第9回せんがわ劇場演劇コンクール 専門審査員講評(4) 「すこやかクラブ」
※掲載の文章は、第9回せんがわ劇場演劇コンクール表彰式の際、専門審査員から各劇団にむけて語られた講評を採録・再構成したものです。
■野上絹代
音楽や身体を駆使していて集中して観せることが出来たと思います。ただ、イメージの連鎖で創り上げていると思うのですが、それが何をしめしていて、どういうことなのかを頭で理解させようとするのではなく、腑に落ちるとさらに楽しく観られると思います。というのは、思わせぶりな、しかし理解できないことが続いてしまうと、「一体今は何を観せられているのだろう」と、こちらの意識が遠くに行ってしまうところがありました。残念だったところは、音楽のイメージを越えてくる身体がなかったところです。台詞と身体のズレから見せるディスコミュニケーションみたいのはわかりやす過ぎる気がしました。身体を使うことの面白さは、わかることを放棄してしまうほどの熱量とか、すごみとか、意味を超えたところにもあると思うのですがなんとなく歌詞や音楽のイメージに乗っかってしまっていたように思います。
■常田景子
顔の表情筋も筋肉なのだなと感動しました。身体を動かすことを演劇的に見せていくにはもうひと工夫必要なのではないかと思いました。音楽の切れ目でシーンを区切っていたように思うのですが、各シーンの繋がりが曖昧な気がして、それが少し残念な気がしました。フィジカルなものを演劇でやってくのはいいと思うので、その点はとても楽しかったです。
■土田英生
最初のダンスの時はどうなっちゃうのかなと思って観ていたのですが、どんどん引き込まれました。妊婦と男の会話のシーンが秀逸。描いていることは普通の会話なのですが、そこにスポーツの動きを絡めたりするのが素晴らしかった。抽象的で不条理なんですが、実際の感覚に嘘をついていないというか、手触りを持って作られていたのでものすごく腑に落ちるのですね。ただ、他のシーンには少し物足りなさを感じました。もう一工夫しなくては長く感じてしまうし、変化が欲しいと感じる場所が何カ所かありました。もっと想像力を飛ばして欲しい。その意味で最後のダンスは良かったです。
■佐川大輔
とても笑わせてもらいました。俳優さんの笑顔がとても素敵でした。エンタメ性があり、ダンス、お芝居、ギャグも交えながら、照明も効果的に遊び劇的に観せている、でも伝えたいことのテーマ設定がすごくシリアスで、それをギャグの世界でやろうとしているのは、高さというか、難しいことをやろうとしているのだなと思いますが、それはある程度成功しているでしょう。ピンポン、野球、ゴルフとか、一般的に誰が観ても分かる記号性をうまく使っていて、その記号性の裏で全然違う相反することを行う事によって、この人達は馬鹿なんじゃないかなと思わせるというのは、なかなか面白いと思います。「遠くへ行きたい」というタイトルですが、希望をもってもがきながら生きている人間を戯画的に描いている。演技のスタイルに関してはわかりやす過ぎる部分もありましたが、この作品に関しては、希望とかストレートなテーマだったので、比較的相性が良かったと思います。あと、シーンの繋がりの部分の積みたて方が惜しいなと思いました。そこの構築力を工夫すれば、最後シーンの希望と絶望のループへの繋がりがより良かったと思います。また最後の希望と絶望のループでは、身体の感じが、それまでの笑えるようなポップな感じではなく、もっと違う追い込まれ方になっていたら、作品のレベルが一つ違ってくるのではいかと思いました。
■熊井玲
身体と言葉のバランスが面白かったと思いました。一番おもしろかったのが妊婦さんのシーンでした。身体と言葉がぶつかり合って違う世界に連れて行ってくれたと思います。ただせっかく俳優さんが4人いて、それぞれストーリーをもっているので、それぞれに違うアプローチでぶつかり合うともっと良かったし、観たかったです。妊婦さんのシーンは音の使い方や、場所の使い方も良かったと思います。今後がとても楽しみです。
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写真撮影:青二才晃(せんがわ劇場市民サポーター)
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