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2019年09月12日

第10回せんがわ劇場演劇コンクール講評 ~世界劇団『紅の魚群、海雲の風よ吹け』~

※掲載の文章は、第10回せんがわ劇場演劇コンクール表彰式の際の講評を採録・再構成したものです。

杉山:
非常に僕は好きで素敵な作品だなと思いました。少女の成長の物語で、それをすごく科学的なところから捉えていました。台詞は七五調で、唐十郎とか、野田(秀樹)さんの初期のころの感じがあったりして、アフターチェルフィッチュ(※)、アフター平田オリザの時代に、これがまた戻ってきているということが面白い。と同時に、今までだったら単なる文学的なフレーズで終わるところを、そこに科学が入っているというのが、すごくいいなと思いました。
もうひとつ面白かったのが、台詞の七五調に対して、音楽と身体が作り出すリズムが分離していること。普通だったら台詞と身体は一緒になってくるんですけど、身体の方はどちらかというと音楽とリズムの方に合っていて、そちら側がバックグラウンドを作って、台詞は遊離している感じ。非常にお面白かったし、創作過程にすごく興味を持ちました。
サイエンスポエットだなと思いました。サイエンスなんだけど詩的で、そこがすごく新しい。

※チェルフィッチュ:岡田利規氏が主宰する演劇カンパニー。https://chelfitsch.net/works/

加藤:
まず俳優の皆さんがそれぞれすごくチャーミングで魅力的な方々だなというのが強く印象に残っています。オープニングで「バッ」と出てきた時にお客さんの心をすごい「ギュ」と掴んだ感じというのも客席にいてすごく感じました。
これは個人的な意見なのですが、作中で出てくるライフステップの中に、出産ということが、あたかもみんなに平等にあることのように書かれてしまっていることに、私はちょっと違和感を覚えました。「大人になるってどういうこと」のアンサーとして、「子供を産むってこと」というのがあるのだとしたら、戯曲の中の整合性は取れていたと思うんですが、そのアンサーがない中で、出産というものをライフステップのひとつとして扱ったというのが、ちょっと疑問に残りました。
一番かわいいなって思ったのが、みなさんが、マイクをそっとその前のところに返しに行く仕草で、めちゃくちゃかわいかったです。

市原:
言葉のセレクトが面白くて、俗物っぽい要素が入っていたのがなんか嬉しいという感じがしました。身体が動いていて、出だしで引き込まれました。
ただ最後「大人になるってどういうこと」「大人になるってそんな大したことないわ」みたいな感じだったと思うのですが、そこに到達した嬉しさがあまりなく、それまで素晴らしかった分「なんだ」という感じがしました。私はたとえそれが間違っていたとしても、もっと作者独自の考えをみたかったです。でも言葉の選び方が面白かったなと思います。

我妻:
みなさんすごくチームワークがいいんだなというところを感じました。稽古もいっぱいなさってるんだと思いました。台詞もすごく伝わる言葉を選んでいるなというのと、踊りのグルーヴ感とか、歌であったり、演出的にも色々工夫なさっていると思いました。
ただ、全体の印象でいうと、すごくスムーズにテンポで進みすぎてしまうということがあって、そこが見やすいといえば見やすいんだけれど、「(作品が)あ、終わった。」みたいな感じで、ちょっともったいないなという感じです。踊りでいったら、そういう感情の時に体の動きはどうなるんだろうか、というところを全部振付によって消してしまっているところがあって、そこが気になりました。

