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2020年10月20日

演劇コンクールスピンオフ企画「映像と生で楽しむリーディング」に向けて 【せんがわ劇場演劇チーフディレクター佐川大輔】

「公共劇場が主催し、一緒に仕事をするアーティストを探す」

コロナ禍の今、より社会に演劇が必要な理由、そして、劇場に人が集う意義が問われています。
演劇は不要不急の論理から言えば不必要になってしまいます。
だからこそ、私たち演劇人は「社会と繋がること」を考え、演劇の必要性をどう理解してもらうべきかを模索する必要がでてきました。

私が公共劇場に関わることになったきっかけは、このせんがわ劇場演劇コンクールでした。
このコンクールは「公共劇場が主催し、一緒に仕事をするアーティストを探す」という希少なものです。

今、このせんがわ劇場は、演劇ディレクターチームというチーム制で、演劇事業の企画運営をしています。
このディレクターチームの4名は、全員がコンクール出身者です。

そして、私たち以外にも過去10回のコンクール出身者を中心とした40名規模のDELという演劇人グループもあります。

演劇や劇場が生きる糧として地域に必要であるということを証明し、認知してもらう。
それを、公共劇場と一緒に考える。
今はそんな大いなる実験をしているのです。

この実験の仲間になってくれる人、そして、僕らの後を継いでくれる人。
それらの人々が集う切っ掛けとなるのが、このコンクールなのです。
多くの志ある演劇人に参加してほしいと思っています。




せんがわ劇場演劇ディレクターチーム
チーフディレクター 佐川大輔


演出家、俳優、ワークショップファシリテーター。THEATRE MOMENTS主宰。日本演出者協会国際部部長。劇団俳優座養成所へ入所後、フランス、ロシアなど海外の演出家に師事し、劇団を発足。第4回せんがわ劇場演劇コンクールにおいて、グランプリ、演出賞、オーディエンス賞を受賞。近年は中国、マレーシアなどへ招聘され、国際派劇団として活動の幅を広げている。また、学校での表現教育や、高校演劇全国大会の審査員など、青少年の演劇教育普及にも力を入れている。  


  • Posted by せんがわ劇場 at 11:02Comments(0)演劇コンクール

    2020年10月20日

    演劇コンクールスピンオフ企画「映像と生で楽しむリーディング」に向けて 【せんがわ劇場演劇ディレクター櫻井拓見】

    「渾然一体の企画」

    第10回の節目を迎え、第11回へ、というところで不測の事態に見舞われたせんがわ劇場演劇コンクール。

    「10回やったんだから、一度落ち着いてこれからの事を考えろ」っていう天からの声だと思って、コンクール出身の次世代の方々が今後の演劇コンクールのあり方について定期的なミーティングを行なっています。

    また、
    「10回やったんだから、一度落ち着いてこれまでの事を振り返れ」っていう天からの声も聞こえた気がしたので、このスピンオフ企画が生まれました。

    今年は演劇界全体にとっても不測の事態。
    オンラインツールによる上演形態が急速に試みられ、新しいモノと古いモノが渾然一体となり、わくわくしたりあたふたしたり。

    そんな渾然一体となった演劇界の状況を反映させたかのような企画となりました。
    なかでも注目すべきは、ムーチョ村松さんによる映像作品。
    出演していただいたのは、新旧の演劇コンクール出身者。新しい者と旧い者。
    この映像は演劇と呼べるのか?本来なら、呼べるはずない。でもいまや、そうでもないかもしれない。
    そんな渾然一体感をそのまま体現したかのようなこの企画、どうぞご注目ください。




    せんがわ劇場演劇ディレクターチーム
    ディレクター 櫻井拓見

    演出家・劇作家・俳優。chon-muop主宰。立教大学文学部教育学科在学中に演劇教育に触れる。福岡市文化芸術振興財団主催の演出家コンペティション『一つの戯曲からの創作をとおして語ろうvol.6』ファイナリスト。調布市せんがわ劇場演劇ディレクター。絵本を使ったワークショップ集団「えぽんず」での活動のほか、白百合女子大学、東京芸術劇場などでのワークショップ講師、ファシリテーターとしても多数展開。  


  • Posted by せんがわ劇場 at 11:01Comments(0)演劇コンクール

    2020年10月20日

    演劇コンクールスピンオフ企画「映像と生で楽しむリーディング」に向けて 【せんがわ劇場演劇ディレクター柏木俊彦】

    「せんがわ劇場 演劇コンクールの変遷」

    せんがわ劇場 演劇コンクールは、2010年より毎年開催され、2019年には第10回を迎えました。
    2020年、第11回に向けて新たな一歩と踏み出そうとした矢先、新型コロナウイルス感染拡大の防止により外出自粛・移動の自粛などが求められ、残念ながら第11回の開催は延期を余儀なくされました。

    この機会に、簡単ながら、せんがわ劇場 演劇コンクールの成り立ちから現在までを振り返ってみたいと思います。

    ■ 第1回~第4回は、テーマ設定や課題作品あり。
    ・第1回 テーマ「いのち」/課題作品:水木しげる著『ねずみ男の冒険』(ちくま文庫)の3作品(「神変 方丈記」「幸福の甘き香り」「空想石」)中からひとつ選択
    ・第2回 テーマ「テーマFC東京 ~FC東京のある“まち”~」
    ・第3回 テーマ「宇宙~宇宙とともに生きる未来~」
    ・第4回 テーマ「作品の中に調布関連の素材を取り入れる」



    ■ 第5回から、コンセプトが変容。劇場と舞台芸術活動者との関わり、育成支援の色合いが濃くなる。
    ・演劇創造の基礎力、表現力、制作力、将来性はもちろん、「公共劇場で才能を伸ばしたい!」「地域に深く関わって演劇活動をしたい!」
    ・ このコンクールは、単に劇団の優劣を競うものではなく、せんがわ劇場による舞台芸術活動者の育成支援プログラムの出発点として行います。



    ■ 第7回から、キャッチフレーズが追加。第8回からは、アドバイザー・企画監修として徳永京子氏が参加。
    ・第7回/第8回 キャッチフレーズ「東京の片隅から、演劇の未来が生まれる。」
    ・第9回/第10回 キャッチフレーズ「コンクールの先を考えたコンクール」

