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2019年09月25日

受賞者インタビュー(2)  世界劇団 本坊由華子さん(オーディエンス賞)

・今回参加されて、他の団体の上演もご覧になったかと思うのですが、せんがわ劇場の演劇コンクール全体についての印象はいかがでしたか?
劇団速度の野村君とは去年も利賀演劇人コンクールで一緒になっていたので元々すこし面識があったりしました。
全体的な印象としては、どうなんだろう、「コンクールって難しいな」とすごいいつも思うんです。
いろんな演劇のコンクールがあると思うんですけど、そのコンクールで選ばれたものが今後の演劇界にかなり影響を及ぼすと思うんです。たとえば「このコンクールだったらこういった作品が選ばれた」という事実があると、「そういった作品が評価される演劇界」という風に関係者が認識する、いわばひとつの指針になると私は思っていて。そういった指針自体がコンクールの特色でもあると思うんです。

たとえば去年参加した利賀演劇人コンクールは、本当にまさにハイ・アートというか、かなり尖った表現を評価していくものだったりします。

そうした文脈を踏まえると、今回のせんがわ劇場演劇コンクールがグランプリに公社流体力学さんを選んだということ自体が私にとってはすごく大事件なんですよね(笑)。
私は公社流体力学さんすごく大好きで、もし私が観客だったら迷わず観客投票も公社流体力学さんに入れたと思うんです。

たとえば一口に「演劇」と言った時にすごく小難しくて、「こういうことを考えています」というか「こういう表現の新しい形態を突き詰めています」というタイプのものもあるじゃないですか。

でも公社流体力学さんはそうではなくて、どっちかというとすごく根源的な、「好きなもの(美少女)をどうやって好きって言うか」というたったひとりのパッションだけで舞台に立っていらっしゃって。そういったものが選ばれることがいかに素晴らしいことなんだろう!っていう(笑)。

演劇の根源というか、専門審査員の杉山至さんは公社流体力学さんの作品をして「シェイクスピアもかくやあらん」って仰っていて、私も同じ考えなんですけど「演劇ってここから生まれたんだろうな」みたいなものを感じて。

演劇として時代の流れを遡っていくというか、パッションとか熱量とか、その場で人間が生で立っていることの美しさみたいなものを根源的に評価してくれたというのが、私にとってはすごくありがたいコンクールでした。

そこに立ち戻って、ちゃんとそれをグランプリとして評価してくれるコンクールがあるというのは、私にとってはとてもうれしいことでした。

私もどちらかというと時代に合わせて細分化していく方ではなくて、「人間のパッションが目の前にあることの美しさ」みたいなことの方が演劇だと思っているので。

それって全然評価されないというか、これは私の被害妄想かもしれないんですけど「それってかっこよくないじゃん」みたいな空気がなんとなくあるような気がしていて。
「そうじゃなくない?」って自分は思っているんですけど、今回グランプリとして生身の人間として美しさが一番立ち上っていた公社流体力学の彼が評価されたので、「このコンクールはすごくいいコンクールだな」って思いました(笑)。


・今回オーディエンス賞を獲得され、実際に上演をされて本坊さんご自身は舞台にも立たれましたが、舞台の上からみて客席の印象はいかがでしたか?
お客さんの雰囲気としては本当にいろんな方々が混ざっているいい空間だと思いました。もちろんハイ・アートを突き詰めているような専門家の方もいらっしゃれば、一般のお客様もいらっしゃったりして。いいバランスなのかな、と思いました。

客席が演劇の専門家だけで埋め尽くされることは全然豊かではないと私は思っているんです。演劇を初めて観に来る人が、何割かは絶対混ざっていた方がいい。
そういう意味で、あの客席は一般社会がちゃんとあったな、という風に思います。それは舞台上から客席の方を見ていても、居心地のいいものでした。


・来年には受賞記念公演も控えます。今後の活動予定や創作のプラン、展望があればぜひ教えてください。
元々2020年の2月から3月まで、愛媛と広島のアステールプラザ、そして北九州枝光のアイアンシアターというところで三都市ツアーを予定していました。
その三都市+せんがわ劇場ということで、4都市ツアーとして近々情報を公開しようかなと思っています。今後はそのツアー作品に向けて創作を進めていくことになると思います。


・今後コンクールのファイナリストとしてせんがわ劇場に関わる中で、特にチャレンジしてみたいことはありますか?
せんがわ劇場さんもアウトリーチ事業の中で不登校の子に向けて演劇のワークショップを行ったり障害をもつ方たちと一緒に演劇をつくったりされていると説明会の際に伺ったんですが、実は私たち自身も愛媛で患者さんや不登校の子供に向けて演劇を使ったコミュニケーションワークショップを行ったりしているんです。

また自分たちが日ごろ関わっている精神障害者の方たちと演劇を作品をつくりたいという希望もかねてからありました。

もちろん愛媛からなのでせんがわ劇場さんの事業に頻繁には参加できないのですが、せんがわ劇場さんがどういった活動をされているのかを勉強させて頂いて、せんがわ劇場だけでなく愛媛のアウトリーチ事業にも繋がるようなことをさせて頂きたいなと思っています。

伺っている中だけでもかなり興味のあるアウトリーチ事業がせんがわ劇場さんには沢山ありまして、自分たちの劇団関係者にも東京在住の人間がいるので、彼らが今後せんがわ劇場さんと交流していく中でアウトリーチのノウハウやコンセプトについていろいろ学ばせていただきたいなと思っています。


・ありがとうございます。最後に、来年の受賞記念公演についての意気込みをお聞かせください。
そうですね、今回の作品を通じて「世界劇団ってこういう表現だ」「世界劇団の演劇ってこういうものだ」ということを、私は完璧に言語化できるようになったんです。

そうしてより明確になった自分たちの強みやこれまでに形作ってきた表現形態と、演劇で伝えられるテーマやメッセージというものをどちらも両立できるような作品を、必ず持っていきますので、ぜひ観に来て頂きたいなと思っています!




【世界劇団 プロフィール】
医師と医学生の劇団。
代表の本坊由華子は2015年に四国劇王と中国劇王を獲得。2017年に松山・広島・北九州の三都市でツアーを実施し、2018年には利賀演劇人コンクールにて観客賞2位を受賞、松山・東京・三重で三都市ツアーを敢行した。作品創作のみならず、精神科領域で演劇の可能性を模索中。