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2016年07月10日

コンクール直前インタビュー!(6)<トマソンの祀り>のための集まり

第7回せんがわ劇場演劇コンクール出場団体のみなさんにお聞きした、直前インタビュー!観劇の前後にぜひご覧ください!

Q:
劇団の成り立ち」を教えてください。


渋革:
もともと、東京に4年前にきて、座・高円寺の劇場創造アカデミーに2年間通っていました。卒業後、今回出演している稲垣くんと「ダダダダ」という活動をはじめました。「ダダダダ」は、『すべての人間がメンバーであり、すべての人間がメンバーでない』という理念のもとに活動し、対話不能なほどバラバラの個性が、ただ自分の実現したいことを実現しあう中で、それでも一つの場に共存する、集まり方のコンセプトでした。しかし、「ダダダダ」は集まり方の理想形であっても、それを実現する戦略に欠けていたと思います。

ぼくは、個人的な体験もあって、劇団制というものを否定しています。ひとつの価値観・ひとつの基準で集団となって何かをするような集まりではなくて、複数のいろんな基準、いろんな価値を含み込んだ烏合の衆のような集まりを作りたい。そのためには、演出家のカリスマ性とか、脚本の面白さとか、一つの絶対的な価値のもとに組織される集まりじゃダメだって思っています。

では、いかにして一つの価値のもとに組織されない集まりをつくるのか?
それで考えたのが、「〈トマソンの祀り〉のための集まり」という活動です。

コンクール直前インタビュー!(6)<トマソンの祀り>のための集まり

Q:
「〈トマソンの祀り〉のための集まり」という団体名と創作の手順は?


渋革:
ぼくは、団体というものは、コンセプト毎に集まるべきだと思っています。コンセプトが明示されていないと、各自がそこで何を基盤に活動していいのかわからなくなるからです。そうすると、結局、演出家・脚本家の世界観を実現する駒にしかならない。一つの価値のもとに組織されてしまって、てんでバラバラでありつつ共存することが出来ない。
なので、この団体は、美術家:赤瀬川原平が発案した『超芸術トマソン』をもとに、とにかく〈トマソンを祀る〉コンセプトだけを基盤にして、あとは各自自由にやる集まりで、それが団体名となっているわけです。

創作の手順としては、トマソンを観察しに、各々、街へ人とか物の観察活動に出て、そのなかで、自分が気になったトマソンを再現する。再現して、そのトマソンの無用さの内に一体どういった事情が抱え込まれているのか? そういうことを想像して、ある場にトマソンを存在させていく、というものです。どの段階まで参加するか、は各自の自由です。

Q:
では、どうやって創っているんでしょう?


渋革:
舞台に流れる時間や空間の統制は、演出である渋革まろんが担当してます。各々どのようにトマソンを祀るか? すなわち演技の方法については、バラけさせたい。それぞれで考えて欲しい。テーマが違う・身体性が違うまでは出来ますが、方法が違う、は非常に難しいんですが。
ぼくが信じているのは、一人一(ひとりいち)演劇だと。あらゆる劇団の演劇の形式は、あるひとりの俳優から産まれている、という持論を持っていて。それぞれ一人一人の中に、演劇の形式が埋まっているはずだと信念を持っています。それを信じられなくなると揺らぎます。信じたいわけです。


Q:
活動について。


渋革:
〈トマソンの祀り〉の活動は、月1回の観察会を開いて、それに来てくれる人の中で、トマソンを祀りたい人が何人か出たら公の場で祀ろうとなるのが理想です。しかし、知名度がなくて、そもそもトマソンって何?観察活動って何?祀るって何するの?というのがあって、ある程度知ってもらわないと、この形が出来ない。ですので、今はまだ、不完全な状況、準備をしている状態です。


Q:
コンクール参加の動機は?


コンクールに出れば、色んな人が観てくれる。その中で、〈トマソンの祀り〉に興味を持ってくれる人がいるかも知れない。勧誘活動が主な動機です。観察会に来て、と言いたい。トマソン友達を増やしたいんです(笑)

Q:
今回は、どんな作品でしょうか?


渋革:
2016年4月~6月に、観察をしたトマソン達を再現して祀るという作品です。観察する場所は、行き当たりばったり、まだ手探りで、基本、人が集まる新宿・池袋・渋谷あたりにしています。そして、今回は、人を観察して再現する予定だったんですが、1名、都市の印象そのものに抱えられたものを、身体化して再現する祀り手がいました。それで、当初思い描いたものと形が変わってしまったのですが、都市もトマソン的に無用なものとして見ることができる、アイドルも日本国憲法も岸田國男の『紙風船』もトマソン的なものとして、祀ることが出来るかもしれないと、僕の中ではトマソンの射程が広がりました。


Q:
今後の展望は?


渋革:
個人的な野望としては、小劇場のシステムとは別なところに、演劇を日常的に演りうる可能性を、環境自体をつくりたい。そこまでやらないとダメだと思っています。
東京の小劇場演劇は、ぼくからするとショウケース化している。賽の河原のような、ただただ繰り返されていく行為で、それってなんか面白いの? と感じています。80年代小劇場の夢―若者であることの特権化―を(一部の)創り手も観客も批評家も未だに引きずっているように思える。だから、経済的成功(動員)や目新しさみたいなものが称揚される。もっと別の価値基準を持ちたいです。日常の中では実現しにくい価値観を思い切り示せるのが演劇的な場ですから、そもそも経済とも新しさとも関係ないはずなんです。それぞれの必要性が生じた時に、生活の中で自然に行われる〈祀り〉を構想して、それを必要とするひとに、こういう風なことをしても良いんだ、ということを伝えていきたいです。

(インタビュー:次世代芸術家グループ企画運営部 柏木俊彦)


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