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2017年10月05日

第8回せんがわ劇場演劇コンクール 専門審査員・アドバイザー講評(5)「Spacenotblank」


写真撮影:青二才晃(せんがわ劇場市民サポーター)

※掲載の文章は、第8回せんがわ劇場演劇コンクール表彰式の際、専門審査員およびアドバイザーから各劇団にむけて語られた講評を採録・再構成したものです。
劇団によって順番が違っていますが、当日の状況を再現しています。どうぞご了承ください。


■篠原久美子

お疲れさまでした。劇作のことだけいいますね。
これはレベルの高い脚本ですね。感心しました。
「Love Dialogue Now」というタイトルですが、たぶん古今東西探してみても「愛」というタイトルがついていて、愛について語る時に、「出会い」しか書かないという戯曲は、世界で初めてかもしれないと思います。おおむね「出会った後どうするか」と「別れる時にどうするか」という戯曲ばかりの中で、出会う・出会わないということについてのみ書かれているというのは非常に実験的で面白い試みでした。なおかつ「主観と客観」「彼と私」が常にダブルで出てくるというのが、ものすごく面白かったし、チャレンジングだと思いました。
また、今回、劇作家賞を受賞された山下由さんや、私などもそうですが、劇作家はおおむね、言葉をものすごく大切にしようと思って書いていくことが多いのですが、一方で、元来言葉は、消費されていくものだという側面が大きいもので、この戯曲の中では、言葉とはこれほど消費されていくものなのだということが、とても意識的に、的確に描かれていました。
言葉と動きと音楽が常に無関係であるということを徹底的にやろうとしているような、岡田利規さん(チェルフィッチュ)などがやったりしていますが、それにチャレンジしているということが非常に面白いと思いました。高いレベルの実験が行われている、非常にチャレンジングな戯曲であり作品だと思いました。
これからにすごく期待しています。頑張ってください。


■スズキ拓朗

個人的な感情を呼び起こされたというか、自分の時間を考える時間になりました。最近、死んだらどうなるんだろうなと考えてしまうんですけれど、そうか、出会っていなくても生まれ変わったら出会うのかもとか、いろいろと考えさせられる、微妙なさじ加減が面白かったです。一番大事な、いい台詞なのに、袖にはけるかはけないかみたいな場所で言ったり。最後の4行の台詞もすごくメッセージがあって、僕もかなり面白い、可能性がある団体だと思いました。
なんですが---いろいろチャレンジしていたり、とんがった表現で演技構造を壊すような新しいことをどんどんやってくれているので、すごく面白いんですけれど、もうちょっと「ついていける部分」を入れてもいいのかなと僕は思います。
というのは、小道具の意味とか、衣裳の意味とか、そういうことがちょっと、作品とどうしてもつながってこない。やはり、人は何かがつながった瞬間に「ああ」って思う楽しみがあると思うんです。それをまったく排除しても、もちろん構わないですけれど。
僕は個人的にはとても感動はしましたが、もう少し、世界とどうつないでくれるかというのは、今後の期待かなと思います。演出全体をもうちょっと考えてもらえると、可能性がすごくある団体だと思います。お疲れさまでした。


■高橋宏幸

僕が見た印象だと、ひとことで言えば、非常に今っぽい作品だなと思いました。現代風というよりも、本当に良くも悪くも今っぽい。理由は、現代の演劇の、たとえば先ほど名前が挙がった、チェルフィッチュとかマームとジプシーとか、矢内原さんもそうかもしれませんが、さまざまな影響圏の中にあって、その中で自分の作品を創っているように見えた。もちろん影響を受けるのは当たりまえだし、いいことだと思います。
ただ、可能性ということで言うならば、アーティストというのは、作品を創るという行為は、オリジナリティをどういう形で発揮するのかということが、必ず求められていくと思うんです。最若手ではありますが、いろんなことを試している、実験している、と同時に、自分の表現方法や方法論をどうやって早く獲得して創っていくかというのは、やはり求められると思います。いわゆるアーティストとして突破するためには、一歩先を考えていかないといけない、もしくは試していかないといけない。影響をうけながらも演出や作品がどんどんメタモルフォーゼして、その影響圏から逃れていくようなことが必要かなと。すぐには難しいかもしれませんが、こういうことを言えるくらい可能性があるということなので、いわゆる金の卵かと思ってます。


■矢内原美邦

とても面白かったです。3人それぞれの視点で進んでいくのも面白かったですし、一つの物事は一つの視点ではないということを、台詞で創っていくというのはすごく魅力的でした。ただ、役者には課題が残るかなと思っています。私だったら、舞台を通り抜けて走らせるのだったら、もっと速くとか、水とか飲ませないで、もっとガンガン走れみたいに言いそうです。役者の身体能力をどうやってあげていくかというのは一つ課題ではないかと思いました。
もう一つ問題だなと思ったのは、小さい視点のものを描くのは私もすごく好きですが、小さい視点が大きなものにつながっていくように台詞をチョイスしていくことがちょっと必要かなということです。ほんの1秒2秒の違いで、ある人と出会う・出会わないとか、「僕はまだ誰とも出会ってないのかもしれない」という小さな視点が、どう社会とつながっていくのかということが、特にこういうコンクールという場においては必要なのかなとも感じました。
ただ、訳わからなくていいと思います。演劇は自由だし、訳わからないままどんどん進んで行っていただければ、と、個人的にはとても面白く観させていただきました。


■矢作勝義

すでに指摘があったように、チェルフィッチュ以降の現代日本演劇の影響下にあることは明らかだと思います。しかし、それは悪いということではなく、その中で自分はどういうことを選択していくのかが問われているのだと思います。
HPなどを見るとプロデュースカンパニーだと思われますが、今後作品をさらに突き詰めていくにあたり、自分の手法や作品を、誰と、どのような俳優と一緒に創っていくのか。そして演出家として脚本家として、どういうセンスを磨いていくのか。それは音楽・衣裳・小道具など全てにおいてです。そういうすべてのクオリティをどうやって上げていくのか。それが1ランク2ランク上がったところで、どういう世界を見せてくれるのかを楽しみにしたいと思っています。


■徳永京子

私も非常に面白く拝見しました。
具体的な話ではないので、いろんな解釈ができますが、例えば、1秒と2秒の間にある、永遠のような違いについて描いた作品なのではないかと思いました。1秒だったら二度と会わないけれど、2秒だと、気まずい空気が流れる時間になったり、もう一歩踏み込んで、挨拶してみようかなという時間になる。そんな1秒と2秒の違い。もしくは、消えているということは消えていないということでもあるという、0と0.0000111くらいの違いということを描いていらっしゃると思いました。
そういう意味で、測量の道具を小道具に使ったり置いていたりしていたと思うし、その辺りの気の使い方はとても面白いんですけど、もうちょっとわかりやすくしてもいい、というより、わかりやすくした方がいいかなと思いました。
他の審査員の皆さんからも指摘があったように「自分が消えても消えなくても同じなのかもしれない」とか「出会っていることは出会わないことである」ということは、もちろん全世界の人間にとって、特に日本において、切実な問題ではあるんですけど、それでもやはり、この作品の射程は短い。俳優が声を合わせていうところの台詞をもうちょっと、自分たちの年代より上の人にも下の人にも届く言葉で創っていくと、たとえ台詞の全部が聞こえなくても、そこに文句を言われることは少なくなると思います。というのは、聞こえる部分の台詞が観客を落とせればいいんです。殺し文句は短くていいんですよ。そこを頑張っていただければ。いい作品だったと思います。


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写真撮影:青二才晃(せんがわ劇場市民サポーター)

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