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2018年07月13日

演劇コンクール・稽古場情報!!! 【N2/エヌツー】

ただいまコンクールに向けて絶賛稽古中!の、第9回せんがわ劇場演劇コンクール出場団体の皆さんにアンケートをお願いしました。コンクールの先輩でもある運営スタッフ(次世代芸術家グループ)からのスペシャルクエスチョンも加えた全7問、どんな答えが返ってきたのでしょうか?
全6団体、順不同でお届けします。

今回は、中澤陽さんから、N2 (※)代表・劇作家・演出家の杉本奈月さんへの質問です。どうぞご覧ください!
(※)・・・N2の「2」は下付きの小文字が正式表記。以下同。



2017年『 blue/amber 』ウイングフィールド

「劇団の成り立ち」を教えてください。

杉本
演劇ぎらいの子どもでしたが、中学時代に読んだ元・劇団Ugly duckling 樋口美友喜(現・PlantM 樋口ミユ)さんの『ガラクタリロン』という戯曲に影響され、12歳から演劇を始めました。大阪の高校演劇をへて、京都の薬科大学へ進学したのですが戯曲を創作し上演する場がなかったため、私が劇作・演出・宣伝美術、高校時代の同級生(現在は東京の舞台会社に勤務)を舞台美術として "劇団N2"を立ちあげてから、五回の本公演はすべてウイングフィールドで行いました。現在は "N2" です。


これまでの活動について聞かせてください。

杉本
2014年までは大阪の言葉でなされる会話劇を中心に上演していました。
2015年より、上演のたびに更新される創作と上演『居坐りのひ』に従事し、大阪市主催事業の大大阪舞台博覧会、NPO法人らふと主催のRAFTでの東京公演、IN DEPENDENT15:TRIAL、C.T.T.大阪事務局試演会、ウイングフィールド主催のショーレース・ウイングカップ6で "劇詩" として書かれた本を上演をしてきました。東京公演で上演した戯曲を第15回AAF戯曲賞最終候補に残していただき、ウイングカップ6では最優秀賞をいただきました。
その後、N2へ名をあらため、大学中退後は京都を第二の拠点として、書き言葉と話し言葉の物性を表在化する試み "Tab." を始動しました。Tab. は "劇場へのあて書き" を主軸としていて "劇詩" 時代の文体をのこしつつ、出演俳優の "語り" と彼らが書いた "テキスト" を戯曲上と劇中へ導入しています。また、2018年より口語による上演を主体としたあらたな系として、処女戯曲の翻訳と複製 "Fig." を2018年より始動しています。


せんがわ劇場演劇コンクール参加の動機はなんですか?

杉本
数年前に、京都のカンパニーであるドキドキぼーいずと劇団しようよが受賞したことで、せんがわ劇場演劇コンクールの存在を知り、昨年は何となく活動を気にしていた東京のスペースノットブランクの受賞を知りました。
上記のカンパニーとのかかわりはないものの、ホームグラウンドだったウイングフィールドをはなれ――いかに様々な劇場が有するクローズドな公共性をつき崩し、ひらかれた私性へ落としていくのかといった―― "劇場へのあて書き" をしていたこと、自身にとって "東京" がそう遠くはない土地であったことも含め「お兄さん世代と同世代のカンパニーが行っていたし、そろそろ自分も行ってもいいかも」といった気持ちが芽生えエントリーしました。また、コンペや助成金にかんするデスクワークがルーチンになっていたから……というのも多少はありましたし、表現者としてステップアップを図りたいといった野心も勿論、ありました。


今回上演する作品の見所は?