乗越:
非常にキュートな作品だと思います。特にお母さん役とドーパミン役のふたりのデュオの体のキレがすごく良かった。
主人公以外は全員顔を白く塗って異形の姿をしている。主人公の第二次性徴の恐れが出発点になっているのはわかるものの、あそこまでの攻撃性は唐突な印象でした。なぜ彼女がそこまで恐れたりあるいは憎しみに近い感情を持っているのかの描写が不足で、いまひとつリアリティとして伝わってこなかった。第二次性徴自体は普遍的なテーマであっても、それにともなう感情は個人的なものなので、そこをもうひとつ掴みとって投げてくれたら、観客はもっと話に入れたのだろうなと思います。
あと衣裳の色が好きでした。南国の蝶々の羽根のような毒々しい感じのものや、お母さんの腕の部分に意味もなくカラーボールが入ってるとか、すごくよかったと思います。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
徳永:
オーディエンス賞おめでとうございます。ただ私は辛口です。何人かの専門審査員の方からも出ていましたように、七五調の台詞とか、ラップを意識した韻の踏み方で、それは個性になっていましたが、デリケートな問題を扱っているのに、リズムを優先させるあまり、すごく雑に終わってしまっている。
加藤さんから出産の問題の指摘がありましたけど、それも含めてこのテーマを、皆さんのやり方でストレートに受け取ると、初潮前後の思春期の女の子の一時的な心身の不安定な状態の物語、で終わっちゃうんですよ。でも本当はそうじゃなくて、女性や思春期に限定されない、人が一生抱えていく問題を扱っているんだと思うんです。さっき(キュイの講評で)話にも出た、大人も子どもも成長しない今の日本の社会の中で「大人になるってどういうこと」というのは、もう全員の問題なんです。それを扱ったにも関わらず、リズムやテンポを優先して内容を深められなかったのはすごくもったいないと思いました。
「大人になるってどういうこと」と自分たちで立てた問いへの答えが「どうでもいいんだわ」というのも、そこに着地するのなら、なぜ彼女は引き籠もったのか、なぜ自分の体の変化に対して、あそこまで恐れや汚れみたいなものを感じたのかということとのバランスが悪いですよね。あそこまで彼女が怯えたことに対する答えとしてはあまりにも雑だし無責任でもある。
「大人になるってどういうこと」は普遍的な問いですが、それをテーマに持ってくるのなら、新しい問いの立て方や自分たちなりの答えを表現の中に織り込まなければいけない。それが成されてなかったと思います。なので、私としては「うーんまだまだ」という感じがしました。









  


  • 2019年09月12日

    第10回せんがわ劇場演劇コンクール講評 ~キュイ『蹂躙を蹂躙』~

    ※掲載の文章は、第10回せんがわ劇場演劇コンクール表彰式の際の講評を採録・再構成したものです。

    乗越:
    非常に言葉に力があり、脚本全体に「グサッ」とくるようなセリフが多くあったのが印象的でした。僕は先に台本を読んでいたので、冒頭から、ひとりのキャラクターが3つの人格でしゃべっていることをわかった上で見ていたわけですが、観客の中には「ひとりの医者に何かをされた3人の子供の話」だと受け取ってしまう人もいるんじゃないでしょうか。もしそこをつかみ損ねると、この作品全体の(自分の頭の中と外界、森の外と内)という二重の構造の上に成り立つ部分が伝わりきらない恐れがありますね。
    内容は、個人と世界(社会)がどう関係を紡いでいくか、構築していくのか、いけるのかということ。学ぼうとしたり、馴染もうとしたり、殴りたくても「殺してはいけない」と言われたり、馴染もうとするが合わせすぎてはいけないなど、様々な要素が入ってきます。しかし最終的には「世界を殺すか」「世界に殺されるか」という非常に強い、極端と思える言葉で締めくくられる。
    最初は、そこで終わっていいのか?と思いました。しかしその切実なリアリティが、今の社会と切り結ぶ断末魔の叫びのようにも聞こえて、非常に良かったと思います。
    演出も、舞台中央に吊るされた帯状のライトが光ることで空間が区切られ、3人が一体になったり、2対1になったり、そこから抜け出て行く蜘蛛の糸のようにも見えたりする。相対的に色々な趣向が張り巡らされた作品だったと思います。