    全10回の変遷をたどると、せんがわ劇場 演劇コンクールのコンセプトやテーマは、時代、流行、風俗、価値観等によって更新されていることに気付きます。

     

    ■ そして、2021年に延期された第11回。
    ・コンセプトは「出会い」≒コミュニケーション
    ・「講評」を、さらに厚く、かつ丁寧にお届け。

    企画や運営についても、初代芸術監督のペーター・ゲスナー氏から、演劇コーディネーターの末永明彦氏、演劇ディレクターチーム、そして、現在は次世代に引き継ぎが行われています。

    このような視点からも、せんがわ劇場 演劇コンクールも楽しんで頂けると嬉しく思います。
    今、舞台芸術、公共劇場に求められているものを大切にしながら、地域の方々と歩みを共にし、出会いが紡がれていくことを期待しています。





    せんがわ劇場演劇ディレクターチーム
    ディレクター 柏木俊彦

    演出家・俳優。木野花ドラマスタジオを経て、2010年に第0楽章を設立、代表と演出を担う。2011年、横浜SAACリバイバル・チャレンジ#5に選出。同年、日本演出者協会「若手演出家コンクール2011」優秀賞。2012年、京都舞台芸術協会プロデュース2012「演出家コンペティション」最優秀演出家。近年は、地域プロジェクト・海外プロジェクトに、演出、俳優、企画運営などで参加多数。また、教育機関・福祉施設でのワークショップ等でも進行役、企画運営など多岐に渡り活動。かなっくホール レジデントアーティスト。日本演出者協会 副事務局長。  


  • Posted by せんがわ劇場 at 11:01Comments(0)演劇コンクール

    2020年10月20日

    演劇コンクールスピンオフ企画「映像と生で楽しむリーディング」に向けて 【せんがわ劇場演劇ディレクター桒原秀一】

    「コンセプトは『つなぐ』」

    総合演出と実演リーディングの演出をさせていただいております。桒原秀一と申します。
    全体の見どころとしては『つなぐ』というコンセプトを元にプログラムを構成致しました。
    『つなぐ』というのは、物理的な距離だったり、失った時間であったり、これから作る時間だったり・・・。
    いいも悪いも、コロナというものは沢山の事を意識させていますが、同時に沢山のズレの様な物も感じます。そのズレも今回繋ぎ直して、次に向けての原動力になればと僅かながら感じております。

    オンラインリーディングをコトリ会議の皆さんに上演していただくのですが、LIVEで大阪と東京を繋ぎ、オンラインでリーディングをお届けする。という試みを行います。本当に何が起こるか分からない状況ですはありますが、その時、その場所、その状況。遠くにいる彼らと劇場をつなぐ景色がきっとあると思っております。無事に上演出来るよう御声援お願い致します。

    映像作品では、第11回コンクールの審査員を務めてくださるムーチョ村松さんに映像を作っていただきました。コンクールの参加者の皆さんにご協力をいただいたのですが、本来なかなか共に作品をつくる機会の無い者同士が、この企画を通じて共に創作をしていくような喜びを感じ、また新しい出会いを作る現場の面白さや大切さを感じる機会となりました。

    実演でのリーディングは、稽古期間わずか1回での上演となります。本来積み上げて完成されたものをお届けするというような面白さは勿論あると思いますが、今回は俳優が言葉とそして共演者と出会った瞬間を楽しんでいただければと思います。

    お時間に余裕ございましたら、是非劇場に足をお運びください。お待ちしております。





    せんがわ劇場演劇ディレクターチーム
    ディレクター 桒原秀一


    脚本家・演出家。11代目市川海老蔵に師事。成田屋での勤務の後、「JAPLIN」を旗揚げ。同団体の主宰を務める。子供ミュージカルを始め、各種イベントでの演出。CMシナリオなど、幅広い分野で活動中。都内の小学校・中学校にて演技指導や、ファシリテーターとしてコミュニケーションWSなどを行う。日本演出者協会広報部部長・せんがわ劇場演劇ディレクター・スターライズ所属。  


  • Posted by せんがわ劇場 at 11:01Comments(0)演劇コンクール

    2020年03月04日

    第10回せんがわ劇場演劇コンクール・オーディエンス賞受賞公演【世界劇団】「天は蒼く燃えているか」≪稽古場レポート≫

    第10回せんがわ劇場演劇コンクール・オーディエンス賞受賞公演
    【世界劇団】「天は蒼く燃えているか」
    2020年2月某日 レポート:せんがわ劇場 演劇ディレクター 桒原秀一

    ――――――――――――――――――――――――

    演劇ディレクターの桒原秀一です。
    昨年の第10回演劇コンクールで「オーディエンス賞」の受賞をした、世界劇団の「オーディエンス賞」受賞公演が4月18日(土)から行われます。


    (公演詳細はこちらから→https://www.sengawa-gekijo.jp/kouen/23615.html


    この記事では、稽古の写真とともに、公演の見どころをお伝えしていきたいと思います!
    受賞した前回のコンクール時の作品『紅の魚群、海雲の風よ吹け』

    https://youtu.be/Bp9EETCUdmA
    (受賞後の愛媛公演での映像)

    講評は、様々な角度で語られました。専門審査員からは「言葉のセレクトの仕方」「音楽と身体が作り出すリズム」に対してのご意見が多かったように思います。
    (講評はこちらから→https://sengawagekijo.tamaliver.jp/e468083.html



    今回は、稽古の映像を拝見させて頂きました。やはり、世界劇団の持ち味は健在。
    言葉をセンシティブに且つ詩的に扱い、その魅力を充分に発揮しているという様に感じました。
    予想を裏切る動きの連続。
    言葉と動きのバランスを間違えると、動きの方が勝ってしまうという公演は何度も見た事があります。
    しかし、世界劇団は動きにより詩的な言葉の存在感が更に引き立っているという印象があります。




