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2018年12月01日

受賞者インタビュー(4)  パンチェッタ 一宮周平さん(グランプリ賞・オーディエンス賞・俳優賞)


左が一宮周平さん


トリプル受賞、演劇コンクールを終えていかがですか?
一宮 どうって言われても何も変わらないです(笑)全団体の演技を観た上であれば納得し、考えることもできますが、今回はコトリ会議さんとすこやかクラブさんの演技を観る事が出来ず、果たして受賞の可能性があるのかわからない状況での受賞だったので、びっくりしました。
もちろん受賞を狙っていましたが、作品作りに関しては何を意識したわけでもなく、単純に面白いものを作りたいという気持ちでした。専門家や評論家受けの良いものなどもわかりませんし、深くハマる人にはハマるけど万人に受け入れられる作品のつもりではありませんでした。僕は大衆が喜ぶキャッチーやポップなものが個人的にあまり好きではないので、今ここでしか観られないものを作ろうという思いで作っていました。会場が笑ってくれていたのは、舞台上からすごく感じていましたね。

パンチェッタさんは普段ミュージカルをやっていなかったと聞いたのですが今回はどうして取り入れようと・・・?
一宮 『Parsley』は以前、30分公演でやった作品で、その時はミュージカルの部分はありませんでした。一昨年の秋に10分間で4曲の生演奏ミュージカルをやったのですが、その時にミュージカルの面白みを感じました。それからかもしれないです。
 でも、もともとミュージカルは好きではなかったです。わからないんです。劇団四季とかミュージカルを好きな人はすごく好きじゃないですか。すごくキラキラして目を輝かせて観ている人がいますけど、僕は「どうした?」って思ってしまうんです。その反応が正常だと思っていましたが、大勢の中で観た時に、そこにはキラキラした目で観ている人達がいて、ちょっと引いてしまいましたね。
 僕は突然歌い出すシーンを見ると笑っちゃうんですけど、それを笑うと世間は「え?バカにしているの?」みたいな感じになるのがわからなくて。でも突然歌いだすっておもしろいと思うんです。なので、あえて「笑っちゃうよね?」というミュージカルを提示してみたんです。「笑っていいですよ」っていうミュージカルです。

ミュージカルを作るにあたって参考にしたものってありましたか?
一宮 全部オリジナルですね。作曲を以前もお願いしたことのある加藤亜祐美さんにお願いをしました。この方は歌詞から曲を作ってくれる方なので、先に話を完成させます。曲にしたい部分は言葉の数があうように意識して書いています。彼女はそこからインスピレーションで作曲してくれています。彼女の中にも参考にしているものがあると思うので、曲にもやはりその色がついています。
 もともと、パセリの恩返しという作品は、ナレーションに合わせて演者が動くという形の作品だったのですが、ナレーションの言葉で説明的に提示していた部分を歌にして、説明をなくしていく作業をしました。特に何かが好きで参考にした、というのはないですね。話の中のどの部分を歌にするかという点は悩みました。

そこを決めるときはなにを基準に決めていましたか?
一宮 想いが溢れる所は曲になるほうがいいなあとは思いました。Parsleyの2曲目はただ、「お嫁さんにしてください」「誰」、というやり取りしかしていませんが、あえてそこは無駄に使うのもありかなとも思いました。僕は昔話がすごく好きで、今回はツルの恩返しをベースにしてみたんです。子供の頃なんとなく聞いて、なんとなく記憶して、なんの違和感もなく受け入れるという行為への風刺のようなものもありますね。冒頭の歌で、昔話は何故お爺さんから始まるのだろう、というのもある意味そうかもしれません。
ツルの恩返しだと突然娘さんが来て、お嫁さんにして下さいという意味のわからないやりとりが当たり前に行われているんです。何故そうなったのか説明して欲しい部分をあっさり飛ばしているんです。それがもし、ちゃんと対人間のやりとりがなされていたのならどうだったのだろうかと。今あることに難癖をつけたい訳ではありませんが、見る角度を変えるだけで、面白みは何からでも感じ取れると思うんです。視点を変えた方が絶対良いよという事ではなく、変えたら変えたでこういうものの見え方もあるんじゃないですか、というとこですね。
作品を通して伝えたい事はあまりないです。今回もパセリを食べようね、ということを伝えたいのではなく、もしパセリに寄り添ってみたらパセリはこういう事を思っているのかもしれないよという。この劇を観た人が次にパセリを食べるとき「あ、パセリか~」って頭に何かよぎったらいいなぁと思います。なので大衆に受け入れられやすい作品という意識はないですね。まぁ今回の作品は、今までの中ではわかりやすい作品ではあったと思います。