    杉山:
    すごく難解な世界だなと思いました。それと同時に、1日2日経っても、綾門くんが書いた言葉が心に残るんですよね。「人を殺してはいけない、でも世界に殺される」とか、「ここから立ち去らねばならない」「ここにいなければならない」とか、否定形で語られる言葉がまるで宗教のようでした。例えばキリスト教は「隣人を愛せよ」とか、命令形・否定形を使って言葉の強さをすごく意識していると思うんです。
    で、現代宗教なき現代に、誰にすがるのかというと、医者なんですね。医者が私に「なぜ生きているのか」「どうすべきなのか」を示す。でも、その医者でさえも殺すんだ、と。
    さらに、心理学的な感じですが「森に入って行く」という感覚も面白くて、村上春樹の「井戸の中に降りていく」に近い感覚を持っている気もしました。
    戯曲は非常に面白くて、見ながら勝手に「間接演劇」という名前をつけました。目の前で起こっている事象は、あんまり意味がない。それよりも、言葉と、起こっている「事」から、勝手に昨日、自分に起こった「事」であるとか、今社会で起こっている「事」を妄想してしまう。見ていて僕が勝手に思ったのはやっぱり登戸の事件(※)とか、8050問題(※)。他者って何者なのかとかですね・・・。
    箱庭演劇祭という、大学生がやっている演劇祭の審査員もやらせて頂いているんですけど、演劇の世界が非常に狭くて、私小説的で、閉じている。日本がものすごく閉塞していると最近感じています。この作品は、すごくその世界を上手く捉えているともいえます。
    例えば、チェーホフが描く「私」には、自己のアイデンティティの中に「私は父であると同時に親であり酒飲みである」という風に、グラデーションがあります。でも、現代の「私」というのは、8050問題・7040問題(※)と言われているように、親と子が、成長しない関係でしかない。それが日本をものすごく閉塞的にしていて、キュイさんが作った世界はまさにそれだな、と思ったんです。
    殺すか殺されるか、 0か100しかない。 0 と 1で構成されるコンピューターの中の世界が、人間の生命のグラデーションを塗りつぶしているけど、本来はそこに豊かな関係があって、チェーホフが「三人姉妹」「桜の園」で描こうとしていた人間の心の揺れみたいなものは、そこに魅力があったんだなと、逆説的にですけど、考えさせられました。
    あと、照明も面白いなと思いました。吊られているLEDが光った時に、人間の生理現象に違和感を起こさせる効果があった。照明効果というのは、夕方だから赤い光、寒そうだからブルーとか、そういうことではないんです。人間の目は、15分たたないと暗闇の中で物を見る事はできない。それと同じで、LEDが変化した時、人間は生理現象としてすぐについていけないんです。そういう生理を照明効果として入れるアイデアを僕は素晴らしいなと思いました。
    あと、この劇場はめちゃくちゃ個性豊かで、難攻不落なんですね、安藤忠雄。僕もここでやらせてもらう時には、まずこの壁を隠したいとか、バックを隠したいとか、大変な思いをします。それを、超モアレ現象を起こすバックの壁を露出させて、横に出るラインをわざと照らしたのもすごくいい。その意識がまさに「間接演劇」なんです。別の言い方をすると「脳内世界演劇」。身体が排除されて、意識の中に入り込んでくるという感覚がありました。
    逆にちょっと損だったのが、演出意図がよくわからないこと。綾門くんが作っている“場なき場の戯曲”で、どうしてこの椅子なのか、アヒルの人形をこの空間で出したのか。もっと脳内のイメージを演出できたのかなという感覚はちょっとありました。

    ※登戸の事件:2019年5月28日に川崎市多摩区登戸で発生した通り魔殺傷事件。
    ※8050問題・7040問題:2010年以降の日本に発生している長期化した引きこもりに関する社会問題。
    (上記、Wikipediaより)

    加藤:
    私が作品を見る基準として「わかる」か「わからない」かを基準にすることは、ナンセンスだと思ってます。明確なストーリーがあって、はじまりがあって終わりがあってすべてのお客様が「あ、これはこういう話だったのね」って納得して帰る作品が、いい作品だとは思ってません。むしろ私たちの人生と同じように、なんだかよくわからないし、明確なストーリーもないし、でもなんかすごくモヤモヤするし、イライラもする。時たますごい気持ちよくもなるけれども、なんだか答えがわからない(ということでいい)。で、それをものすごく突き詰めて追求していった作品が、今回のキュイさんの作品なんじゃないかな、と思っています。
    そうした作品を作るときにすごく難しいのは、「あれ今私たち置いてけぼりになってしまっているかも」という、なんとなくお客さんを置いてけぼりにしてしまう時間が、出がちなことです。この作品では他者(=世界)と個人が断絶された二項対立が描かれているので、客席と舞台が演出の意図的に断絶されるんだったらいいんですけど、その辺の機微が本当に難しい作品なんだなという風に思いました。あと、すごく照明が綺麗でした。

    市原:
    私も演劇を作っているので、自分が言ったこと全部自分に返ってくるような感じで怖いんですけど。まず台本を読ませてもらって、すごく面白いと思いました。心に残りましたし、どうしてこういうことを書いたのかということを考えるのも面白かったです。日々生きていることの空気が投影されていて、自分の思っていることと結びつけて読むことができました。
    戯曲の言葉が強いので、演出に強い何かがあっても、それに耐えうる言葉だと思うし、俳優さんも魅力的なので、演出によってもっと相乗効果があって面白くなるんじゃないかなという予感を感じました。

