第9回せんがわ劇場演劇コンクール 専門審査員講評(5) 「パンチェッタ」
※掲載の文章は、第9回せんがわ劇場演劇コンクール表彰式の際、専門審査員から各劇団にむけて語られた講評を採録・再構成したものです。
■野上絹代
達者な俳優と作、演出、高い作曲能力をくだらない主題に使う、とても好感を持ちました。観劇中に何も気にならずただ観ることが出来たように思います。強いて言えば既視感を覚える演出が時に達者過ぎて鼻につくという感じです。見終わった時にやや尻すぼまりの印象がありました。
■常田景子
全体的に良かったし面白かったです。最初のパセリの恩返しのところはとても面白くて、後半がそれに匹敵しないところがちょっと残念でした。今後もますます挑戦して下さい。
■土田英生
最後まで全く飽きない。後半も1つのシーンとして完成されているし、ものすごく面白いと思います。ただ構成のバランスは悪いと思います。真ん中にある面接とかトンカツ屋のシーンは現実に近いトーンなのに、オープニングとラストが劇的過ぎる昔話。逆でサンドイッチした方がいい。現実世界で劇的世界を挟んだ方が腑に落ちると思います。また、転換の照明を工夫した方がいい。暗転せずに最後まで展開していってもいいと思います。むかつくくらい手練れでセンスはあるし、構成をもう少し整えたら完璧なエンターテイメントになるような気がします。
■佐川大輔
手練れ感が鼻に着くとおっしゃっていましたが、僕はそこまでは思いませんでした。お客様も笑っていたし、面白かったし良かったと思います。でもそこまで達者なら、さらにもう一工夫ができたのではないかと、物足りなさを感じました。各シーンの基本的な考え方が「パロディ」なのだと思いますが、一番見せたいテーマはその手法でないと観せられないのかということです。面白かったですが、演出家のスケールをもう一歩先にのばして、もっと頭をひねってみてもよかったのではないかと思います。ほめて下さった方たちがほとんど同じことだったので、あえて辛口に言いましたが。構成がいま一つという事と、最後のシーンに向けてどうのように作っていくのか、一つ一つのシーンにどのような意味があるのかに配慮していけたら、もっと面白かったのではないかと思います。
■熊井玲
ミュージカル的なものもコント的なこともあって3人のレベルがすごく揃っていて上手でした。作品もそれぞれ面白かったのですが、個人的な好みなのかもしれませんが、全部に落ちがちゃんとあるのが残念で、あれだけバリエーションがあるのなら、もっと不条理なものとか、例えばオムライスの話では、言われなくてもだいたい読めるので、あえて結末を言わずに終わらせてしまっても良かったのかなと思いました。そのような冒険があっても良いとも思います。でも本当に面白かったです。
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