6月8日に行われたサンデー・マティネ・コンサートVol.126の様子をライターであり、市民サポーターでもある才目さんによるレポートでお届けします。
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未来の名演奏家に出会える楽しみ、それもサンデー・マティネ・コンサート(サンマチ)の魅力です。
2014年6月8日は、「未来のホープコンサート」と銘打つシリーズ企画の第16弾。
桐朋学園芸術短期大学専攻科2年に在学中で、
各地のギターコンクールで受賞を重ねる若きギタリスト、渡邊 茜(あかね)さんの登場です。
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例年よりも早く梅雨入りした関東地方。サンマチの出足も鈍いかと思いきや、場内はほぼ満席の盛況。
「未来のホープ」を応援するサンマチ・オーディエンスの「心」は、やはり熱いようです。
渡邊茜さんは、劇場ホームページ掲載のお写真と違って、ショートカットの髪型でスラリとしたボーイッシュな印象。
笑顔はじける元気なお嬢さんです。
演奏は、メキシコのマヌエル・ポンセ作曲「プレリュード ホ長調」から始まります。
中南米のリズム感と色彩豊かな美しい音色。ギター・コンサートのスタートにふさわしい曲です。
続くリョベート作曲「アメリア(姫)の遺言」は、スペイン・カタロニア地方に伝わる民謡に想を得た曲。じっくり語りかけるような演奏です。
同じくスペインの作曲家トローバの「ソナチネ 第1楽章、第3楽章」では、楽しくリズミカルな演奏と、さまざまな表情の曲を情感豊かに弾きこなします。
「オクターブ・ハーモニクス奏法」という美しい響きの奏法を随所に取り入れ、演奏に爽やかなアクセントを加えます。
バッハが、自ら作曲したパルティータ第3番をリュート演奏用に編曲した「リュート組曲 第4番」。その最後の曲「ジーグ」は速いテンポの舞曲で、演奏が難しいと言われます。
ラストに弾いたテデスコ作曲「悪魔の奇想曲(カプリチオ・ディアポリコ)」も、超絶技巧奏者・パガニーニへのオマージュとして作曲された「難曲」として知られます。
こうした速いスケールの曲や難度の高い曲を、優雅に流れるように弾きこなす渡邊さん。
テクニックの高さはもちろん、表現力の高さも特筆すべき資質です。
後半、武満徹が編曲した映画音楽「シークレット・ラヴ」や「オーバー・ザ・レインボー」の演奏で渡邉さんの表現力が遺憾なく発揮されます。
懐かしいしっとりとした調べが劇場を包み込み、お客様はうっとり。
アンコール曲も映画音楽で決め、耳の肥えたオーディエンスも納得の「サンマチ・デビュー」を飾りました。
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日曜午前のミニコンサート「サンマチ」へ、毎回多くのお客様がおいでくださっています。
お客様に接していると、「憩い」を求める方、演奏を聴くのが楽しみという方はもちろん、「若い演奏家を応援したい」とのお気持ちの方も多いように見受けられます。
将来有望なプレーヤーの演奏を間近に聴き、飛躍を後押しする。演奏家はお客様の期待を胸に、さらに腕を磨き、世界へ羽ばたく。お客様は、応援した演奏家が世界に雄飛したことを知り、それを「誇り」とする---。
そんな“好循環”が生まれるのも、せんがわ劇場・サンマチならではの魅力といえるでしょう。
優れた若手演奏家を発掘・紹介し、市民の皆さんとともに応援する「サンマチ・未来のホープコンサート」。
これからも「未来の大器」との出会いに期待が高まります。
(取材・文/ライター 才目)