動されているということでしたが、今回せんがわ劇場という場所で上演してみていかがでしたか?
やっぱり僕がよく使うところより数倍広くて。先ほど話に出てきた無力無善寺なんてまるまる客席にすっぽり埋まってしまうくらいの広さなので。
舞台も広いから、もうどうしようと思って、いつもはただ棒立ちでしゃべってるだけだから…。「これいつも通りやってたら絶対怒られるよな…じゃあ、まあ、動くか」というので動いたので。

審査員の方の中には舞踏家の方も舞踊評論家の方もいて、そういう空間の使い方に対して一言ダメを出されるかと思ったんですが、意外とそういうこともなく誉められたので、意外というか「あああぁ、ほう」という感じでした。


・審査員の杉山至さんも「たとえば漫才ではああいう動きにならないのだ、演劇なのだ」ということを仰っていましたね。すべて動きはご自身で考えられたんですか?
そうですね、「こうなったらこうだろう、こうすればなんとか空間を埋められるんじゃないだろうか」というのを判断しつつ自分で考えましたね。下手の袖に飛び込んでみたり、舞台上を走り回ってみたり…。


・コンクール全体についての印象はいかがでしたか?
世界劇団さんとイチニノさんは僕は見られなかったんですが、スタッフは観て、ふたつとも面白いと話題になっていました。
世界劇団さんの劇中の「オッケー光」という台詞がちょっとした流行語になっていたりしました。ことあるごとに「オッケー光!」「オッケー光!」とみんな言っていて。

イチニノさんも、結果発表の前の評判を聞く限り「オーディエンス賞はイチニノさんじゃないか」という話もしていて、スタッフの一人も「イチニノさんが一番面白かった」と話してましたし、評判を聞く限りかなりハイレベルだったんだと思います。

僕が観たのがキュイさん、劇団速度さん、ルサンチカさんです。
キュイさんなんてもう、僕は今回初めて観たんですけど名前自体は前から知っていて、とにかく新時代の天才だ、と。
今年の1月にこまばアゴラ劇場で「これは演劇ではない」フェスティバルを開催されるなどすごく精力的に活動をされていますよね。僕が地下50階ぐらいの階層にいるのに対して、キュイさんは地上の高層ビルの上にいるイメージだったので「すごい芝居を作ってくるんじゃないか」と思って観たら、本当にすごい芝居だったので。

僕はああいうイマジネーションの使い方が到底できないので…。ここではないどこかの話のようで、でもここ(この社会)の話っていう、その世界に対する距離感が絶妙で、ファンタジーのようでもあるけれども、社会批判的でもあり。
舞台美術もすごかったし、幕が開いた時舞台上にLED照明が垂れ下がっていて、アヒルの人形使い方も、潰したときの「ヒューヒュー」という音で人の声を表しているようにも見えたりとか。

演出している得地さんの団体お布団が昨年発表された『破壊された女』がすごいという評判も聞いていましたし、すごいおもしろい劇団の人同士がタッグを組んでやってきているぞ、という印象を受けました。

あと役者が本当に巧かったですね。特に男性の方(中田麦平(シンクロ少女))の存在感がすごいんだなと、観ていて思いましたね。

どうでもいい話なんですけど、僕が昔つくったお芝居が「シンクロ少女っぽい」と言われたことがあって。観たことがないんだけど親近感を感じているというのがありました。なので今回同じコンクールへ出られたというのは妙な縁を感じました。

劇団速度さんは稽古場インタビューで「『ゴド―を待ちながら』をダンスする」っていう風に仰っていたので、そういう認識で観ていたら全然違うというか、再解釈というか『ゴド―』のリビルドになっていましたね。
徳永さんが仰っていたように、いかようにでも解釈できる作品でした。

もちろん『ゴド―』の話にも見えるし、「演劇とはこういうものか」というようにも解釈できるし。ダンスって本当に抽象的だから、ちょっと失敗すると訳がわからなくなると思うんですけど、最小限の台詞であそこまで奥深い世界を作ったのがすごいな、と。

終盤の取っ組み合いのさなか、お互い支えあっていながら、でも取っ組み合っているというあのバランスがすごかったですね。どういう動きをしたらこんな風になるんだろうと感心して観ていました。

ルサンチカさんはもう、本当にねえ、もう審査員講評だと僕と最後を争ったって言ってましたけど…あれすごかったもんなぁ…。
「死についてのインタビュー」っていう情報は得ていたので、それを再構成して理想の死を再現するのかな、と思っていたら全然ちがうっていう。
舞台上の二人の関係性もそうですし、あのハーネスで人が浮く時の幻想もそうだし、終盤の奈落へ潜ってしまうのも、どれをとっても画になるから。

ある意味画になるルサンチカさんと、素舞台でワーキャー騒いでいるだけでまったく画にならない公社流体力学という対極の戦いになったわけですけど。

僕がすごいな!と思ったのが、舌打ちしながら出てくるシーンと、舌打ちしながら去っていくシーンですね。あの存在感が非常に大きくて、正直舌打ちしながら俳優がロープで引っ張られながら舞台上へ出た瞬間に「あ、これが優勝するんじゃないか」と思いました。

なので全体的に見ると、スタイルウォーズというか、それぞれ本当にちがう手法で勝負を挑んで来ているなと思いました。
僕が観られた団体に関して言うと、戯曲の力のキュイさんと、ダンスの劇団速度さん、総合芸術のルサンチカさんという感じで、全然印象が違うなという風に思いました。

あと個人的にはキュイさんとルサンチカさんが似たような問題意識を持って作品を作っていたのもおもしろかったですね。
演劇って今それぞれのアーティストが「社会問題とどう向かい合うか」という方向で展開していると思うんですが、そうなると同世代のアーティストの中では共通する問題意識も生まれてくるんだろうと思って観ていました。

その中でまったく社会性のない僕がグランプリを獲ったので、わけわかんねえなっていう…、…本当に。
ある意味では”美少女至上主義”が一番の社会性だと僕は信じているんですけども。



【公社流体力学 プロフィール】

美少女至上主義を掲げて一貫して美少女を称えている。美少女とは概念であり物質は関係ない。
表現手法である朗読見世物は、面白い朗読・一人芝居・漫談・声大きめの独り言等評される。
その他映像や脚本提供等している。
公式ページ
https://koushayuutai.web.fc2.com/