    我妻:
    普段は舞踏という踊りをやっていて、セリフを使わずに舞台に立つ仕事なので、皆さんがおっしゃっているようなことは言えないですが、今回、私は台本を読まずに拝見しました。その時、何か全然わかんないことが起きてるという、ちょっと自分が取り残された感がありました。しかし、要所要所に印象に残る言葉があったり、家に帰ってから「こういうことを言っていたのかな」と思って台本を読んだら、全然違う話だったので、ちょっとびっくりもしました。
    結局、純粋に思ったのが、お客様は台本を読まない状態で見せられるという条件であるから、言葉の強さや、人の体の動きというのは、本当に繊細に選ばなければいけないんだなということです。なぜなら、お客様は、見たものを使って自分で組み立て直してしまうからで、そういうところを感じた作品でした。
    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    徳永:
    戯曲を前もって読んだ時に、主人公の抱える苛立ちとか怒りというのが非常に切実に感じられました。ですが、実際の舞台を拝見したら、ひとりの人物から分裂した3人の登場人物だと思うんですが、話のトーンがほとんど同じで、3人に分けたメリットが感じられず、切実さを相殺しあってしまったような気がしました。
    台詞の中で読んだ時も、舞台上で聞いた時も、一番印象に残ったのは「世界は親切じゃないからこうやって話をしなければならないのに、話したいこと全部話すとみんなが怒るので、僕も怒らざるを得なくて困るとずっと言っているのに、聞いてよ」という台詞でした。それは、自意識に閉じているようで、実は「外に出たい。外と繋がりたい。外とぶつかりあいたい」という気持ちを表したものだと私は理解していて、この作品の最も大事な部分ではないかと思ったんですが、上演ではそれが苛立ちとしてしか感じられず、3人の人物は苛立ちの結果の分裂にしか見えなかったところが、閉じたまま終わってしまったと感じました。










      


  • 2019年07月11日

    演劇コンクール|稽古場アンケート!【劇団速度】

    第10回せんがわ劇場演劇コンクール出場団体の稽古場情報を配信!全6団体、順不同でお届けします。

    今回は【代表】【野村眞人】さんにお話を伺いました。

    ①「カンパニーの成り立ち」を教えてください。
    2016年、京都を拠点に結成。「ズレ」や「キョリ」などをテーマに、複数多分野のアーティスト相互による批評と協働制作を行うコレクティヴとして活動している。

    ②活動について聞かせてください。
    いま、進行しているプロジェクトの一つに、「俳優とともに戯曲を使って上演する!!」というものがあります。3年間かけて、それぞれ「戯曲」「俳優」「上演」の再確立を試みます。

    ③コンクール参加の動機は?
    団体として、ダンスとは何かという問いについて考えていくための契機として。

    ④今回は、どんな作品でしょうか?
    「ゴドーを待ちながら」をダンスする作品です。

    ⑤今後の展望は?
    団体として、ドキュメンテーションを作りたいです。







    【担当メモ】
    「複数多分野のアーティスト」たちだからこそ考えることのできる課題。頭の中で想像しきれない「得体の知れない」なにかを上演で目の当たりにすることができるように感じています。「演劇」のコンクールで「ダンス」とは何かを考え、それは「ゴドーを待ちながら」を「ダンス」する。舞台芸術のあらゆる批評性を帯びた作品を作る気概にご期待ください。

    【劇団速度:7月14日(日)13:30】 担当:中澤陽
      


  • Posted by せんがわ劇場 at 10:57Comments(0)演劇コンクール第10回演劇コンクール

    2019年07月08日

    演劇コンクール・稽古場アンケート! 【イチニノ】

    第10回せんがわ劇場演劇コンクール出場団体の稽古場情報を配信!全6団体、順不同でお届けします。

    今回は、【主宰】【前島宏一郎】さんにお話を伺いました。

    ①「劇団の成り立ち」を教えてください。 
    地元・茨城で長く活動していた主宰・前島が、自らの芝居の評価を得ることと、同様に地域で活動する演劇人との交流をしていくことを目標に、活動をはじめた演劇チームです

    ②活動について聞かせてください。
    茨城発の演劇チームではありますが、主に県内ではなく全国の演劇フェスなどに参加させていただく活動が中心です。
    札幌・仙台・新潟・都内・柏・豊田・高知・島根・熊本などで上演を重ねています。
    年間5〜6回遠征することもあります。