    時には言葉で、時には身体で。
    矢継ぎ早にあらゆる方法で心が感じる。
    終盤につれてダイナミックになっていくシーン。
    終演後にお客様の心に残るもの。楽しみにしています。
    私にはある台詞が心に残りました。素敵な台詞だと勝手に感じています。
    勿論、内緒ですが。

    是非、せんがわ劇場まで足をお運びください。お待ちしております。  


  • Posted by せんがわ劇場 at 13:07Comments(0)演劇コンクール第10回演劇コンクール

    2019年09月28日

    受賞者インタビュー(3)  公社流体力学 太田日曜さん(グランプリ・俳優賞)

    ・今回のコンクールの客席の印象はいかがでしたか?
    いやぁ、非常に明るくてよかったです。
    昔友達と一緒にM-1グランプリに出たことがあって、何一つ受けなくてボケてもそのボケが空間に「無」にされるような感覚があって全然手ごたえを感じないっていうイメージが強くて僕お笑いは向いていないと思ってたんです。

    でも今回は結構笑いが起きていて。

    でも僕の中では今回の作品はジャンルとしてはコメディではなくて「百合恋愛SF」なんですけれども、ただ根が馬鹿なのでどうしてもボケを入れ込みたくなって。

    終盤までギリギリ悩んだんですけど、「何を言う、早見優!」を入れるか入れまいか悩んでいて、「何を言う!」って言ったあの瞬間に「早見優って言おう!」と思って、いざ「早見優!」言ったら受けたので、「ああ、いいお客様だ」と思いました。

    そういうくだらないギャグ、ホテルカリフォルニアの件も絶対入れたかったんです。おかげでM-1の悪夢を払拭出来ました。


    ・今回の各審査員からの講評を受けて、今自分の表現についてどのように考えていらっしゃいますか?
    僕の表現は絶対ハードルをガンガンに下げた状態で観て頂くのが一番面白いと思うんですけども、今回ハードルがガンガン上がっちまったんで飛び越えられるかどうかすごい心配ですね。

    ネガティブな発言ではあるんですけれども、やっぱり僕はいわゆる普通の演劇でなく、自分でさえ演劇なのかどうか分からないので「朗読見世物」と銘打ってとにかく好き勝手やってるようなところがあるので、遊びまわっていた人が急に「家庭に入れ」と言われてるような気分ですね。

    「俺、かっちりしたこと出来るかな」っていう…。もちろん「かっちりしなくてもいい」って言ってくださるとは思うんですけれども。
    でもやっぱりハードルが上がってしまった以上、「何をやってもいい」というのは本っっ当
    に本当に究極的に「何をやってもいい」というところへ入らない限りたぶんダメだと思うんです。

    僕が非常に敬愛かつ尊敬しているゴキブリコンビナートと宇宙論☆講座という二つの団体があって、そこは本当に究極的に何をやってもいいと思っている団体で。

    宇宙論☆講座さんでおもしろかったのが、生ビールを飲みながらやる公演(『生ビールミュージカル』)の時に女優さん(新名亜子(秘密のユニット))が主宰の人(五十部裕明)に向かって「自分の団体だからって何やってもいいと思うなよ!!!」ってガチギレしてるシーンがあったんです。でもそれが本当に「何をやってもいい」を体現していて、本当におもしろかったなぁ、と、

    なのでそういう「本当になんでもあり」が許されるような感じになりたいです。


    ・今回グランプリを受賞されて、今後の活動予定や展望、受賞記念公演についての予定についてお聞かせください。
    とりあえず今決まっている一番近いものとしては、僕が脚本を書き下ろしている劇団ももいろ鉄ドールという団体の公演が11月に王子スタジオ1です。

    脚本を書き始めるところからスタートなんですが、かぐや姫をモチーフにしてかぐや姫版インサイドヘッドみたいな作品を作れたらいいなと思います。

    あとは渋谷RUBYROOMというバーで開催されているSPIRITというオープンマイクのイベントに出て新作を読みます。

    あとポエトリースラムジャパンという詩の朗読の大会へも出場しようかなと考えていたりします。

    来年の受賞記念公演は本当にどうしよう、客席が埋まるのかという心配もあるので…。
    正直来年の展望は言えないというかわからないというか、どうすんだろうな、俺…。
    ほんとうにアングラから急に上に引っ張り出されて、「あ、もぐらって急に地上に出されたらこういう気分だろうな」という気分ですね。


    ・せんがわ劇場で特にチャレンジしてみたいことはありますか?
    やっぱり今演劇界がどんどん衰退していると思っています。
    みんな一人一人が問題意識をもって活動していると思うんですけど、僕もそれなりに問題意識を持っていて。
    では打開策は何か?と言ったら「ネットでバズることだ」と思うんです。

    演劇は面白いけど、ネットということを考えると非常に後退しているジャンルでもあると思います。

    僕は個人的にはポエトリーの界隈と仲がいいんですが、そのポエトリーの人たちがネットを使っていて、ポエトリースラムというポエトリーの対決をインターネットのテレビ(モグテレビ)でやったりします。

    あとポエトリースラムジャパンという日本で一番の詩の朗読の大会があって、優勝するとフランスの世界大会に出場できるんですが、昨日まさにそのツイキャス予選というのがあったりもしました。

    いま詩の界隈がネットですごいグイグイ来ているんです。
    じゃあ演劇界隈、このせんがわ劇場からももっとネットを使った発信が出来たらいいなと思います。
    僕は演劇が好きだけど、どうしても演劇がウェブ時代から取り残されている感じがするので。
    これといっていいアイディアは今はないんですけど、とにかくなんとかしてバズらせないと、という意識があるので、そこに関われたらいいなと思います。

    もちろんアウトリーチ事業も演劇文化をいかに発達させるか、どう社会に還元していくかという観点からするととても重要なので、そこにも関わりつつ演劇の寿命を少しでも伸ばせたらいいなと思います。


    ・ありがとうございます。最後になにか一言ありますか?
    もうね、美少女は非常にすばらしい存在でございます。
    美少女は、おそらく皆さんが思っている以上に非常に深い存在でありますので、美少女の深淵に来て頂けるとありがたいです。はい。



