受賞者インタビュー(3) 情熱のフラミンゴ・MIKI the FLOPPYさん(演技賞)

せんがわ劇場

2016年09月11日 12:00

―演技賞受賞おめでとうございます。

MIKI ありがとうございます。

―自己紹介と役柄をお願いいたします。

MIKI 情熱のフラミンゴ「きれいなひかり」で、ジョア役をやりました、MIKI the FLOPPYこと服部未来です。振り付けを担当しています。話は近未来の設定で、イベント専門学校に通う落ちこぼれの生徒たちが卒業制作をつくらなきゃいけないんですけど、そこのダメなN班の、空回りしているリーダーの役です。




―振り付け担当ということは、本来は役者さんではないんですか?

MIKI はい。演劇は情熱のフラミンゴ以外はほぼ出たことがないです。なので、演技賞をもらいましたが演技は多分へたくそだと思います。演技をしているっていう自覚はほぼないんです。

―劇団の中での役割としては振り付けの他にもありますか?

MIKI 何だろう、みんなが遊ぶことから抜け出せなくて絶望しているのを、優しく見守っていました(笑) 。あとは、一番客観的に観ている人。でもいろいろ口出しできる無責任な立場の人かな?

島村  (突如登場して)裏のドンだよ!




MIKI ポップな部分というか、文化っぽいところを担っている気がします。私が入るとちょっと衣装もおしゃれになるのかな(笑)。もともとは情熱のフラミンゴのファンだったので、一歩引いて見ていて、情熱のフラミンゴの良さは、島村くんより多分私のほうがわかっていると思います。

―作品の中にウッドストックが出てきますが。その時代のポップカルチャーやヒッピー文化にも関心があるんですか?

MIKI 70年代カルチャーとか好きです。ファッションも音楽も、古いものが好きです。

島村  (横から)初稿では劇中劇の場面は夏目漱石の英詩をモチーフにしてたんです。でも、それを読んだ服部さんが「ユー、ここウッドストックに変えちゃいなよ」って。「え?」ってなりましたけど、確かにそうした方がユーモアが広がるし、自由度も高まり作りやすくなる。最初は戸惑いましたが、結果正解でしたね。ただ、あの時、なぜ、服部さんはウッドストックを思いついたのか謎ですね。

MIKI 作品の世界観が夏目漱石よりはゆるくなる感じがして(提案しました)。作中にフジロックの話も出てくるのですが、音楽フェスティバルに統一した方がイメージを持ちやすいし未来の設定が生きると思いました。情熱のフラミンゴは、ゆるさと、その中にある批評性のバランスが重要で、多分島村くん一人だとけっこう難しい雰囲気になるところを、ちょっと見やすくしちゃおうという感じで。

―ゆるさって、今の一つのキーワードなんでしょうか。

MIKI そうかもしれないですね。私と島村くんはゆとり世代始まりの年の人なので、そこら辺もあるかも。

―さて今回、ご自分では演技賞を獲ると思っていましたか?

MIKI 思わなかったですね。自分はダンサーだと思っているので。舞台に立ったときの身体の在り方とか、そういうことはわりと意識してます。

―受賞の時のコメントで、女優引退宣言をされていましたね。

MIKI やはり、役者をやりたいという気持ちはあまりないです。演技する楽しさは、私の知っている楽しさとは違っているんですね。他の役者さんは、役になりきるとかがあると思いますが、私は面白く見せたいとしか考えませんし、舞台上で表現する身体ではありたいけれど、感情的にこういうセリフは言えないということもありません。本番での自由さと爆発力、とかしか求めていないんです。
声の出し方についても、自分の中ではダンスと似ています。感情で出しているんじゃなく、面白がって出している。これは身体の動き方と同じで、おそらく俳優の思考と違うところでやっているんだなと思います。

今回も、役者として出ている感覚はあまりなくて、ジョアだったらこうやるだろうとか、役になって考えたことはないんです。結局自分は自分でしかないと諦めてます。演技できてないですよね(笑)、こんな賞を頂いたのになんかすみません。

―今後の情熱のフラミンゴについてはどうお考えですか?

MIKI 私は、情熱のフラミンゴにビッグになってもらいたいし売れて欲しい。ただ、島村くんの演劇は島村くんのものだからがんばれよっていう感じで、無責任に茶々を入れつつ、でも道を踏み外しそうになったらそれとなく誘導するのが仕事かなと思っています。私はダンス作品を創りたくて、演劇はサポートに回って、劇団とは少し違った形の情熱のフラミンゴっていうチームが認知されて、情熱のフラミンゴが作るものは、演劇も映画でもダンスでもなんでも面白いってなればいいですね。



―では、ダンスのときはサポートしてもらうんですね。

MIKI いえ。

島村 (さらに横から)服部企画の時は、一切口出しさせてくれないんですよ。普通にテンプレートの宣伝メールとか来ますからね。チケットだって関係者扱いにしてくれないし(笑)。服部さんは自分主導の作品になるとすごいストイックな人になるので、その時期は結構怖いんですよ。気安く話しかけたら睨まれる。

MIKI 情熱のフラミンゴの良いところって、島村くんを筆頭に俳優もスタッフも本当にみんな遊んでばかりいるんです。自分の作品の稽古期間中なら、私だったら絶対遊ばないし、引きこもっちゃったりして考えすぎちゃうタイプなんです。

だから島村くんを見ていてすごくうらやましい。稽古もそこそこにすぐ飲みに行っちゃって、朝まで飲んで、その割に脚本をちゃんと書いている。そのスタンスでできているのがすごい。だって、稽古の休憩中にみんなで蕎麦を食べに行ったとき、気づくとみんな箸を持つ手が小刻みに震えてるんですよ。さすがにホラーでしたね(笑)。きっと遊びの延長に演劇があるんでしょうね。だから作品も等身大で面白い。

私の場合は、創ろうとするときは遊びを除外するんです。除外して、何も見たくない、どこにも行きたくない、誰にも会いたくなくなって引きこもる。真逆なんです。

―その真逆の間にもうお一方がいて、いい感じで集合体になっているんですね。

MIKI それぞれが違う方向を見てますが、アトリエを共同で借りているって制約があるので、なんとか成り立っています(笑)。

―受賞公演は、どういう形になるか楽しみです。

MIKI 作品には絶対に関わるけれど、役者としては、出なければ出なくてもいいかな?今回出演してくれた、私よりも若い俳優たちがもっと成長して輝いてくれたら嬉しいです。

―MIKIさんをぜひまた観たいという思いもありますが、どうなるでしょうか。受賞公演を楽しみにしています。ありがとうございました。

MIKI ありがとうございました。



■情熱のフラミンゴ https://www.facebook.com/flamingoofpassion/

写真撮影:Koji Ota


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