    ③コンクール参加の動機は?
    茨城ではなかなか得られない「評価」をいただくことです。それが自分たちの芝居を高めることに直結すると思っています。

    ④今回は、どんな作品でしょうか?
    一見するとごく陳腐な「まち」と「ひと」の話です。しかし、ひとが生きる背景・ベースには様々な要因があり、だからこそ、それをあぶり出す舞台の場においては、人と人が織りなす空気と匂いがあると思います。そこにこだわった作品です。

    この『なかなおり/やりなおし』のフルサイズ版を松本・広島で上演します。
    全国の様々な土地から「イチニノの芝居をウチで観たい」と言っていただけるように、呼んでいただけるように、自分たちの武器を磨いていきたいと思います。






     
    【担当メモ】
    「ひとの心の機微、ひとのいる空間、ひとの熱い呼吸」にこだわって作品を作っていると言うイチニノさん。
    当日はどんな“匂い”を舞台上に描いてくださるのか、楽しみです。

    【イチニノ:7月13日 16:30】 担当:うえもとしほ
      


  • Posted by せんがわ劇場 at 15:58Comments(0)演劇コンクール第10回演劇コンクール

    2019年07月07日

    演劇コンクール・稽古場アンケート! 【キュイ】

    第10回せんがわ劇場演劇コンクール出場団体の稽古場情報を配信!全6団体、順不同でお届けします。
    今回は、【主宰】【綾門優季】さんにお話を伺いました。

    ①「劇団の成り立ち」を教えてください。
    大学一年生の時に、雀の鳴き声ほどのかすかな声で世界の片隅から問いかける、みたいな意味で「Cui?」(現在はキュイ表記)を旗揚げしたのですが、3.11が直撃して俳優3人降板して公演半年延期になり、何もやってないのにチラシ代の赤字だけが残るという、散々なスタートでした。ただキュイ、人前で名乗るのも書くのも楽なのは利点のひとつですね。今は気に入っています。響きもいいですし。キュイ。

    ②活動について聞かせてください。
    旗揚げから手を変え品を変え世界を嘲笑うような戯曲を書いていましたが、ただの性格の悪い奴と化していたので、2016年から作品ごとに組む演出家を変え、それによって戯曲の方向性も変えるスタイルに移行して、それが定着しつつあります。日本では、唯一とは言わないまでも珍しい在り方だと思っています。ただ今回の『蹂躙を蹂躙』については、世界を嘲笑うような戯曲に戻ってきてしまいました。

    ③コンクール参加の動機は?
    スペースノットブランクさん、コトリ会議さん、ゆうめいさんなど気になっている劇団が複数参加していたので、好奇心が疼いたからです。あと、作と演出が分かれていて参加出来るコンクール自体、少ないということも大きいです。戯曲賞は何度か応募してとったり落ちたりしましたが、あれはポストに戯曲を入れたらあとはひとりで天に祈るしかないので、比べて上演審査のコンクールはヒリヒリ感が違いますね。

    ④今回は、どんな作品でしょうか?
    最近物騒な事件が多いので、『蹂躙を蹂躙』は、思わず現実の出来事と重ね合わせて観てしまうような内容になったかもしれません。はじめはそういう意図はありませんでしたが、それでいい、と今は捉えています。被害者が悲しい、それはもちろんそうでしょう。しかし私たちは苦痛であっても、加害者の悲しさを遠いものとして排除せずに、理解しなければなりません。加害者を人じゃないように扱うかぎり、これからも物騒な事件は起こり続けるでしょう。だって彼は私たちと全く同じ人だから。そういう話です。

    ⑤今後の展望は?
    展望のまるで見えない、一寸先は闇としか言いようのないこの劣悪な世界で、なんとか演劇をやり続けて死ぬことです。不謹慎に足がついて歩いているようなところがある作風なので、守ることに意味のないつまらないルールは、生きているあいだにひとつひとつ丹念に破壊していくことが展望といえば展望でしょうか。










    【担当メモ】
    先日綾門さんとお話する機会があった時、戯曲を書くときは自宅で、音楽を大音量でかけながら書くと言っていたのが印象に残りました。
    コンクールの作品はどんな音楽をかけながら書いたのか、聞いてみたいと思います。