    【公社流体力学 プロフィール】
    美少女至上主義を掲げて一貫して美少女を称えている。美少女とは概念であり物質は関係ない。
    表現手法である朗読見世物は、面白い朗読・一人芝居・漫談・声大きめの独り言等評される。
    その他映像や脚本提供等している。
    公式ページ
    https://koushayuutai.web.fc2.com/  


  • 2019年09月27日

    受賞者インタビュー(2)  公社流体力学 太田日曜さん(グランプリ・俳優賞)

    ・公社流体力学a.k.a太田日曜さんは大宮のご出身ですか?
    そうですね、大宮のあたりに住んでいますね。
    大宮ネタは本当はやる予定がなかったんですけど、京都に大宮という地名があることを知っていたんです。
    今日(コンクール二日目)の1団体目(劇団速度)と2団体目(ルサンチカ)が京都の団体だったので、「じゃあ大宮使わなきゃダメでしょう」と思って、「京都府大宮とならぶ日本二大大宮のひとつ、埼玉県さいたま市大宮!」っていう台詞を入れました。

    僕なりの劇団速度さんとルサンチカさんへのオマージュでした。


    ・普段ライブハウスやポエトリーオープンマイクというイベントで活動されているということでしたが、今回せんがわ劇場という場所で上演してみていかがでしたか?
    やっぱり僕がよく使うところより数倍広くて。先ほど話に出てきた無力無善寺なんてまるまる客席にすっぽり埋まってしまうくらいの広さなので。
    舞台も広いから、もうどうしようと思って、いつもはただ棒立ちでしゃべってるだけだから…。「これいつも通りやってたら絶対怒られるよな…じゃあ、まあ、動くか」というので動いたので。

    審査員の方の中には舞踏家の方も舞踊評論家の方もいて、そういう空間の使い方に対して一言ダメを出されるかと思ったんですが、意外とそういうこともなく誉められたので、意外というか「あああぁ、ほう」という感じでした。


    ・審査員の杉山至さんも「たとえば漫才ではああいう動きにならないのだ、演劇なのだ」ということを仰っていましたね。すべて動きはご自身で考えられたんですか?
    そうですね、「こうなったらこうだろう、こうすればなんとか空間を埋められるんじゃないだろうか」というのを判断しつつ自分で考えましたね。下手の袖に飛び込んでみたり、舞台上を走り回ってみたり…。


    ・コンクール全体についての印象はいかがでしたか?
    世界劇団さんとイチニノさんは僕は見られなかったんですが、スタッフは観て、ふたつとも面白いと話題になっていました。
    世界劇団さんの劇中の「オッケー光」という台詞がちょっとした流行語になっていたりしました。ことあるごとに「オッケー光!」「オッケー光!」とみんな言っていて。

    イチニノさんも、結果発表の前の評判を聞く限り「オーディエンス賞はイチニノさんじゃないか」という話もしていて、スタッフの一人も「イチニノさんが一番面白かった」と話してましたし、評判を聞く限りかなりハイレベルだったんだと思います。

    僕が観たのがキュイさん、劇団速度さん、ルサンチカさんです。
    キュイさんなんてもう、僕は今回初めて観たんですけど名前自体は前から知っていて、とにかく新時代の天才だ、と。
    今年の1月にこまばアゴラ劇場で「これは演劇ではない」フェスティバルを開催されるなどすごく精力的に活動をされていますよね。僕が地下50階ぐらいの階層にいるのに対して、キュイさんは地上の高層ビルの上にいるイメージだったので「すごい芝居を作ってくるんじゃないか」と思って観たら、本当にすごい芝居だったので。

    僕はああいうイマジネーションの使い方が到底できないので…。ここではないどこかの話のようで、でもここ(この社会)の話っていう、その世界に対する距離感が絶妙で、ファンタジーのようでもあるけれども、社会批判的でもあり。
    舞台美術もすごかったし、幕が開いた時舞台上にLED照明が垂れ下がっていて、アヒルの人形使い方も、潰したときの「ヒューヒュー」という音で人の声を表しているようにも見えたりとか。

    演出している得地さんの団体お布団が昨年発表された『破壊された女』がすごいという評判も聞いていましたし、すごいおもしろい劇団の人同士がタッグを組んでやってきているぞ、という印象を受けました。

    あと役者が本当に巧かったですね。特に男性の方(中田麦平(シンクロ少女))の存在感がすごいんだなと、観ていて思いましたね。

    どうでもいい話なんですけど、僕が昔つくったお芝居が「シンクロ少女っぽい」と言われたことがあって。観たことがないんだけど親近感を感じているというのがありました。なので今回同じコンクールへ出られたというのは妙な縁を感じました。

    劇団速度さんは稽古場インタビューで「『ゴド―を待ちながら』をダンスする」っていう風に仰っていたので、そういう認識で観ていたら全然違うというか、再解釈というか『ゴド―』のリビルドになっていましたね。
    徳永さんが仰っていたように、いかようにでも解釈できる作品でした。

    もちろん『ゴド―』の話にも見えるし、「演劇とはこういうものか」というようにも解釈できるし。ダンスって本当に抽象的だから、ちょっと失敗すると訳がわからなくなると思うんですけど、最小限の台詞であそこまで奥深い世界を作ったのがすごいな、と。

    終盤の取っ組み合いのさなか、お互い支えあっていながら、でも取っ組み合っているというあのバランスがすごかったですね。どういう動きをしたらこんな風になるんだろうと感心して観ていました。

    ルサンチカさんはもう、本当にねえ、もう審査員講評だと僕と最後を争ったって言ってましたけど…あれすごかったもんなぁ…。
    「死についてのインタビュー」っていう情報は得ていたので、それを再構成して理想の死を再現するのかな、と思っていたら全然ちがうっていう。
    舞台上の二人の関係性もそうですし、あのハーネスで人が浮く時の幻想もそうだし、終盤の奈落へ潜ってしまうのも、どれをとっても画になるから。

    ある意味画になるルサンチカさんと、素舞台でワーキャー騒いでいるだけでまったく画にならない公社流体力学という対極の戦いになったわけですけど。

    僕がすごいな!と思ったのが、舌打ちしながら出てくるシーンと、舌打ちしながら去っていくシーンですね。あの存在感が非常に大きくて、正直舌打ちしながら俳優がロープで引っ張られながら舞台上へ出た瞬間に「あ、これが優勝するんじゃないか」と思いました。

