第9回せんがわ劇場演劇コンクール 専門審査員講評(3) 「ゆうめい」
※掲載の文章は、第9回せんがわ劇場演劇コンクール表彰式の際、専門審査員から各劇団にむけて語られた講評を採録・再構成したものです。
■野上絹代
劇世界に行くまでの空気作りがとても上手で観客の心をとてもよく掴んでいたと思います。ただ劇世界に入ってからの作り込みが甘く、出来ればそこで別次元に連れて行って欲しかったです。空襲警報が鳴るシーンが一つの扉だと思ったのですが、そこからグッと入っていくことはなかったです。俳優陣が一生懸命でとても好感を持ちました。ただ、しゃべり言葉で勢いのまま行き続けてしまうと、劇作としては荒い印象を受けるので、もう少し丁寧に言葉を構築する部分があっても良いのかなと思いました。
■常田景子
演技なのか素なのかよくわからない演技が好きでした。一番よかったのは、最後の方のシーンで、絵を描いたり、ものを作ったりする時の人の衝動とか、作っている時の楽しさが伝わってきて、とても元気がでました。まだまだ粗削りで、これからどこを目指していくのか興味があります。今のままだと少し荒っぽい感じがするので、今後を期待しています。
■土田英生
本当のお父さんと息子が出演し、実在したおじいさんを探る手法がすごく興味深かった。けれど、それが徹底できていない気がしました。友達も出てきて同じように語ってしまうのでは、実際のお父さんが出ている意義を欠けさせてしまい、ただ面白くするためにだけお父さんを出演させたことになってしまう可能性があります。あと、ドラマとしてもやや軸がぶれている気がします。おじいさんがどうして“狂女”を描いたのかを探るところから始まるんですが、それが皆で走ったりしているうちに変わって行ってしまう。どういう演劇を作るのかを掴み、そのことに特化した方がもっと面白くなるんじゃないでしょうか?
■佐川大輔
前説のお父さんのアナウンスから、お父さんの舞台登場は面白かったです。最初の掴みがとても上手だなと思いました。その後に1人ずつ出てきてお客様に自分の作品の解説を長々と始めたのも素敵で、4人の俳優さんに好感を持てました。6作品の中で一番お客様と一緒の「ライブ」をつくることに、秀でていたと思います。実のお父さんが出演するリアルな存在感が、圧倒的な説得力でこの親子三代の話の作品を支えていると思います。ラストの照明の点滅でだけで死んだおじいちゃんを想像させる演出が良かったです。また雑に思われる原因は、前半が面白すぎたのではないかと思います。というのも、お客様と一緒に芝居を作りすぎたために、後半の練習をしてきた部分になると、今まで観客に語りかけていたのが急に「舞台上だけの会話劇」になってしまった気がします。後半の求心力が弱くなってしまったのが残念です。構成として、そこが雑と思われてしまう原因だと思います。一人ずつ走るのを辞めていくシーンでは、観客にも想像がついてしまうので、そこをどのように見せていくのかが演出として、大事なポイントだと思います。そこに工夫が少しあると後半が面白くなったのではないかと思います。
■熊井玲
私小説的なところが入っていて、そこで完結するのではなく最終的にクリエーションの話になっていて、その飛躍度はこれまでの作品よりすごくあったのではないかと思います。あと演劇でしかできない時間の流れや、空間をどう使うか、をすごく考えていて、最大限演劇的に見せるにはどうするのか、かなり作り込んできたところはすごくいいと思いました。面白かったです。
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写真撮影:青二才晃(せんがわ劇場市民サポーター)
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