    【キュイ:7月13日(土)13:30】 担当:うえもとしほ
      


  • Posted by せんがわ劇場 at 11:37Comments(0)演劇コンクール第10回演劇コンクール

    2019年07月06日

    演劇コンクール・稽古場アンケート!【世界劇団】

    第10回せんがわ劇場演劇コンクール出場団体の稽古場情報を配信!全6団体、順不同でお届けします。

    今回は【演出・脚本】【本坊由華子さんにお話を伺いました。

    ①「カンパニーの成り立ち」を教えてください。
    愛媛大学医学部演劇部を母体とした医師と医学生の劇団です。

    ②活動について聞かせてください。
    世界劇団では、精神障害者の患者さんを対象にワークショップを行っています。精神障害を持つ人々に演劇的な介入がどれだけ効果的か、大学で研究を実施しております。また、様々な演劇コンクールに参加し、ツアーを実施するなど精力的に活動しています。

    ③コンクール参加の動機は?
    せんがわ劇場演劇コンクールでは、作品発表を行うだけでなく、その後のアウトリーチ事業に積極的に取り組まれており、私達の精神障害者に対するワークショップに活動が活かせると考えました。また、幅広いジャンルから審査員が集められており、魅力に感じたことも動機の一つです。

    ④今回は、どんな作品でしょうか?
    「紅の魚群、海雲の風よ吹け」は私自身を投影したものになりました。この生きづらい世の中をどのように生き抜こうかと、悩み続けた叫びが作品となりました。演劇人として、医師として、一人の女性として、紅の海を泳ぎ切ってみようと思います。

    ⑤今後の展望は?
    2020年春に三都市ツアーを実施します。また、精神障害者の方々を対象に演劇を使ったコミュニケーションワークショップを実施し、アウトリーチ事業を執り行っていきます。作品創りだけでなく社会還元を目的とした活動の幅も広げていきます。








    【担当メモ】
    「医師と医学生の劇団」が「演劇人として、医師として」どのような作品を作るのか、とても興味があります。演劇という手段を選択し、そして愛媛からせんがわ劇場という場所を選択し、さらにその先に拡がる「世界」を見据えるかの如き団体名でもある「世界劇団」の作品にご期待ください。

    【世界劇団:7月13日(土)15:00】 担当:中澤陽

      


  • Posted by せんがわ劇場 at 14:25Comments(0)演劇コンクール第10回演劇コンクール

    2019年07月03日

    演劇コンクール・稽古場アンケート! 【公社流体力学】

    第10回せんがわ劇場演劇コンクール出場団体の稽古場情報を配信!全6団体、順不同でお届けします。

    今回は、【主宰】の【公社流体力学a.k.a太田日曜】さんにお話を伺いました。

    ①「劇団の成り立ち」を教えてください。
    2014年に演劇動画コンテストのクォータースターコンテストに応募のため結成。ただ役者をやってくれる知り合いが誰もいなかったため責任として主宰の一人芝居で応募。単なる演劇ファンの思い出作りだったのだが賞を取ったので才能あるんじゃねえかと調子に乗って本格的に演劇団体として旗揚げ。

    ②活動について聞かせてください。
    美少女至上主義者なので、美少女の魅力を伝える活動を行っている。基本的に主宰の一人芝居だが最近はライブハウス・ポエトリーオープンマイクでの朗読パフォーマンスとそこから発展した演目・朗読見世物がメイン。朗読見世物はほとんど雑談のような独り言なので、あれのジャンルは何かとよく聞かれる。私もよくわからない。これで国内最大の詩の野外フェスであるウエノポエトリカンジャムや闇鍋演劇祭のオルギア視聴覚室などに参加。より一層ジャンルが分からなくなる。

    また2017年に劇団ももいろ鉄ドールが旗揚げしてから全作品の脚本を執筆している。ここは一人芝居じゃない、楽しい。あと映像作品や小説書いたりしている。

    ③コンクール参加の動機は?
    昨年初めて知ったがファイナリストが豪華でこんなに時代の最先端を走るコンテストがあるのかと思った。ここに入れたら楽しいだろうなぁと思った。ただお客さんに美少女の独り言を聞かせる活動が公共のコンテストで選ばれるわけないと思って応募するつもりはなかったのだが、まぁ応募するだけタダなので送ってみようというスパムメールみたいな気分で送った。なので合格の知らせも最初は「落選通知なのに凄い丁寧、流石せんがわ劇場」と思った。