    なので全体的に見ると、スタイルウォーズというか、それぞれ本当にちがう手法で勝負を挑んで来ているなと思いました。
    僕が観られた団体に関して言うと、戯曲の力のキュイさんと、ダンスの劇団速度さん、総合芸術のルサンチカさんという感じで、全然印象が違うなという風に思いました。

    あと個人的にはキュイさんとルサンチカさんが似たような問題意識を持って作品を作っていたのもおもしろかったですね。
    演劇って今それぞれのアーティストが「社会問題とどう向かい合うか」という方向で展開していると思うんですが、そうなると同世代のアーティストの中では共通する問題意識も生まれてくるんだろうと思って観ていました。

    その中でまったく社会性のない僕がグランプリを獲ったので、わけわかんねえなっていう…、…本当に。
    ある意味では”美少女至上主義”が一番の社会性だと僕は信じているんですけども。



    【公社流体力学 プロフィール】

    美少女至上主義を掲げて一貫して美少女を称えている。美少女とは概念であり物質は関係ない。
    表現手法である朗読見世物は、面白い朗読・一人芝居・漫談・声大きめの独り言等評される。
    その他映像や脚本提供等している。
    公式ページ
    https://koushayuutai.web.fc2.com/
      


  • 2019年09月26日

    受賞者インタビュー(1)  公社流体力学 太田日曜さん(グランプリ・俳優賞)

    ・今回グランプリと俳優賞のダブル受賞となりましたが、今の率直なお気持ちはいかがですか。
    いやぁ、なんかほんとにもうどうしようみたいな…。
    今日本番を迎えるまでは賞を獲れるどころか「これ審査員に怒られるんじゃないか」みたいなノリでした。
    いやでも、どうせ何やったって怒られるんだから、頑張ってめちゃくちゃやろうみたいな精神で来たので…。

    で、いざ本番終わってみると意外と反応はよかったので、「これグランプリ獲れるかもしれないな」という冗談は言っていたんですけども。
    いざ表彰式になって俳優賞を貰えて、「まあまあ、こんなもんか」と思っていたんです。
    それがグランプリを獲ってしまって、一言目が「マジかよ!!」だったので。
    「やったー!」とか「嬉しい!」じゃなくて、「え、マジ…」みたいな感じだったので。本当に僕はグランプリは他の団体が獲るものだと思ってたので…いやぁ…。

    でも、あの、審査員講評の時に、審査員の皆さんが結構他の団体には辛口だったのに、僕に対してだけ辛口ではないのは、あれはなんか、こう、なんというか、ね、「これはグランプリ相当だ」というおもしろさ故なのか、「おもしろいけどちょっとこれはちょっと番外編的なおもしろさだよね」みたいな意味なのか、どっちなのかなって思ってたんです。
    まあたぶん後者だろうな、と思っていたら、まさか前者だったとは思わなくて…いやぁ、はい。


    ・俳優賞についても、やはりびっくりでしたか?
    僕は大学1年の時に演劇部に入って役者をやって、「あ、俺もう役者向いてねぇわ」って言って一回役者を辞めているんです。それで公社流体力学を立ち上げたときに役者の知り合いが誰もいなくて、しょうがないから僕がやるしかないよな、ってしょうがなくやって、それがいまだに続いているっていう状態なので。

    言ってしまえば僕は代役みたいなノリなので、その代役がずっとい続けた結果俳優賞獲っちゃったんで…。「代役だよ、僕?」という感じなので。なんというか、もう頭がずっとふわふわしている状態です。「すごいことって世の中あるんだな」っていうのが率直な感想ですね。


    ・公社流体力学という劇団について、あらためて活動のテーマやコンセプトについて教えてください。
    美少女至上主義でございます。
    美少女っていうのはこの世で最も最上の存在である、と。それはもちろん作者である僕よりも上だし、なんだったら神様よりも上の存在なので、みんなでそれを崇め奉ろうというようなことをずっとやっておりまして。

    大体こうして人前に出て、ひたすら独り言を喋って帰るということを繰り返している内に、高円寺に無力無善寺っていうライブハウスがあって、そこのオーナーの無善法師様から、いやちがう今無善菩薩様に改名したんだ、


    ・無善…?
    その無善菩薩様っていうオーナーがいるんですけど、そういう名前の方なんですけど本当に、その方に「君いつか逮捕されるね」って言われたことを本当によく覚えていて。
    だからいつか逮捕されるようなパフォーマンスをやり続けている、でも僕自身としてはやっていることはまっとうなことなので。
    「これで逮捕されるんだったらいいよ」みたいなノリでやりましたので、今回逮捕どころか「公共の場所使っていいよ」と言われて、困惑というか途方に暮れている感じです、はい。

    …作風の話ですよね、これ?話が逸れちゃった…。

    そういう風に一人芝居でやっていたりとか、ライブハウスでのパフォーマンス、あとポエトリーオープンマイクというイベントがあって、そういうところへ出たりして喋っています。すべて美少女の話ですね。あとはイベントにお呼ばれしてそこに出たりして、という感じです。


    ・今回上演された作品『美少女がやってくるぞ、ふるえて眠れ』についてのコンセプトやテーマについて、改めてお聞かせください。
    とりあえず僕はもう実話をもとに作っているので、だったら今回のせんがわ劇場演劇コンクールをネタにしないとダメだよなと思って、とにかくせんがわありきで作りましたね。
    本当に、かなりノンフィクションの部分が多々あるんです。

    実を言うと、今回作中で「大宮駅でクレープ屋に並んだ」って言ったんですけどあれは嘘で、実際にはタピオカ屋なんですよ。ただメニューにクレープがあって、僕タピオカじゃなくてクレープの方が好きだから劇中ではクレープ屋にしたっていう。あんまりタピオカ飲もうっていう気になんないんですよね。