いつもはわかりにくい作品なんですか?
一宮 わかりづらい部分もあります。でも今回は会場のみなさんが感情を開放していてくれたように感じます。初演でParsleyをやった時は、作品として話がループし続けるので、「結局最後どうなったの?」と結構聞かれました。今回は、よく観て感じ取ってくれるお客様がすごく多かったと思いました。

パセリにした理由は?
一宮 作品をつくるときは必ずテーマとタイトルから入ります。
Parsleyの初演は、持ち時間が30分で、複数の団体が呼ばれて一緒に公演をするという企画に参加しました。そこの団体の名前が「パセリス」という団体で、じゃあそこをいじってやるかという思いから、タイトルを「Parsley」にしました。でも何か思う所はあったんだと思います。僕はもともとパセリを食べる人間なので、食べるために出されているのに食べない人いるよな、かわいそうだなぁと思っていて。それが僕の中で就職活動につながりました。50社受けましたとか、就職活動って数がステータスみたいにしている人もいるじゃないですか。選んでもらえるように表面を繕って、一生懸命やって、次へ、みたいな姿に見えたんです。

そもそもなんですけど、なぜ演劇を続けるんでしょうか?
一宮 演劇は好きではないんですよ。だからぜんぜん観に行かないです。インタビューの時にアウトリーチ活動が楽しみだ、という話をしたんですが、僕先生になりたかったんです。小・中・高等学校の体育の免許を持っているんですよ。でも、先生になりたかった理由も漠然としていました。小さい頃、友達に勉強を教えてその子が出来るようになると嬉しくて。親に対してもいい顔して、ある程度選択の余地もあってレールに乗っていました。それでいざ就職活動になった時に、これから40年か、人生一回だけなんだよな、これで終わるな、と考え始めてしまって。子供が主役もいいけど、もう少し自分を輝かせないと駄目だなと。目立つのも好きだったので、周りに勢いで「おれちょっと俳優なるわ」と言って、養成所を受けたら合格して。きっかけはそこですね。

そこからここの演劇につながるんですね
一宮 挫折や妥協、リタイアするのが嫌で、やると決めたからには食えるまでやろう、という目標がありました。納得してそれ以上にやりたい事が出来た時はやめようと思います。
役者に関して言えば、養成所の後に小劇場で役をもらい出演させていただきましたが、そこでお客さんを呼ばないといけないのがなんとなく受け入れづらくて。自分は面白いと感じない作品に出ることもやっぱりあって、そんな時に自分を観て欲しいとか、作品が面白いよ、とも言えなくて。それなら自分が納得できるものを書こうと思って、それがパンチェッタの始まりです。とりあえず自分が書けば、最低でも自分は納得して人は呼べる。その後作り手の喜びは生まれましたね。演出の時だと上演中は客席に座ってそこからお客さんの反応を観られるんです。笑って良いのか駄目なのかを悩んでいる人達の反応を見るのが特に好きです。
昔から演劇をやっていたわけではありませんが、原点は子供の頃からあったのかもしれないです。鬼ごっこの最中とか、その遊びに飽きてきたらジャングルジムの上だけはセーフとか条件をつけていくんです。条件が増える度にまたみんなが盛り上がっていく。それを提案した自分に喜びがあって、「俺、俺、考えたの俺」みたいな気持ちがすごくて。そう考えると新たな案を提示するという部分が、演出とか脚本につながっているような気がするので、こういうのが昔から好きだったのかなとは思いますね。

既存の脚本で演出したりはしないんですか?
一宮 外部から頼まれてそこの団体が書いた脚本を演出したりする事はあります。いつかは古典をやってみたいです。例えば、利賀村のコンクールの課題で読んだ三好十郎の「胎内」。昨年の課題作品にあがっていたのですが、結局「胎内」をやる団体が選ばれていなくて。脳内ですでに面白い形が見えていただけに、とても悔しかったです。
作品は本当に面白くて震えましたね。古い作品で敬遠される場合もあるけど、面白さは絶対あると思うので、それがわかるように提示できたらと思います。あとは別役実さんの作品もやりたいです。一度、外部の団体で、別役さんの作風を意識して60分くらいの長編を書いた事もありました。

喜劇をしていて、喜劇だから、と特別な事はないと思います。コメディの俳優さんは、コミカルな演技をして、笑わせようとしますが、一切その必要はないと思います。ただただそこで生きてくれていれば、自然と観ている人が笑いたくなる、という事だと思います。だから自分の作品では、おかしな人が出てきておかしな振る舞いをして笑われるというよりは、常識が一歩、何かがズレていて、そこを普通に生きているから観ている人達が面白いと感じる。やっぱりそういうのが好きです。