杉本
自宅のある新大阪でも揺れた地震は今や鳴りを静めているものの、京都の稽古場では近隣の水害のためアラートが鳴り響いています―― "語り" なしには語られない一人芝居について、二人で創作しながらも一人で上演する演劇について考えています。
また、演劇にかぎらず「物語、物語」といいたがる人々の語り口、自らオープンにして独り善がりに語りたがる "はしたなさ" と、そうして生まれていく "自分自身が主体となる物語たち" への嫌悪感があります。悪意なき彼 / 彼女らの思惑によって日々、演劇の主体性がうばわれていっているように感じるときがあります。
今のところ、上演ではダイアローグとモノローグ、そして、テキストをつかおうと思っていますが、もしかしたら何も語らないために言葉をつくし劇場をあとにするのかも知れません。過去には「語らないことに、ことさら雄弁になる」芝居だと評した人もいました。


コンクール後の展望をお聞かせください。

杉本
2018年8月に studio seedbox で Fig.2『桜紙』を再演し、11月は大阪の "劇場寺院" である浄土宗應典院にて Tab.4『磔柱の梨子』、2019年3月はクリエイティブセンター大阪で Tab.5『退嬰色の桜』― Fig.2『桜紙』を上演します。
以降も別の劇場での公演を望んではいるものの、現行の関西小劇場の制度では生憎、自分自身が女性であることも含め、多かれ少なかれ一人でやっていくのが非常に苦しい所もあるため、アーカイブの制作とレビューとデザインの仕事はつづけつつ、薬学部への再入学も考えながら、N2にかかわる俳優と制作者が安心して活動していけるような場づくりをしていきたいです。


2016年 Tab.1『水平と婉曲』人間座スタジオ(撮影:松山隆行)


スペシャルクエスチョン・中澤からの質問(1)
「N2の作品の特徴は、「劇詩」や「物性」など、ことばに重きを置かれているように想像します。それら(作)を実際の舞台空間に立ち上げる(演出)際に考えていることを、教えてください」


杉本
現在は、戯曲を演出によって舞台空間へ立ちあげるのではなく、出演俳優の言動――つまり "出演俳優の書いたテキスト" と "出演俳優が語った話" そして "俳優の肉体による動き" から "上演として存在させられる時間" を最初に立ちあげています。彼らの書き言葉と話し言葉へ、どういった声色で、舌づかいで、体温で、肌ざわりで肉筆 / 肉声のことばを口にするのか――随時、演出をつけていきながら最後に戯曲があがってきます。演出―出演者のあいだでは、浅薄なつきあいかたが求められがちな今の時代とは逆をいくように中々、しんどいディープなかかわりかたをしているのですが、常に気をつけているのは、上演にかかわるもののプライバシーをおかさないこと、表現に際して公私のラインを明らかにすることです。


スペシャルクエスチョン・中澤からの質問(2)
「これまでも、大阪、京都のみならず東京や横浜での公演をされている中で、それぞれの地域で公演する際に感じる違いがあれば教えてください」


杉本
「大阪と京都は身内しか観に来ない」と言う人が多いようですが、N2は逆に「同業者が観に来ない」ので、そういった実感はありません。私の出自として、芸術系大学や学生の演劇サークルを通っていないからというのも少なからずあるのかも知れません。
リニューアルしたAAF戯曲賞で最終候補に残していただいた年も「でも、愛知の戯曲賞でしょ?(大阪はOMS戯曲賞だから)」と言われたり、悲しいながら「僕はチケットを売らないよ。あなたが誰に評価されているのかは知らないけれど」と男性俳優に嫌がらせをされることもありました。
でも、東京と横浜は口コミで劇場へ来てくださったり、何かしらの評価が下された際には観に来てくださるお客様がおられて救われる思いでした。一方で、ダメなときはダメだと東京の方々は言ってくださるので、ありがたいです。
2015年のRAFT "いかだ辺境劇場"(東京)ではピアノとヴァイオリンの演奏を私とカンパニーメンバーの二人が担い、2018年のTPAMフリンジ(横浜)では "少しの電源と必要最低限の荷物さえあれば再演できる" をテーマにし、ギャランティが高額になりがちな技術スタッフを雇わずに低予算で公演ができる演出としていました。



【感想】
しずかな野心と共にひたむきな活動を行ってきたように感じるN2が今回のコンクールで見せる、「語り」なしには語られない一人芝居。文章だけでは未知が多く、作品を見ることで得ることがたくさんあるような気がしています。東京で見ることができるこの機会を見逃せません。

( せんがわ劇場演劇コンクール運営スタッフ・中澤陽)


第9回 せんがわ劇場 演劇コンクール
7/15(日) 16:30
N2/エヌツー 『桜紙』
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