    ・え、せっかく並んだのにですか?
    タピオカにそんなに興味がない。
    なので「大宮駅は縦に行くと人が一杯いるけど、横に行くと人がいない」というのも100パーセントノンフィクションです。本当に横の方に行くとどんどん人が減っていくんです。


    ・「横の方に」というのは?
    線路があって、線路沿いにどんどん人が減っていくイメージです。線路に対して縦(垂直)に行くと結構歓楽街なので、そういう感じです。


    ・ちなみにタピオカ屋さんに並んだ時には、タピオカを飲もうと思っていたんですか?
    いやぁ、ただ単純にタピオカ屋にはただ人が並んでいたから並んだという感じです。話題だから並んではみたけど、タピオカには興味がねえやと。

    大宮駅から縦の方向へ行くと氷川神社という大きな神社もあるので、人が沢山いるんですよね。
    横(線路沿い)だとずっと行くとさいたまスーパーアリーナで、スーパーアリーナはライブとかが開催されているときは人が一杯いますけど何もないときは閑散としているんですよね。
    (公社流体力学による注釈・分かりづらいので詳しく解説すると、タピオカ屋のある東口の話をしています。横と言っても縦に少し進んでから左右へ進むと。飲み屋街やよしもとの劇場、とらのあな等があります。なのでこの場合の横と言うのは東口を出て一切縦に進まずそのまま右に進みタピオカ屋を超えて駐輪場を超え、線路沿いに進んだエリアのことを言います。少しでも前進すれば縦の扱いで喋っていたので分かりづらい感じになってしまいました。受賞当時はビックリしすぎてIQが5くらいになっていたのでお許しください)



    【公社流体力学 プロフィール】
    美少女至上主義を掲げて一貫して美少女を称えている。美少女とは概念であり物質は関係ない。
    表現手法である朗読見世物は、面白い朗読・一人芝居・漫談・声大きめの独り言等評される。
    その他映像や脚本提供等している。
    公式ページ
    https://koushayuutai.web.fc2.com/
      


  • 2019年09月25日

    受賞者インタビュー(2)  世界劇団 本坊由華子さん(オーディエンス賞)

    ・今回参加されて、他の団体の上演もご覧になったかと思うのですが、せんがわ劇場の演劇コンクール全体についての印象はいかがでしたか?
    劇団速度の野村君とは去年も利賀演劇人コンクールで一緒になっていたので元々すこし面識があったりしました。
    全体的な印象としては、どうなんだろう、「コンクールって難しいな」とすごいいつも思うんです。
    いろんな演劇のコンクールがあると思うんですけど、そのコンクールで選ばれたものが今後の演劇界にかなり影響を及ぼすと思うんです。たとえば「このコンクールだったらこういった作品が選ばれた」という事実があると、「そういった作品が評価される演劇界」という風に関係者が認識する、いわばひとつの指針になると私は思っていて。そういった指針自体がコンクールの特色でもあると思うんです。

    たとえば去年参加した利賀演劇人コンクールは、本当にまさにハイ・アートというか、かなり尖った表現を評価していくものだったりします。

    そうした文脈を踏まえると、今回のせんがわ劇場演劇コンクールがグランプリに公社流体力学さんを選んだということ自体が私にとってはすごく大事件なんですよね(笑)。
    私は公社流体力学さんすごく大好きで、もし私が観客だったら迷わず観客投票も公社流体力学さんに入れたと思うんです。

    たとえば一口に「演劇」と言った時にすごく小難しくて、「こういうことを考えています」というか「こういう表現の新しい形態を突き詰めています」というタイプのものもあるじゃないですか。

    でも公社流体力学さんはそうではなくて、どっちかというとすごく根源的な、「好きなもの(美少女)をどうやって好きって言うか」というたったひとりのパッションだけで舞台に立っていらっしゃって。そういったものが選ばれることがいかに素晴らしいことなんだろう!っていう(笑)。

    演劇の根源というか、専門審査員の杉山至さんは公社流体力学さんの作品をして「シェイクスピアもかくやあらん」って仰っていて、私も同じ考えなんですけど「演劇ってここから生まれたんだろうな」みたいなものを感じて。

    演劇として時代の流れを遡っていくというか、パッションとか熱量とか、その場で人間が生で立っていることの美しさみたいなものを根源的に評価してくれたというのが、私にとってはすごくありがたいコンクールでした。

    そこに立ち戻って、ちゃんとそれをグランプリとして評価してくれるコンクールがあるというのは、私にとってはとてもうれしいことでした。

    私もどちらかというと時代に合わせて細分化していく方ではなくて、「人間のパッションが目の前にあることの美しさ」みたいなことの方が演劇だと思っているので。

    それって全然評価されないというか、これは私の被害妄想かもしれないんですけど「それってかっこよくないじゃん」みたいな空気がなんとなくあるような気がしていて。
    「そうじゃなくない?」って自分は思っているんですけど、今回グランプリとして生身の人間として美しさが一番立ち上っていた公社流体力学の彼が評価されたので、「このコンクールはすごくいいコンクールだな」って思いました(笑)。


    ・今回オーディエンス賞を獲得され、実際に上演をされて本坊さんご自身は舞台にも立たれましたが、舞台の上からみて客席の印象はいかがでしたか?
    お客さんの雰囲気としては本当にいろんな方々が混ざっているいい空間だと思いました。もちろんハイ・アートを突き詰めているような専門家の方もいらっしゃれば、一般のお客様もいらっしゃったりして。いいバランスなのかな、と思いました。

    客席が演劇の専門家だけで埋め尽くされることは全然豊かではないと私は思っているんです。演劇を初めて観に来る人が、何割かは絶対混ざっていた方がいい。
    そういう意味で、あの客席は一般社会がちゃんとあったな、という風に思います。それは舞台上から客席の方を見ていても、居心地のいいものでした。


    ・来年には受賞記念公演も控えます。今後の活動予定や創作のプラン、展望があればぜひ教えてください。
    元々2020年の2月から3月まで、愛媛と広島のアステールプラザ、そして北九州枝光のアイアンシアターというところで三都市ツアーを予定していました。
    その三都市+せんがわ劇場ということで、4都市ツアーとして近々情報を公開しようかなと思っています。今後はそのツアー作品に向けて創作を進めていくことになると思います。