    ④今回は、どんな作品でしょうか?
    基本的に公社流体力学は実話ベースの作品を作っている。今回もソレ。せんがわ劇場演劇コンクールが決まってからの出来事を描いている。死が目の前に迫った時の私と、2人の美少女にまつわる話である。ここまでは、作品説明で書いていますね。
    今回も朗読見世物最新作。私がたった一人で騒ぐ、美少女の素晴らしさをお客様に語る。ただ今回はいつもと違って劇場の空間を埋めるようなアクションをする。具体的に言うと走ったりジャンプしたりします。恐らくせんがわ史上最も低予算の作品になります。

    ⑤今後の展望は?
    11月2・3日上演の劇団ももいろ鉄ドール新作の台本を書く。王子スタジオ1で上演する。王子初進出。

    最終目標は美少女至上主義を広める。美少女はこの世で最上の存在であると(それは作者である私よりも上ということ)広めたい。

    数々の活動を続けていきたい。美少女にまつわること以外で好きな言葉は前衛、実験、兆戦なのでそれを忘れずにいたい。公社流体力学の一人芝居と朗読を私以外の人にやらせたい。

    あと、野外演劇祭をやりたい。ネットで話題になる奴。正統派と邪道とあと演劇以外のジャンルから演劇的な人を混ぜたイベントをやりたいけど、実行力がないので夢で終わりそう。展望というか妄想になっちゃった。







    【担当メモ】
    独創的な視点から物事を観察し、提示する面白さ。このアンケートを読んでいただければ少しは分かる部分があるのではないでしょうか?提唱する美少女至上主義とお客様とがどのような出会いをし、どのような影響を与える事になっていくのか?楽しみです。

    【公社流体力学:7月14日(日)16:00】 担当:桒原秀一
      


  • Posted by せんがわ劇場 at 14:51Comments(0)演劇コンクール第10回演劇コンクール

    2019年07月02日

    演劇コンクール・稽古場アンケート! 【ルサンチカ】

    第10回せんがわ劇場演劇コンクール出場団体の稽古場情報を配信!全6団体、順不同でお届けします。

    今回は、【主宰】の【河井朗】さんにお話を伺いました。

    ①「カンパニーの成り立ち」を教えてください。
    劇団という体制をとっておらず、主宰の河井朗が舞台作品を上演するためのカンパニーとして立ち上げました。

    ②活動について聞かせてください。
    京都、東京を行き来してクリエイションを行なっています。

    ③コンクール参加の動機は?
    公共劇場が行うコンクールへの取り組みと、様々な審査員の眼差しがどのように向けられるか興味が出たので応募しました。

    ④今回は、どんな作品でしょうか?
    祖母が医療ミスで植物状態になってしまったことをきっかけに、理想の死に方をいろいろな人にインタヴューして制作した作品になります。

    ⑤今後の展望は?
    少子高齢化で若者がいなくなっていくなか、劇場がこれから舞台芸術を志す人々たちとどういう取り組みができるかを考えていきます。









    【担当メモ】
    稽古写真がないという事で、変わりに「それっぽいもの」を送っていただいた。この2枚から見えてくる物。感じる事はなんだろうか?そして、河井朗さんが向き合っているものを感じていきたい。活動についての詳細は下記URLにて
    https://www.ressenchka.com/

    【ルサンチカ:7月14日 15:00】 担当:桒原秀一
      


  • Posted by せんがわ劇場 at 15:34Comments(0)演劇コンクール第10回演劇コンクール

    2019年04月12日

    パンチェッタ 「plant」 稽古場レポート!



    次世代芸術家・企画運営部の桒原秀一です。
    昨年の第9回せんがわ劇場演劇コンクールで「グランプリ」「オーディエンス賞」のW受賞をした、パンチェッタの「オーディエンス賞」受賞公演が、4月19日(金)から行われます。

    Pancetta 9th performance“Plant”公演詳細はここをクリック!

    稽古中の彼らの稽古場に訪れました。
    この記事では、稽古場の様子とともに、公演の見どころをお伝えしていきたいと思います!

    pancetta_Plant01
    左から セキュリティ木村さん、一宮周平さん


    受賞した前回のコンクール時の作品『Parsley』では、専門審査員からの具体的な賛辞も含めて「エンターテインメント性」「演出力」への講評が多かったように思います。

    第9回せんがわ劇場演劇コンクール 専門審査員講評(5) 「パンチェッタ」はここをクリック!

