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2015年01月22日

せんがわ劇場サンデー・マティネ・コンサート~午後への前奏曲 ~ Vol. 136 

1月4日に行われたサンデー・マティネ・コンサートVol.136の様子をライターであり、市民サポーターでもある才目さんによるレポートでお届けします。

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2015年、明けましておめでとうございます。

せんがわ劇場は、1月4日の日曜日、恒例の「サンデー・マティネ・コンサート(サンマチ)※」から新年のスタートを切りました。

※「サンマチ」は月に1、2回のペースで日曜日の午前に開催しているミニコンサートの愛称です。
「マティネ」はフランス語で「午前」を意味します。

新春最初のサンマチは、お正月らしく邦楽によるニューイヤーコンサートが企画されました。
「長唄・三味線・お囃子をお楽しみ頂く、新年の幕開けに相応しい華やかな演奏会」です。

昨年中から心待ちにしてくださった音楽ファンの方々も多かったのでしょう。
おかげさまで、開場前から大勢のお客様がお越し下さり、場内ほぼ満席となる盛況ぶりでした。

めったに聴けない三味線独奏に続いて、大曲『鏡獅子』をたっぷりと楽しみ、
サプライズなアンコール曲では大喝采のこだまする素晴らしい演奏会となりました。
芸術文化を介し、市民の皆様とともに、賑々しく幸先の良い新年を迎えられたことを慶びたいと思います。


●長唄三味線の独奏曲『去来』

司会進行は、お馴染みの松井康司先生(せんがわ劇場音楽コーディネーター)、
そして、劇場スタッフの萩原さんは新春企画にふさわしく和服姿です。

江戸時代、歌舞伎音楽から発祥・発展してきた「長唄」は、大きな編成で華やかな舞台を見せてくれるのが特徴です。

その基本は唄と三味線ということで、まず本日のタテ三味線をつとめる今藤政智(いまふじまさとも)さんが登場して、長唄三味線の解説から始まります。

「細棹」と呼ばれる長唄三味線は明るく華麗な音色が魅力です。

「絃(糸)は絹、胴の両面には猫のなめし皮を張りますが、破れやすいので、もう一挺用意して演奏に臨みます」等々、楽しいトークで政智さんが「ミニ知識」を伝授してくださいます。

続いて、長唄三味線の独奏曲として書かれた『去来(きょらい)』という曲の演奏です。

千を超える邦楽曲を遺した杵屋正邦(きねやせいほう)氏が昭和42年に作曲した作品ということで、
三味線ならではの「間(ま)」や「緊張感」に加えて、現代的なリズムや旋律も取り入れられています。

唄の入らない三味線独奏が生で聴ける機会はめったにありません。
息をこらし、お客様はじっと聴き入ります。

「古典」というジャンルを超えた三味線音楽の新しい境地。しかも、超絶技巧。政智さんの繊細かつ高度なテクニックが随所に光る、実に見事な演奏でした。


●極め付き、新春を寿ぐ大曲『鏡獅子』

続いて、囃子方から藤舎清穂(とうしゃきよほ)さんが登場して「小鼓」の紹介が行われた後、
用意も整い、お待ちかね『鏡獅子』の演奏に移ります。

幕が上がると、金屏風をバックに緋毛氈を敷いたひな壇が設えられています。

今藤政子(いまふじまさこ)さんを筆頭に3人の唄方をはじめ、三味線方、囃子方(笛、小鼓、大鼓、太鼓)、
総勢11名の演奏者が黒紋付・正装に身を包み居並ぶ姿の華やかなこと。
サンマチ・ファンの間から思わず「オー」と感嘆の声があがります。

新歌舞伎十八番のひとつ『(春興)鏡獅子』(作詞:福地桜痴、作曲:三代目杵屋正次郎)は1時間弱におよぶ大曲です。
今回は、後シテ(後半)「胡蝶」の場面から始まります。

「~世の中に、絶えて花香のなかりせば、
  我はいづくに 宿るべき~」

と、今藤政子さんの素晴らしい長唄が場内に響きます。

三味線、笛、鼓の切れのよい響きに乗って、胡蝶の精が可憐に舞い踊る様子が描かれます。

ひときわ高く笛が鳴り、小鼓、太鼓の絶妙な掛け合いの後、小姓弥生が獅子の精に変身して現れます。

獅子の精が、牡丹の花に遊び狂い、「毛振り」という頭を激しく振って勇壮に舞う場面。
唄方にとっても、三味線・囃子方にとっても、たいへん高度な技術を要する演し物といわれますが、
それだけに観客にとっては聴き応え十分。
歌舞伎好きの方なら、勘三郎はじめ名歌舞伎役者の演じる鏡獅子が彷彿としたかもしれません。

新春を寿(ことほ)ぐ大曲に観客はじっくりと聴き惚れ、やがて割れんばかりの拍手が場内を包み込みました。

せんがわ劇場サンデー・マティネ・コンサート~午後への前奏曲 ~ Vol. 136 



●さらに大喝采のアンコール

「邦楽演奏会でアンコールにお応えすることはあまりないのですが、こんな曲を選んでみました…」と、
始まった曲は、なんと映画『アナと雪の女王』の主題歌「Let it go~ありのままで」です。

「~ありのままの 姿見せるのよ
  ありのままの 自分になるの~」(訳詞:高橋知伽江)

耳に馴染んだ洋楽が、本格的な邦楽、それも長唄として演奏される意外性とユーモラスなセンスに観客はびっくり仰天。
今藤政子さんの声の美しさはもちろん、歌唱の実力、観客の心へ「唄」を届ける浸透力の凄さが、改めてまざまざと分かる素晴らしいアンコール。大喝采がこだまする中、静かに幕がおりていきます。

身近な劇場でこんな豪華なお正月を楽しむことができ、多くのお客様から感謝の声が聞かれた2015年最初のサンマチでした。



サンマチは、こらからも洋の東西を問わず、幅広い音楽・演奏者の紹介に努めてまいります。

本年も引き続き「調布市せんがわ劇場」をどうぞよろしくお願いいたします。



(取材・文/ライター 才目)



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