    ・今後コンクールのファイナリストとしてせんがわ劇場に関わる中で、特にチャレンジしてみたいことはありますか?
    せんがわ劇場さんもアウトリーチ事業の中で不登校の子に向けて演劇のワークショップを行ったり障害をもつ方たちと一緒に演劇をつくったりされていると説明会の際に伺ったんですが、実は私たち自身も愛媛で患者さんや不登校の子供に向けて演劇を使ったコミュニケーションワークショップを行ったりしているんです。

    また自分たちが日ごろ関わっている精神障害者の方たちと演劇を作品をつくりたいという希望もかねてからありました。

    もちろん愛媛からなのでせんがわ劇場さんの事業に頻繁には参加できないのですが、せんがわ劇場さんがどういった活動をされているのかを勉強させて頂いて、せんがわ劇場だけでなく愛媛のアウトリーチ事業にも繋がるようなことをさせて頂きたいなと思っています。

    伺っている中だけでもかなり興味のあるアウトリーチ事業がせんがわ劇場さんには沢山ありまして、自分たちの劇団関係者にも東京在住の人間がいるので、彼らが今後せんがわ劇場さんと交流していく中でアウトリーチのノウハウやコンセプトについていろいろ学ばせていただきたいなと思っています。


    ・ありがとうございます。最後に、来年の受賞記念公演についての意気込みをお聞かせください。
    そうですね、今回の作品を通じて「世界劇団ってこういう表現だ」「世界劇団の演劇ってこういうものだ」ということを、私は完璧に言語化できるようになったんです。

    そうしてより明確になった自分たちの強みやこれまでに形作ってきた表現形態と、演劇で伝えられるテーマやメッセージというものをどちらも両立できるような作品を、必ず持っていきますので、ぜひ観に来て頂きたいなと思っています!




    【世界劇団 プロフィール】
    医師と医学生の劇団。
    代表の本坊由華子は2015年に四国劇王と中国劇王を獲得。2017年に松山・広島・北九州の三都市でツアーを実施し、2018年には利賀演劇人コンクールにて観客賞2位を受賞、松山・東京・三重で三都市ツアーを敢行した。作品創作のみならず、精神科領域で演劇の可能性を模索中。  


  • 2019年09月24日

    受賞者インタビュー(1)  世界劇団 本坊由華子さん(オーディエンス賞)

    ・オーディエンス賞を受賞されての、今の率直なご感想はいかがでしょうか。
    単純に嬉しい気持ちがありますが、グランプリを獲りたかったなというちょっと悔しい気持ちもあり、なにも引っかからないよりかは良かったかなと思っています。


    ・世界劇団さんは愛媛を拠点に活動され、医学生の方々を中心にされているとのことですが、普段活動されている時のテーマや、演劇創作におけるコンセプトについて教えてください。
    私たちは地方で活動しているということもありまして、周りに他に演劇をしている人たちがたくさんいるわけではないので、それぞれの個性みたいなものが熟成化されやすいのかなとは思います。

    私たちの創作に関してのテーマなんですが、元々演劇で食べていくことを目標としていなくて、どちらかというと本業の職業だったり学校生活をきちんとこなしながら創作をすることによって、文化芸術というものがそもそも人間の生活の豊かさみたいなものを形作るものだと考えています。仕事とか勉強があるからこそ演劇活動でも力が発揮できるというか、それが生活の豊かさをもたらすという方向に向きやすいのかなと思います。

    もう一つ、単純に劇団に関わるそれぞれが本業の方でかなり忙しく、稽古時間も制約される中でどうやって創作のための時間を捻出していくのか、稽古のスケジュールを合わせていくのかということに関してかなりシビアな状況なので、体力的にも精神的にも追いやられるんです。

    たとえば古典的な演劇の作り方で言うところの「演出家が俳優を追い込む」みたいなことがありますよね。それはもちろんパワハラにつながりかねない極限状態まで追い込んで追い込んで、追い込んだ上でベストパフォーマンスを叩き出すという方法が、でも私は現にあると思っているんです。

    その意味で、それぞれのシビアな生活の中で、ぎりぎりの極限状態に追い込まれた時に演劇創作でもベストパフォーマンスが叩き出されるという説を信じているんです。

    演出家によるパワハラという形ではなくても、たとえば病院での当直がずっと続いていたり学校のテストが続いている中で本番があるという状況は、ある意味ではそれは人間が生活の中でギリギリの極限状況に追い込まれるということにはなるので、いわば健全な形での追い込まれ方をして、それがベストなパフォーマンスを叩き出すという風に考えています。

    仕事とか勉強がある中で演劇をしていた方が、私たちはよりよいパフォーマンスができるんじゃないかと。これは世界劇団の生活スタイルであり、創作スタイルの一つでもあるのかなという風には考えています。


    ・今回作品に参加された方々も、みなさん基本的には本業を別に持っていらっしゃるんですね。
    そうです、同じ病院で働く精神科医であったり医学生だったりして、コンクールが終わったらすぐにテスト勉強をしていたりとかしていて(笑)。劇団員は基本的にはみんな同じ大学の出身者ですね。


    ・今回上演された『紅の魚群、海雲の風よ吹け』について、作品のコンセプト、テーマについてあらためてお聞かせください。
    私たちは結構いろんなコンクールに出ていて、その中でここ3年くらいは毎年ツアーを回しているんです。そうしていろんなコンクールに出場していく中で「私たちの表現とは何か」ということだったり、「私たちにとって演劇は何か」ということを提示しなければならないところに来ているという思いが個人的にありました。
    30歳になる前までに「世界劇団の演劇とは何なんだ」ということを提示していかなければならないと思っていました。

    今回コンクールに参加するにあたって、自分のオリジナル作品でもよいということと、上演審査であるということで、「私たちの特徴はこれだ」というやりたいことを絶対にやるということだけを決めて作った作品です。
    身体表現だったり、言葉のリズムだったり、歌とか、空間の演出とか、わたしたちの強みをかなり凝縮して出そうとした作品でした。