    やはり、一宮周平さんによる演出が作品の基盤となっているようです。

    一度コンクールで上演した作品を、分解・再構築を繰り返しながら稽古は進んでいる様子です。

    pancetta_Plant02
    主宰・作・演出の一宮周平さん

    和気あいあいとしている稽古場は、演出の一宮周平さんを中心に新しい可能性を模索しながらも、常に笑いが絶えません。演出家の人柄がなせる事だと感じます。
    常に「面白さ」を追求する姿勢や新しい発想にワクワクしながら、一観客として楽しませていただきました。一見くだらないと思える事にも裏側のメッセージが散りばめられているような気がして、観客の興味が尽きる事はありません。

    pancetta_Plant03
    左から一宮さん、瞳さん

    また、ある程度観客が物語に興味を持ち始めたなと思うと、気持ちがいいぐらい潔く裏切ってきます。
    観客を魅了する歌のレパートリーも健在でした。

    若手演出家コンクール(※)でも最優秀賞と観客賞を勝ち取り、現在乗りに乗っているパンチェッタが贈ります『Plant』。
    ぜひ、劇場まで足をお運びください。お待ちしております。


    ※若手演出家コンクール……日本演出家協会が主催し、年1回開催する 「自分を若手 (新人)と思う演出者」 を対象としたコンクール。

      


  • Posted by せんがわ劇場 at 15:50Comments(0)演劇コンクール第9回演劇コンクール

    2019年02月28日

    【第10回せんがわ劇場演劇コンクール】応募をご検討中の皆さまへ!!!

    専門審査員の皆さまと、企画監修の徳永京子さんより、メッセージをいただきました!
    ぜひご覧ください。

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    せんがわ演劇コンクールに応募する皆さん、
    今日はどんな1日でしたか?そして、審査の日はどんな1日になるのでしょうか?
    皆さんの無限の可能性に向き合う日が楽しみなようでもあり怖いようでもあり…。
    私自身もドキドキ。日々自分の感性を研ぎ澄まし、真っ白な頭で挑みます。
    原始的に心震える瞬間を待っています!

    我妻恵美子(大駱駝艦・舞踏家)
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    同じ作家として真剣に皆さんの作品と向き合いたいと思います。
    なにより面白い作品との出会いを楽しみにしています。

    市原佐都子(演劇作家・小説家・Q主宰)
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    日頃、稽古場施設である急な坂スタジオにいます。
    創造環境にいることも刺激的ですが、劇場という公演の場が、少し羨ましいです。
    コンクールとなると参加するのに勇気がいるかもしれません。
    でも「劇場」がサポートしてくれることは、今後の活動にとって大きな財産になるはずです。
    多くの方・作品との新しい出逢いを心から楽しみにしています。

    加藤弓奈(プロデューサー)
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    世界的なネオナショナリズムとポピュリズムの波に翻弄された2010年代が終わろうとしている。
    2020年代はどんな時代になるだろう?いや、言い直そう。どんな時代にしたいのか?と。
    アートシーンも時代と無縁ではいられない。
    多様性を受け入れられる?
    超格差社会?
    少子高齢化が加速する?
    日本は滅びる?
    そんな世界のどこかで、あなたはどうしている?
    何をしたい?
    求ム!
    誰も観たことが無い演劇を。
    10年後の未来の世界でしか理解出来ない作品を。

    杉山至(舞台美術家)
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    今回私が審査員を拝命させていただいたのは
    「コンクールの先を考えたコンクール」という惹句と、
    それを実現するための様々なプログラムにシビれたからでもある。
    たんなる権威ではなく、腰を据えてアーティストと向き合っていこうというその姿勢、
    その心意気に応えるような、あるいはそれすらもぶっ飛ばすような力作との出会いを、心から待っている。

    乗越たかお(作家・舞踊評論家)
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    良い演劇コンクールとはどんなものか、考えながら毎年準備を進めています。
    専門審査員は作・演出家、ダンサー、批評家、クリエイター、
    プロデューサーの各ジャンルから一流の審美眼と言葉を持つ人を。
    入賞団体には劇場の主催公演や、アウトリーチ事業へ参加してもらうように。
    今より広い景色を観たい方をお待ちしています。

    徳永京子(演劇ジャーナリスト)
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    応募詳細は、ホームページまで!→ここをクリック  


  • Posted by せんがわ劇場 at 10:00Comments(0)演劇コンクール第10回演劇コンクール