せんがわシアター121vol.7「黄昏の光芒~ドン・キホーテへのオマージュ~」出演者インタビュー(7) 伊東達広さん
せんがわシアター121vol.7「黄昏の光芒~ドン・キホーテへのオマージュ~」、17日に開幕し、おかげさまでお客さまから大好評をいただいております!出演者の皆さんにインタビューしながらご紹介するシリーズもいよいよ最終回。木波多勝太郎(きはだかつたろう)役の伊東達広さんにお話を伺いました!
―木波多勝太郎はどういった役どころですか?
本人はあまり自覚していないらしいんですが、ちょっとボケぎみというか、周りから見ると完全にボケてるっていう、そういう人なんですけど、現役の時から(勝太郎は元高校の国語教師です)、若い人に「夢をもって日本を世の中を良くしていこう」とずっと言い続けていて。で、何年か前にカミサンを亡くして、それからしばらくして娘も出て行ってしまうんですけどね。そういった身近な人間がいなくなったということが、勝太郎のボケを早めたのだと思うんですが。
― 伊東さんと勝太郎さんとの共通点、または違うところはどんなところですか?
なんか、結局似ている気がします(笑)。これは良いと自分が思ったら突き進むというか、周りがどう思おうと関係ないというか、そういうところがですね。
― ご自分と似てらっしゃる?
何回か付き合っていて、そうだな、と思いませんか(笑)。
― 伊東さんには、せんがわシアター121vol.2「紙屋悦子の青春」(松田正隆・作)と、評判を呼んでの再演vol.4「紙屋悦子の青春」、そして昨年6月のvol.5「マヨイガの妖怪たち」(堀江安夫・作)にご出演いただきました。
そう、この「黄昏の光芒」で4作目です。お世話になっております。
― こちらこそ、いつも大変お世話になりましてありがとうございます。「紙屋悦子の青春」のラストシーンでの伊東さんの演技、すばらしかったですよね。
いや、あれは台本がすばらしかったんです。いい作品に出していただいて本当にありがたいです。
― 「マヨイガの妖怪たち」では、サンジンという妖怪(山神)の役で出演していただきました。
面白かったですね。堀江さんにせんがわ劇場版として書いていただいたんでしたよね。私の所属している劇団俳優座でも堀江さんの作品を上演しているんですが、私は一度もご縁がなかったものですから、せんがわ劇場で堀江さんの作品に出させていただいて本当に良かったなあと思ってます。そしてね、今回の彼女、柴田千絵里さんもいい脚本家ですよね。素敵だなと思います。
― 柴田千絵里さんは、ドン・キホーテをモチーフに、せんがわ劇場所縁の次世代芸術家からプロット募集をした中から選ばれた脚本家です。演出の菊池准さんと推敲を重ねて、見事に「黄昏の光芒」を結実させました。
本当にいいホンに出逢わせていただいて感謝してます。
― 伊東さんがお芝居を始められたきっかけは何ですか?
子供の頃から映画などを観ていて、こうやって人の気持ちを揺らしてくれる仕事っていいな、と思っていました。で、どういうところに行けばいいのかと思って。いい俳優さんがたくさんいたのが俳優座だったんですね。あの当時は全盛期でしたらからね。で、養成所だろうと受けようと思ったら俳優座養成所がなくなっていたんですよ、それで、つまり桐朋を受験したわけですね。どういうわけか入れていただきましてね(笑)。
― この仙川にあります桐朋学園芸術短期大学演劇専攻は、戦後の演劇界に多くの逸材を輩出したことで知られる俳優座養成所を前身とし、千田是也、安部公房、田中千禾夫という日本演劇界の巨星たちにより、専門俳優を大学で養成する目的をもつ日本で初めての教育機関として、1966年に創設されました。伊東さんはその桐朋学園演劇専攻の3期生ですね。
当時の先生方がすごいメンバーでしてね。安部公房さん、(田中)千禾夫さん、千田(是也)先生と、それぞれ全然違う視点を持った人たちでしたからね。色々な物事の見方を学べました。本当に刺激的な四年間で幸せでしたね。
安部さんと千禾夫さんと千田さん、芝居の視点がホント全然違うんですよ。少しは共通点があっていいんだけども全然ないんですよね。
― 伊東さんは「安部公房スタジオ」発足メンバーでもあります。発足時のメンバーは、新克利さん、井川比佐志さん、伊東辰夫(現・伊東達広)さん、伊藤裕平さん、大西加代子さん、粂文子さん、佐藤正文さん、田中邦衛さん、仲代達矢さん、丸山善司さん、宮沢譲治さん、山口果林さん、の12名ですね。
安部さんは医者ですからね、気持ちとかじゃなくて、どう見えるか、なんですよ。最初に感情が動かなくても、科学的に外からどう見えるのか、っていうところから入る。安部さんじゃないと出来ない表現方法でしたね。
― 千禾夫先生は「物言う術(ものいうすべ)」ですよね。
あなたも教わりましたか(笑)。
― はい。私も、先生にマドモアゼルって呼んでいただきました(笑)。それで、授業でパイプくゆらせながら「散文は歩く…詩は踊るんだねぇ…」って仰ったんですよ。私達、「はぁ…」って。なんか解ったような解らないような、ね。でもすごいなぁって。
そうですか(笑)。千禾夫先生はね、こうしろって言ったら絶対曲げないんですよね。それと、台詞の言い方のほんのちょっとしたところのダメを出すんですよ。でもそこを直せということは、役全体を作り直せということになるわけです。ことばに対するこだわりが凄かったですね。
― 千田先生は?
ある時、道でばったり千田先生にお会いしたんですよ。そしたら「あっっ!」って(と、伊東さん腕を大きく振り上げて大袈裟にビックリポーズ、まるで歌舞伎の大見得の様に)。普通の人はこんなに大袈裟にしないですからね。この人は、こうやってビックリするんだな、と。そのことに、私もビックリしましたね(笑)。
― スタニスラフスキーですね。
そうかもしれないですね。若い時にこういう先生に出逢えて本当によかったです。
― それでは最後になりますが、「黄昏の光芒」の見どころ、など教えて下さい。
このお芝居を観て、本当に大事なことはなんだろう、と考え始めるきっかけになっていただければ嬉しいと思います。
― ありがとうございました。
<伊東達広プロフィール>
桐朋学園演劇専攻3期生。卒業後、劇団俳優座入団。安部公房スタジオを経て俳優座劇団員として現在にいたる。舞台、映画、CM出演多数。2011年映画「蒼い手」においてモナコ国際映画祭助演男優賞受賞。
せんがわ劇場では、せんがわシアター121vol.2 vol.4「紙屋悦子の青春」、せんがわシアター121vol.5「マヨイガの妖怪たち」に出演。
公演はいよいよ2月21日(日)まで、せんがわ劇場にて絶賛上演中です。まだまだお席に余裕がございます。皆さまお誘いあわせの上、ご来場ください。お待ちしております。
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