    テーマとしては女性が生まれてからライフステップを踏んでいく中での人間的な成長であったり、女性としてのステップアップを描けたらと思っていました。

    でも講評でも言われたように、やっぱり自分たちのやりたいことをやるという演出的な部分でのこだわりが強いあまりにテーマの部分が若干ないがしろになってしまった部分があったんだなということは思いました。

    演出的な身体表現などには大変こだわりをもって創作出来たとは思うんですが、ウエイトの大きな部分が演出で占められてしまった分、「何を伝えたいのか」という演劇的なメッセージの部分ではテーマが発揮されずに終わってしまい、もっと深いところまで行けたはずなのにちょっと惜しいところがあったのではないかと個人的には思います。


    ・作品におけるテーマの描き方というのはまさに講評会でも専門審査員の方々から言及された部分だったかと思うのですが、今回の講評を受けていまどのようにお考えですか?
    たしかに専門審査員の方々の仰ることはすごくよくわかるんです。
    特に徳永さんであったり加藤さんから仰っていただいた中に、女性がライフステップを上がっていく中で「出産」というのが当たり前のものとして描かれることに対して引っかかるところがあるというご意見がありましたが、これはとてもよく分かるんです。
    ただ私自身「子供が生まれる」ということに関しては学生のころからずっと書き続けてきたテーマであったんです。

    その中で「出産」という部分に関して、審査員の方々が社会的・個人的な意味合いにおいてデリケートなもので、女性のライフステップの中で必ずしも必要ではないというとらえ方をされたことに関してすごく分かるんですけど、私としてはどちらかというと杉山さんが仰っていたような”サイエンスポエム”としての「出産」という意味だったんです。

    たとえば「卵子と精子が合体して生命体が誕生する」という文章があったなら、それはどんな人でもある種のサイエンスポエムとしてみなさん認識すると思うんですね。

    ただそれが「出産」という言葉になるとそれはサイエンスポエムではないのだな、という風に思いました。

    私個人としては「卵子と精子が合体して生命体が誕生する」という言葉も「出産」という言葉もどちらもサイエンスポエムとしてこれまで5~6年書いてきたものだったんですけれど、「出産」という言葉に関しては、ある種個人的な事象として、例えば出産をしないという選択をされた女性としての社会的な感情が乗っかる言葉なのだな、と思いました。

    これはそういう世の中になってきたというか、社会が変わってきたんだなという印象を受けました。

    私としては「出産」という言葉に関しては個人的に大きくは印象が変わることなくサイエンスポエムとしてずっと描いてきたんですが、たぶんここ数年そういうことに関して周りがかなりデリケートになってきたのだな、それに対して発言していいという空気が高まってきたのだろうな、と思いました。どちらかと言うとこれは私自身の変化というより時代の変化だなと思いました。

    なのでそれをもっとデリケートに扱った方がいいとは思うんですが、なんというか、その言葉をデリケートに扱ったからと言って問題が解決するわけではないと思っています。

    たぶん5年、10年前にはこの戯曲に対してそういったご意見はいただかなかったと思うし、あるいは5年、10年後にこの戯曲を上演したらもっと辛辣なお言葉を浴びせられるのかもしれません。

    私は全部サイエンスポエムとして書いてきたけど、そうとはとらえられない時代になってきたというか、そうした時代の変化を感じたように思います。


    ・世界劇団さんはこれまでツアーや各コンクールで様々な場所で上演されてきたと思うのですが、今回せんがわ劇場で上演してみた印象はいかがでしたか? 
    すごい上演しやすい空間だなと思いました。小劇場として環境が非常に整っていますし、私たちはコンクールやコンペティションも合わせるとこれまでに県内・県外合わせて10カ所以上の場所で上演をしてきたのですが、その中でもかなり空間的にやりやすい環境だと思いました。音も跳ね返りやすいですし。

    劇場機構としてもそうなんですが、コンクール自体もそうなんですがなるべく一般の市民の方に文化芸術をなるべく浸透させようという試みというか調布市の意思みたいなものは、私の活動にもマッチしているなと感じました。

    ある部分で演劇というのはインテリジェンスの高い人達が同じくインテリジェンスの高い人達に向けて作品を発表するものだという風な考え方を持っていらっしゃる方もいるとは思うんです。

    でも私はどちらかというと劇場空間というのは教育格差であったり経済格差を全部取っ払うもので、「演劇を上演する」というそのこと自体が「人間を祝う儀式」的な意味があると思ってやっているんです。

    なので今回の演劇コンクールの理念もきっとそうだと思うのですが、せんがわ劇場が展開しているアウトリーチ事業からもそういった「演劇の専門家⇔一般の人」という格差をなるべくなくしていこうというような理念が漂っていると感じられて、私にとってとても居心地のいい劇場でした。

    演劇をいわゆる「ハイ・アート(高級芸術)」として扱う雰囲気が、ちょっと苦手なんです。確かにクオリティの高い作品を上演することはすごくいいことだと思うんです。ただそれが「ハイ・アート!」という感じになると、かえってその垣根を作り出す作品もあるじゃないですか。なんというか「わかる人にはわかる」というような。

    もちろんそういうお芝居はあってもいいのだけれど、それを上演したことで社会的に何か起こしただろうか?ということを考えてしまうんです。
    事件的なというか、アクシデントというか、「それで何か起こっただろうか」って考えると何も起こっていないように思えてしまうんです。

    個人的にいわゆるそうした「ハイ・アート」とされるような作品に対して「上演をする」ということの勃発感がなくてあまり好きではないんですけれども、そういった中でもせんがわ劇場は一般の市民の方に向けて開けている印象がありますし、そしてそういったなかで社会性が求められている劇場だとも思うので、私はすごく好きで、たぶんそこにフィットしただろうな、とは思いました。



    【世界劇団 プロフィール】
    医師と医学生の劇団。
    代表の本坊由華子は2015年に四国劇王と中国劇王を獲得。2017年に松山・広島・北九州の三都市でツアーを実施し、2018年には利賀演劇人コンクールにて観客賞2位を受賞、松山・東京・三重で三都市ツアーを敢行した。作品創作のみならず、精神科領域で演劇の可能性を模索中。